回転寿司チェーン「くら寿司」の「ビッくらポン!」をご存じの人は多いかもしれない。各カウンター・テーブルに設置されている空き皿の投入口に5枚の皿を入れて、当たればグッズが封入されたカプセルトイを獲得できるというもの。

そんなビッくらポン!は、トレンドに合わせたアニメやゲーム作品とのコラボレーションで話題を集めており、子どもだけでなく大人も夢中になれる内容となっている。この空き皿を投入しておもちゃをゲットできるという画期的な仕組みは、一体どのような経緯で誕生したのだろうか。

そこで今回、くら寿司株式会社(以下、くら寿司)広報・マーケティング本部 広報部の岡本愛理さんに、ビッくらポン!の誕生秘話と企画・開発の裏側について聞いた。

「ビッくらポン!」。くら寿司ならではのユニークなエンターテインメント要素だ
「ビッくらポン!」。くら寿司ならではのユニークなエンターテインメント要素だ【画像提供=くら寿司】


誕生のヒントは“子どもが楽しそうにお皿を投入する姿”

ビッくらポン!誕生のきっかけは、女性利用者から寄せられた「食べた皿の枚数がほかの人にわかってしまうのが恥ずかしい」といった悩みを解消すべく、1996年に開発した「水回収システム」の存在だった。その後、子どもたちが楽しそうに皿を投入している様子からヒントを得たくら寿司は、2000年にビッくらポン!の導入を開始した。

くら寿司株式会社 広報・マーケティング本部 広報部の岡本愛理さん
くら寿司株式会社 広報・マーケティング本部 広報部の岡本愛理さん【撮影=西脇章太】


景品には、くら寿司のマスコット「むてん丸」をはじめ、かわいらしいキャラクターたちが採用され、子どもを中心に人気を得た。一方で、2018年にリリースした「黄昏のギョジン」は“チンアナゴ”をモチーフにした、これまでとは全く違うテイストの見た目がSNSで話題になるなど、今や年代問わず愛されている。

「オリジナル景品に関しましては、常に新鮮な気持ちで手に取っていただけるよう、1~3カ月の周期でリニューアルしています。そこにコラボレーション(以下、コラボ)グッズも含めると、累計100種類以上の景品を開発していることになりますね」

くら寿司のマスコットキャラクター「むてん丸」とその仲間たち。ビッくらポン!で遊んだことがある人であれば、一度は見たことがあるのでは?
くら寿司のマスコットキャラクター「むてん丸」とその仲間たち。ビッくらポン!で遊んだことがある人であれば、一度は見たことがあるのでは?【画像提供=くら寿司】

ビッくらポン!に採用されているオリジナル人形「黄昏のギョジン」。扇風機の風にあてると足がパタパタ動くなどシュールな雰囲気が人気
ビッくらポン!に採用されているオリジナル人形「黄昏のギョジン」。扇風機の風にあてると足がパタパタ動くなどシュールな雰囲気が人気【画像提供=くら寿司】


また、ビッくらポン!の導入は売り上げにも大きな影響を与えたようで、岡本さんは「5枚のお皿で一度回せるので、“5の倍数”で食べ終わる方が増えましたね」と話す。キリのいい数字、かつ4皿や9皿のときに「あと1皿で回せる」という心理に働きかけている。さらにほとんどの皿が水回収システムによって調理室へと送られるため、従業員の作業効率も向上している。

大人も夢中になるコラボグッズ!きっかけは“あのアニメ”だった

ビッくらポン!の魅力といえば、景品の豊富なラインナップと答える人が多いのでは。なかでもさまざまなアニメやゲーム作品とのコラボグッズは、子どもだけではなく、大人も夢中になるほどだ。現在は、およそ月に1回のペースでコラボグッズをリリースしているが、この企画が大ヒットしたきっかけは何だったのか。

「導入当時は、お子さん向けに展開していたので『プリキュアシリーズ』や『仮面ライダーシリーズ』といった、主にお子さんから人気がある作品とのコラボを中心に行っていました。しかし、2009年に人気アニメ『ONE PIECE』の劇場版とコラボしたところ、これまでのターゲット層ではなかった方たちがご来店されるようになりました」

さらに特筆すべきは、“アニメの放映内容とリンクしている”こと。例えば、2023年6月現在でコラボ中の『鬼滅の刃』であれば、現在放映中の『刀鍛冶の里編』のキャラクターが起用されているのだ。岡本さんは「ファンの方からはたくさんの喜びの声をいただいてます」と話す。しかし、オリジナルグッズも負けてはいない。

「現在、お寿司のネタのミニチュアを景品として提供しているのですが、精巧なつくりとミニチュアのかわいらしさが相まったのが魅力と言っていただけることが多く、コレクションされている方も多いと聞いています。なかでも最も驚いたのは、女性の方がスマートフォンのスタンドにアレンジされていたことですね。『こんな使い方があったんだ!』と勉強になりました」

くら寿司オリジナル景品。一見すると本物と見間違えるほどに精巧に作られている
くら寿司オリジナル景品。一見すると本物と見間違えるほどに精巧に作られている【撮影=西脇章太】