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コロナ禍で増加傾向の事故物件。住むメリットと資産としての価値とは

2023/05/31 14:00 | 更新 2023/06/02 17:00
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コロナ禍で浮き彫りになった、社会的孤立や孤独といった社会課題。誰にも気づかれないまま高齢者が孤独死するケースが増えているという。また、2022年の自殺者数は2万1881人で前年に比べて4.2%増えた。自殺場所として最も多いのは自宅だ。事故物件を専門に扱う「成仏不動産」を運営する、株式会社マークス不動産代表取締役の花原浩二さんに、事故物件を取り巻く現状や資産価値について話を聞いた。

成仏不動産が手がけた東京都内の事故物件のリノベーション事例【写真提供=マークス不動産】
成仏不動産が手がけた東京都内の事故物件のリノベーション事例【写真提供=マークス不動産】

事故物件「増えているという感覚はある」

ーーまずは事故物件の定義を教えてください。
【花原浩二】2021年に国土交通省が出したガイドラインによると、自死や他殺、そして自然死であっても発見が遅れて特殊清掃が入った場合は事故物件になります。弊社ではこのガイドラインとは別に、死因や発見までの時間など心理的瑕疵(かし)の度合いに応じて5段階に区切り、購入する方が選びやすいようにしています。

株式会社マークス不動産代表取締役の花原浩二さん。成仏不動産事業は、事故物件を買い取り、リノベーションするなどして、事故物件に抵抗がない人に向けて販売をしている
株式会社マークス不動産代表取締役の花原浩二さん。成仏不動産事業は、事故物件を買い取り、リノベーションするなどして、事故物件に抵抗がない人に向けて販売をしている

ーーコロナ禍で孤独死や自殺者数が増加傾向にありますが、事故物件の相談件数も増えていますか?
【花原浩二】そうですね、弊社の事業規模も伸びているので、そことの比較が難しいところではありますが、増えているという感覚はあります。葬儀社や特殊清掃業者の方々と打ち合わせする際には、「あからさまに増えている」「特に若い方の自死が増えている」という声を聞きます。

リノベーション前の部屋の様子【写真提供=マークス不動産】
リノベーション前の部屋の様子【写真提供=マークス不動産】

ーー最近は事故物件を扱った映画やYouTube動画などもあり、ある意味でコンテンツ化している部分もありますよね。
【花原浩二】実際に、そういう目的で借りたいと言われることもあるのですが、すべて断っています。事故物件と幽霊を結びつける人は、ご遺族の顔が見えていないと思うんです。幽霊でいけば再生回数が伸びたり、話題になったりするのでしょうが、はたしてご遺族の前で同じことが言えるのだろうかと思います。

違いは「住む人の気持ち」だけ

ーー事故物件に住むメリットは価格面かと思いますが、同じ条件の物件と比べると、どれぐらい安くなるのでしょうか?
【花原浩二】これは事故の種類と価格によって大きく変わります。2000万円前後の物件で殺人事件が起きるとだいたい半額になりますね。これが自死なら2から3割、孤独死なら1割ほど価格が下がります。1000万の物件なら、下落率はもう少し大きくなります。一方で、1億円の物件なら、殺人事件があったとしても半額にはなりません。

リノベーション前(写真左)とリノベーション後(同右)【写真提供=マークス不動産】
リノベーション前(写真左)とリノベーション後(同右)【写真提供=マークス不動産】

【花原浩二】また、地方にいくほど価格は下がる傾向にあります。例えば新宿の事故物件であれば、人口が多いので平気な人も結構います。しかし人口が少ない地方は平気な人も少ない。また、地方の場合は「あの人、あの物件に住んでるんだって」と噂が広がることもあります。住むのが嫌だというのではなく、周囲の目が気になるというケースもけっこうあるんです。

リノベーション前(写真左)とリノベーション後(同右)【写真提供=マークス不動産】
リノベーション前(写真左)とリノベーション後(同右)【写真提供=マークス不動産】

【花原浩二】通常、不動産の価値が下がるのは、「駅から遠い」「家が狭い」「築年数が古い」といった理由が考えられます。ところが同じ条件であっても、事故物件というだけで安く購入できるんです。何が違うかというと住む人の気持ちだけ。物理的な差はなく、何ならリノベーションしてさらにきれいになっている物件もあるので、こんなにお買い得な物件ありません。

葬儀社とも提携して全国から情報収集

成仏不動産では供養の手配なども行っている【写真提供=マークス不動産】
成仏不動産では供養の手配なども行っている【写真提供=マークス不動産】

ーー事故物件を購入する人に傾向はありますか?
【花原浩二】最初は、警察官や看護師など人の死に関わる職業の方が多いかと思っていました。でも実際には、年齢も職業もバラバラ。事故物件だからというより、物件の面積による傾向はありますね。孤独死や自死があるのは、1ルームや1Kの物件が多いので、30〜50代の単身者、シングルマザーの方が住まれることが多いです。

ーー毎月の相談件数はどのぐらいですか?
【花原浩二】弊社に直接問い合わせがあるのが平均50〜60件。それプラス、提携している葬儀社、特殊清掃業者、遺品整理業者、不動産会社などからも情報が入ってくるので、毎月80から100件程度です。他社と提携することで、事故物件を不当に安く買おうとする会社に情報が伝わるのを防いでいます。

リノベーション前のキッチン【写真提供=マークス不動産】
リノベーション前のキッチン【写真提供=マークス不動産】

リノベーション後のキッチン【写真提供=マークス不動産】
リノベーション後のキッチン【写真提供=マークス不動産】

ーー買い取りから販売までの流れを教えてください。
【花原浩二】一番王道なのは、電話もしくはメールでの問い合わせです。まずは、いつ、どこで、どういうことがあったかなど、概要をヒアリングします。その後、エリア担当の営業からご連絡を差し上げて、もう少し詳しい話を伺います。

【花原浩二】そこからは、いくつかのパターンに分かれます。例えば特殊清掃がすぐに必要な場合は、その手配を進めます。臭いがひどいなど、近隣に迷惑をかけているなら、現地で立ち会って対応もします。どちらかというと多いのは、そういった対応は終わったあとで、買い取ってもらえないかというご相談ですね。そういう場合は、現地で査定を行います。

物件を販売する際は「発見まで72時間未満の孤独死・病死物件」「発見まで72時間以上の孤独死物件」「火事や事故で人が亡くなった物件」「自死物件」「殺人物件」のどれに該当するかを明かしている
物件を販売する際は「発見まで72時間未満の孤独死・病死物件」「発見まで72時間以上の孤独死物件」「火事や事故で人が亡くなった物件」「自死物件」「殺人物件」のどれに該当するかを明かしている

【花原浩二】このときに、仲介か買い取りかを判断します。仲介は、売主と事故物件に抵抗のない方との間に立って契約を成立させることです。買い取りの場合は、弊社が売主から買い取って、そのエリアに応じたリノベーション戦略を立てます。これは物件や事故の内容、エリアの相場感によって変わります。都内の一等地と地方の山奥では不動産の価格が違いますし、客層も違います。しっかりリノベーションして、価値を上げてから売るのがいいか、必要最低限のリノベーションにして価格優先で出していくのか、物件ごとに判断をします。

不動産投資向けに販売も

ーー事故物件を扱う不動産会社はほかにもありますが、成仏不動産の強みは何でしょうか?
【花原浩二】大きく分けると「心」と「テクニック」のふたつです。まず、心については、一番大切にしていることです。所有する不動産が事故物件になったお客様は、不動産会社に相談しても断られ続けて、売れるならいくらでもいいという心理状態になっています。だから、悪い言い方をすれば、安く買い取ろうと思えば、いくらでも安く買い取れてしまう。なぜなら、どこにも基準がないからです。

リノベーション後の収納スペース【写真提供=マークス不動産】
リノベーション後の収納スペース【写真提供=マークス不動産】

【花原浩二】儲けたいと考える不動産会社が接客すれば、ものすごく低価格で買えてしまう。そんな状況をなくしたいというのが弊社の取り組みです。「高額買取への挑戦」と謳っていて、半年後、1年後、今よりももっと高く買い取れるような世の中にしていきたいと思っています。

【花原浩二】テクニックのところでいうと、弊社は投資家を集めて、その方たちに向けて物件の販売を行っています。孤独死などは、ワンルームや1Kといった間取りが多いので、不動産投資に向いているという面があります。また、2年前に国土交通省が出したガイドラインでは、賃貸の場合は3年経つと事故物件と告知する必要がなくなりました。

特殊清掃や、お寺や神社で供養、お祓いを行った物件には「成仏認定書」を発行している
特殊清掃や、お寺や神社で供養、お祓いを行った物件には「成仏認定書」を発行している

【花原浩二】そこで投資家を集めるために、全国でセミナーを開催して、「事故物件に投資することで、結果として困っている人を助けることになる」「今がブルーオーシャンでおもしろいから」という切り口でお話をしています。こうした取り組みによって、弊社は事故物件を少しでも高く購入できる。これがうちの強みだと思っています。

事故物件の可能性を探り、さまざまな取り組みを続けるマークス不動産。今後、事故物件に対するイメージや価値観が変化していくかもしれない。

この記事のひときわ#やくにたつ
・目的に応じた仕組みづくりが大切
・客層やエリアに合わせた戦略を立てる

取材・文=伊藤めぐみ、撮影=三佐和隆士

■成仏不動産公式サイト:https://jobutsu.jp/

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