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無職をおもしろがる!「キャリアブレイク研究所」代表が語る人生の新たな選択肢とは?

2023/05/16 11:30
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「今の仕事を変えたい」「違う働き方をしたい」、また「一度仕事を休んでゆっくりしたい」と思いつつも、空白期間(ブランク期間)があると転職活動で不利になるといった考えゆえに、やめる選択肢をとることができない……という人は多いのではないだろうか。また、予期せぬ事情により「一時的な離職や休職をせざるを得ない状況」は誰にも起こり得るが、キャリアの中断への不安から、離職や休職そのものにネガティブなイメージを抱いている人もいるはず。

そんななか、一時的に働くことから少し離れる「キャリアブレイク」という考え方を提唱し、“無職=よくない状態”という日本の現状を打破すべく、一般社団法人「キャリアブレイク研究所」を立ち上げたのが北野貴大さん。今回はキャリアブレイクのメリットや実態、法人としての未来について話を伺った。

2022年10月20日に設立した「一般社団法人キャリアブレイク研究所」代表の北野貴大さん
2022年10月20日に設立した「一般社団法人キャリアブレイク研究所」代表の北野貴大さん【撮影=福羅広幸(兄弟エレキ)】


法人立ち上げのきっかけはパートナーのキャリアブレイク

【写真】キャリアブレイクを行っている人が孤独にならないように「おかゆホテル」を開業
【写真】キャリアブレイクを行っている人が孤独にならないように「おかゆホテル」を開業【撮影=福羅広幸(兄弟エレキ)】


――初めに、北野さんのご経歴について教えてください。
【北野貴大】物作りが好きで、大学では建築学を学び、空き家の再生や街づくりに取り組んでいました。その後、2014年に「JR西日本グループ」に入社し、JR大阪駅直結の商業施設「ルクア大阪」をはじめ商業施設の企画開発を担当することに。学生時代は小さい物件を楽しく触っていたので、そこからかなり大きな施設に携わるようになり、けっこうギャップを感じていました(笑)。でも規模が大きい分、プロデュースのしがいがあったので、働きがいはありましたね。そこから丸8年働き、少しずつプロデュースのおもしろさに目覚め、2022年にPR会社「合同会社パチクリ」を設立し、独立しました。

――そこからなぜキャリアブレイク研究所を立ち上げることになったのでしょうか?
【北野貴大】その後もデパートのプロデュースやPRの案件を続けていたのですが、キャリアブレイクという文化をたまたま知って「おもしろいな〜」と思い、最初に始めたのが一時的な離職・休職など、人生を少し立ち止まりたい人のための宿「おかゆホテル」です。PRという仕事はすごく商業的だなと個人的に思うところがあって、その罪悪感を消化するために宿を開業したのも理由のひとつ。自分の心にあるものをPRして広がっていくということがおもしろくなってきて、仲間も増えたので法人化しました。これが「一般社団法人キャリアブレイク研究所」の始まりです。

――「キャリアブレイク」という言葉を知った経緯や、「無職」をテーマに活動し始めたきっかけを教えていただけますか?
【北野貴大】商社で働いていた妻が2020年ごろにキャリアブレイクをしたことです。そのころ僕は、JRですごく楽しく働いていたため、妻に「ちょっと無職をしてもいい?」と聞かれた際に、あえて無職を挟むという行動を、当時は“奇行”だと思っていました(笑)。しかし妻は無職中にたくさんの経験をして、今はITプログラマーとして働いています。

――奥さまはもともとキャリアブレイクという文化をご存じだったんですか?
【北野貴大】キャリアブレイクという言葉は知らなかったようですが、イギリスに住んでいたときに友人たちがそういった行動をしていたそうなんです。「無職=ネガティブ」ではなく、感性を回復させたり、選択肢を増やしたり、いい期間として過ごしていたそうで、そういったことをぼんやり覚えていたため、無職期間を設けたんだと思います。たまたま同じ時期に、欧州では彼女のような離職の選択をキャリアブレイクと呼ぶらしいと知り、おもしろいなと思ってSNSなどで発信を始めたのが活動のきっかけです。

キャリアブレイクとは「生きるリズム」の選択肢のひとつ

――あらためて、キャリアブレイクとはどのような考え方なのでしょうか?
【北野貴大】欧州では一般的で、休息、旅、自己研鑽、トレーニング、キャリア開発、子育て、心身の回復などを目的に、一時的に働くことを休止する文化です。欧州の方に話を聞くと、新卒一括採用ではなく、働きたいときに就職するという感じなので、メジャーすぎて名前は知らないというほど浸透しています。日本にも「森林浴」という言葉がありますが、欧州の方からすると「森を浴びるなんてすごいカルチャーだね」と言われるんです。日本人からすると森林浴って当たり前にするものじゃないですか。そのような感覚でキャリアブレイクが根づいています。

――なるほど。日本ではまだあまりなじみがなく、否定的に取られることが多いかと思います。
【北野貴大】キャリアブレイクとは「生きるリズム」の選択肢のひとつだと考えています。僕を例にすると大学から新卒で就職し、楽しく働いてそのまま起業しました。もちろんキャリアブレイクを経験していませんし、今も取りたいとは感じていません。僕はこういうリズムで生きてきていますが、たくさんの生きるリズムがあると思うんです。でも、世の中には正解のリズムみたいなものがあって、大学に行って新卒で就職し、転職の間に無職期間なんてないというような、ある程度、固定化されたリズムですね。本当は異なるリズムを選んだってよくて、行き詰まったから一回、全部手放してみようかな、という生きるリズムの選択肢のひとつがキャリアブレイクだと考えています。

――キャリアブレイク研究所では、具体的にどのような活動を行っているのでしょうか?
【北野貴大】キャリアブレイクにいたった経緯、キャリアブレイク中にやってよかったことなどをキャリアブレイク当事者が執筆する情報誌「月刊無職」を毎月6️日に発行しています。もうひとつ、キャリアブレイク中の方が集まり一緒に活動、学びあえる機会を提供する「むしょく大学」も運営しています。この2つが大きな活動で、どちらも当事者が運営しているのが特徴です。

――キャリアブレイクという言葉を社会に広める活動も行っているのですか?
【北野貴大】鬱になって仕事を辞めた人もキャリアブレイクと呼ぶ一方、本田宗一郎さんもキャリアブレイク(ご本人の著書では「人間休業」と呼ばれています)をしてその期間中に熟考してホンダを立ち上げたり、正しい情報というか、定義が定まっていないのが現状です。まずは当事者のために窓口を作り、欧州とは異なる社会背景の⽇本で⽂化となるよう調査研究し取りまとめ、法政大学の石山教授や片岡先生にアドバイスをもらいながら、地⽅⾃治体や企業、コワーキングなどそういった情報が欲しい⽅々に提供しています。

――地方自治体や企業も取り入れる姿勢になってきているのでしょうか?
【北野貴大】キャリアブレイクする方は「UIJターン」につながりやすいので、東京一局集中の問題の観点から地方自治体は興味があるようです。また、企業でも新規案件を考える際に、会社の中の常識からちょっと離れて考えられるサードプレイスを作るために、そういった場所を作るにはどうすればいいかという相談があります。

キャリアブレイク研究所(https://lit.link/carrerbreaklab)
一時的な離職・休職を肯定的に捉える「キャリアブレイク」を文化にする、一般社団法人キャリアブレイク研究所。月刊無職むしょく大学おかゆホテルなどの活動、調査研究を行なっている。

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