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【あなたにとって「仕事」と「お金」とはなんですか?】株式会社圓窓代表取締役・澤円「お金とは“目的”ではなく幸せを手に入れるための“手段”」

2023/03/13 18:00 | 更新 2023/03/20 17:35
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さまざまな分野で活躍する方に、「仕事」と「お金」について聞く連載企画『あなたにとって「仕事」と「お金」とはなんですか?』の第1回は、日本マイクロソフトの業務執行役員として活躍し、現在は株式会社圓窓代表取締役として大学教員、企業の顧問やメンター、講演やセミナー活動など幅広く活躍する、ビジネスシーンで注目を集め続ける澤円さんが登場。「そもそもお金とはなにか」という本質的な部分から、「幸せな人生とお金の関係」などを聞いた。

株式会社圓窓代表取締役・澤円さん
株式会社圓窓代表取締役・澤円さん【撮影=在本彌生】


お金を得ることを目的化すると不幸になる

——まずは単刀直入に伺います。澤さんにとって「お金」とはどんなものでしょうか?
【澤円】お金は「目的」ではなく「手段」だと捉えています。この「目的ではなく」というのが重要なポイントで、お金を得ることを目的化している人が多いと感じるのです。もっと言うと、お金を目的化すると人は不幸になると思っています。

——お金を目的化したら不幸になる?
【澤円】僕はよく「手段を目的化するとたかられる」とも言っています。お金を得ることを目的化していると、「苦労しなくてもお金が手に入りますよ」などという人が近寄ってくるようになるからです。すると、そんな誘いに惹きつけられて、結局はたかられてしまうということですね。

——苦労して働かなくてもお金が手に入る方法に飛びつくということですか?
【澤円】これって、「この壺を買うといいことがありますよ」というのと似ていませんか?(笑)。だから、お金は目的ではなく手段だとしっかり認識していないと、思わぬところで足をすくわれることになる。逆に、お金は手段と考えていると、「幸せを手に入れるためにお金を活用しよう」と考えることができます。僕は、「人は幸せになるために生きている」と考えています。そして、お金を幸せになるための手段として見ると、とても便利なものなのです。

——便利というのは?
【澤円】お金は「選択肢を広げてくれる」からです。もちろん、お金がなくても幸せになれる人はいます。例えば、「魚を釣っていたらとにかく幸せ」という人は、別にお金がたくさんなくても、海辺にいて釣り竿さえあれば幸せを感じられるでしょう。それは自分が幸せになる手段を、すでに手にしているからです。

【澤円】でも、「どうすれば幸せを得られるのかわからない」という状態の人にとっては、お金があれば、いろいろな選択肢を試すことができます。それこそ魚釣りかもしれないし、車に乗ることかもしれないし、高い洋服を着ることかもしれないし、お酒を飲むことかもしれない。これってすべて、お金によって実現することができますよね?

——たしかに、お金があれば選択肢は広がります。
【澤円】お金というのは、手段としては有能なのです。よく「お金がない=よくないこと」と思われますが、お金がないからそのまま不幸になるのではありません。そうではなく、「どうすれば幸せになれるのかわからない」のに、「選択肢の幅も狭まっている」状態が不幸なのです。

【澤円】だから、まず自分がどうすれば幸せになれるのかを知ることが必要です。もし今お金がなくても、「こうすれば絶対に幸せになれる」という確信があるなら、あとは手段を手に入れることに集中すればいい。「あれを手に入れるために頑張るぞ!」と思えますよね?

自分はなにをすれば幸せになれるのか?

——ただ、幸せやそれを得るための選択肢ってぼんやりしていませんか?
【澤円】それは多くの場合、「自分ではなく他人の尺度で決めている」からだと僕は思っています。他人を見て「いいな」「うらやましいな」と思うわけですが、それを実際手に入れたら、「自分が本当に幸せになれるのか」がリンクしていない。その原因のひとつがSNSですね。

——みんながキラキラした投稿をするから気になるんですよね。
【澤円】SNSを見ていると、「いいな」「私もああなりたい」と思わされてしまいますよね?でも、「それで自分は本当に幸せになれるのか?」という部分がスポッと抜けていることがほとんどです。その思考がない状態で、かつお金もなければ、それはやっぱり幸せからは遠ざかりますよね。

——澤さんが若かったころ、お金がないときになにを感じていましたか?
【澤円】「相対的にお金がないこと」を勝手に不幸だと思っていました。僕はバブルが崩壊した直後に社会人になった世代なのですが、世の中にはまだバブル期の名残がありました。まわりには、あまり苦労せずに大企業に入社し、高給を得ている人がたくさんいましたね。でも、僕はそんな恩恵は全くなく会社に入ったので、いきなり格差を感じた。

——どうしてもまわりと比べてしまった……?
【澤円】そうそう、つい少ない給料に目が行き、「自分は不幸だ」と勝手に思い込んだわけです。そうなると、多少お金が入ってきたとしても不幸なままですよね。ですが、マイクロソフトに転職して3年ほど経ったころ、給与テーブルの見直しが全世界に行われた結果、収入がグンと上がった。

——ある程度のお金を持ったときどう思いましたか?
【澤円】「ずいぶん生活が楽になったなあ」って(笑)。そのときはじめて、「選択肢の幅ってこんなに広がるんだ!」と思いました。これが、先に言ったことですね。お金がないことがそのまま不幸なのではなく、選択肢が狭まっている状態に囚われてしまうのが要注意ということです。誰もそんなことを教えてくれなかったので、僕の場合、お金がある程度入ってきたときにはじめて気づくことができました。

——そのお金でなにをしたのですか?
【澤円】欲しかったものがあったので、それを実際に買いましたよ。でも、ここでまた気づきがあった。うれしいには違いなかったのですが、だからといってものすごく幸せになったのかというと……別にそうでもありませんでした。

【澤円】この体験から、「なるほど!たくさんお金があれば、たくさん幸せになれるわけではないのか」と思いましたね。そうではなく、選択肢の幅が増えて少しだけ「余裕」ができたことのほうが、僕にとっては幸福感を感じることだったのです。

他人と比べずに自分の「やりたいこと」をまず決める

——たしかに、お金がないときは心に余裕がなくなりますよね。
【澤円】はい。ただ、あまりに極端な場合は別にして、基本的にはお金の多寡が問題ではありません。そうではなく、「他人と比べてお金がない」と思ってしまう人が、自分をいとも簡単に不幸にしてしまうのです。そんなお金に対する考え方や、幸せに対するアンテナの感度といったものが複合的に絡まって、あなたが幸せか幸せでないかが決まってくるのだと思いますね。

——自分と他人を比べるような見方をやめることが必要?
【澤円】そうです。僕がよく言うのは、そもそも人間という生き物は、他人と比較して自分の位置を意識するようにできてしまっているということです。例えば、会社や組織でもヒエラルキーがあり、なんの疑問もなく「上司部下」という言葉を使っていますよね。相対的な上下関係を嫌でも思い知らされています。

——そういえばそうですね。でもどうしてでしょう?
【澤円】それは、「人間が重力に支配されているから」と、僕は思っています(笑)。だから、どうしても上下という概念を持ってしまう。でも、例えば宇宙空間にいたら、上下なんて概念も感覚もありません。ならば、「そうした思考でいたほうが、常識やしがらみや固定化した人間関係から解き放たれるのではないか?」。僕はそう考えています。だから最近、「無重力でキャリアを考えよう」といっています。

——それはどういうことですか!?
【澤円】「他人と比べるのではなく、まるで無重力でぷかぷか浮いているような、完全に自由なイメージで自分のことを考えよう」ということですね。自分の幸せややりたいことを、もっと主観的に、相対的ではなく絶対的に考えていこうということです。

【澤円】そんな姿勢でいると、お金の悩みを減らすことにもつながりますよ。よく「お金持ちになるにはどうすればいい?」という質問がありますよね。でも、僕はその前に、「それってなにをするためのお金?」「お金を稼いでなにがやりたいの?」と聞きたい。

——まさに目的ではなく手段、ですね。
【澤円】たしかにお金は選択肢を広げてくれるから、巨額のお金を持っている人にしか見えない世界もあるのだとは思います。でも、お金と自分の幸せとをリンクさせるのは、自分自身しかいないのです。「自分はなにがしたいのか」「自分はどうありたいのか」がわかっていなければ、お金がいくらあっても決して幸せにはなれません。自分の外に、自分の答えはないからです。

【澤円】しがらみやヒエラルキーから解き放たれて、上下左右も重力さえもない空間でぷかぷか浮いている自分の姿をイメージしてみてください。自分の人生は、すべて自分で主観的に選んで、決めていいのです。自分にとって大切なものは、幸せであれ、大切な人に対する気持ちであれ、自分の中にしかないのですからね。

「自分の人生は、すべて自分で主観的に選んで、決めていいのです」
「自分の人生は、すべて自分で主観的に選んで、決めていいのです」


この記事のひときわ#やくにたつ
・お金は目的ではなく、幸せになるための「手段」
・他人と比べるのではなく、自由なイメージで自分のやりたいことを考える

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=辻本圭介

『やめるという選択』
日経BP(2021)

【プロフィール】澤円(さわ・まどか)
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンターセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教員、武蔵野大学客員教員の他、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。著書に『個人力 やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)、『「疑う」からはじめる。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)、伊藤羊一氏との共著に『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。

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