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【あなたにとって「仕事」と「お金」とはなんですか?】株式会社圓窓代表取締役・澤円「“複数の自分”に働いてもらう世界がやってきた!」

2023/03/20 18:00
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さまざまな分野で活躍する方に、「仕事」と「お金」について聞く連載企画『あなたにとって「仕事」と「お金」とはなんですか?』。前回に続いて、日本マイクロソフトの業務執行役員として活躍し、現在は株式会社圓窓代表取締役として大学教員、企業の顧問やメンター、講演やセミナー活動など幅広く活躍する、ビジネスシーンで注目を集め続ける澤円さんが登場。AIやロボット、ブロックチェーンをはじめ新しいテクノロジーが次々と登場する今の時代における、お金を稼ぐための方法や、世の中の変化を見据えた働き方について聞いた。

株式会社圓窓代表取締役・澤円さん
株式会社圓窓代表取締役・澤円さん【撮影=在本彌生】


お金は大切な人を応援するために使う

——澤さんはお金の「使い方」で心がけていることはありますか?
【澤円】自分や家族が幸せになったり、他の人も笑顔になってくれたりするような使い方を心がけていますね。どういうことかというと、自分の友人が手がけるお店や製品、サービスなどになるべくお金を使うようにしているのです。お金は「誰のために使うか」が大事だと思いますし、自分のお金を大切な誰かのために使えている状態であるほど、僕はうれしくなります。

——最近ではどんなお金の使い方をしましたか?
【澤円】ロケットの発射基地があることで知られる北海道大樹町で、アジア初の商業宇宙港「北海道スペースポート」事業を運営するSPACE COTAN株式会社に投資しました。企業版ふるさと納税をしたのですが、そういうことをすると、お金を使った甲斐があるんですよね。ホームページに名だたる支援企業のロゴとともに、僕の会社も堂々と載っていたのを見たときは、さすがにちょっと驚きましたけどね……(苦笑)。きっかけは、あるイベントでSPACE COTANのCOOの大出大輔さんと仲良くなったことです。

——そんなお金の使い方はいいですね。
【澤円】僕の父は証券会社に勤めていたのですが、よく「株は金儲けのために絶対買うな」といっていました。「株というのは、会社を応援するために買うものだ」と。これは実際的なお金のアドバイスだと思います。例えばスポーツでも、応援するチームが勝つこともあれば、負けが続くときもあります。でも、負けていても、応援しているのなら「仕方ないか」と思えませんか?逆に、いったん「お金を儲けてやろう」と思うと、株でもギャンブルでもどんどんハマっていってしまう。僕は、お金は幸せを得るための「手段」と捉えていますが、お金儲けというのは、逆にお金を得ることを「目的化」する行動なのです。

——なるほど。お互いをサポートするためにお金を使うわけですね。
【澤円】これは仕事にも関係していて、僕は常々「仕事は相互作用が大事」と考えています。お互いが自己実現できるようにサポートし合うことができれば、仕事はどんどん充実していくものです。

【澤円】仕事で大事なことは、利益もさることながら、最終的にお互いが「いいことやったね」「面白かったね」と言い合えることではないでしょうか。それは結局のところ、「誰とやるか」で決まります。それと同じように、お金を使うときに大切なのも、「誰のために使うか」なのだと思います。

体験を「抽象化」すればお金を稼ぐ方法が見えてくる

——では、いいお金の使い方をするためにも、収入を増やすには「働き方」をどう変えればいいでしょう?
【澤円】お金の「稼ぎ方」を知りたいなら、逆にお金の「使い方」に成熟することが大事だと思います。なぜなら、実際にお金を使うからこそ、「どんなものにどの程度のコストがかかるのか」がわかるし、「どんなものにお金を払いたくなるのか」という人々の消費行動にも敏感になれるからです。

——実際にお金を使うことで、お金の稼ぎ方も見えてくる?
【澤円】例えばあるサービスを体験したときに、「こんなサービスだから人は高いお金を払っても納得するんだな」と感じたとします。すると、次にやることはその体験を「抽象化」し、自分がそれをやってみる側になればいいのです。

——「抽象化」ですか。
【澤円】抽象化というのは、簡単に言えば「ものごとの本質を捉える」ということです。具体例で説明しましょう。僕の知人に老舗の一流ホテルで働く人がいます。僕はときどきそのホテルに泊まりに行くのですが、抜群のホスピタリティーでサービスしてくれるので、そこで得られる体験は日常とはまったく別物です。だからこそ、そのサービスに対し納得して、対価としての消費行動をするわけです。

【澤円】ならば、自分がお金を稼ぐ側として、この特別な体験を「抽象化」するとどうなるか?「パーソナライズされた質の高いサービスを提供すると、高い報酬をいただける」という示唆が得られますよね。

——なるほど、自分がお金を使って得た体験のなかに、お金を稼ぐためのヒントがあるわけですね。
【澤円】別に高級なものでなくても構いません。もし格安なのに案外快適なホテルに泊まったなら、そのホテルはおそらく無駄なコストを抑えるため、徹底的に自動化を図っているはずです。この体験を「抽象化」すると、自分の仕事の効率を徹底的に追求するきっかけになったり、誰かの生産性を上げるサポートをしたりするビジネスが見えてきます。

【澤円】つまり、自分の体験を抽象化すると、「誰をターゲットにして、どんなアプローチで稼げばいいか」まで考えられるようになるということです。ただし、よりラグジュアリーな体験をしたほうが、高い報酬を得るための手段やヒントはつかみやすくなるので、自分への投資に変わりやすいとは思います。

【写真】「自分が楽しさや喜びを感じられる仕事や時間の使い方をして、それを『お金に変えていく』という思考の切り替えが必要」と語る澤円さん
【写真】「自分が楽しさや喜びを感じられる仕事や時間の使い方をして、それを『お金に変えていく』という思考の切り替えが必要」と語る澤円さん

“複数の自分”に働いてもらう世界がやってきた!

——お金を得るには仕事が重要ですが、今後、私たちの仕事はどのように変わっていくと見ていますか?
【澤円】よく「AIやロボットに人間の仕事が奪われる」などと言われますよね?これに関連して、以前Twitterにすかいらーくグループで働く方の興味深い投稿がありました。すかいらーくグループは「ネコ型配膳ロボット」の導入で話題になりましが、ある日その方が働いているときにロボットが壊れたそうです。そこで、仕方なく自ら配膳すると、料理を運んでもテーブルの荷物をどけてくれなかったり、文句や嫌味を言う人がいたりして、ものすごいストレスだった、と。そしてこの方は、ロボットによってストレスの強い仕事をやらずに済んでいたことを実感したそうです。

【澤円】これは、ストレスの強い仕事を我慢して稼ぐ世界は、終わりに近づいていることを示しています。むしろ、自分が楽しさや喜びを感じられる仕事や時間の使い方をして、それを「お金に変えていく」という思考の切り替えが必要なのです。それには、時間を切り売りするのではなく、自らがアウトプットをして、他の人を巻き込むような仕事をするといいと思います。

——ただ、アウトプットしたくても、自分の強みや取っ掛かりがわからないという人も多いように感じます。
【澤円】まずは、組織や他人に依存するのではなく、「個」として立つ意識を持つことから始めてみるのはどうでしょう?自分という存在がいかに可能性に満ちているのかを、もっと真剣に考えて、自分自身を信じることです。

【澤円】なにも、“キャラ立ち”する必要はありません。自分がつくるプロダクトでもいいし、提供できるコンテンツでも、サービスでもなんでも構わないのです。ただ、誰もが持つはずのそれらの強みが「人に知られて利用してもらうこと」を目指さない限り、お金を稼ぎにくい世の中になりつつあるということです。

——組織に属する自分としてではなく、まず「自立」した自分ができることを考える。
【澤円】次に、そんな「個」として、他の「個」とどんどん「つながる」ことがポイントです。今世界はインターネットでつながり、世の中はどんどんコミュニティ化しています。それこそWeb3(※1)は、個人同士がもっと「つながる」時代がやって来ている証だし、ブロックチェーン (※2)も、簡単に言うと「つながり」を信用できるから成り立つテクノロジーです。それこそお金だって、ブロックチェーンによって保証される仮想通貨(暗号資産)は、国が介在しない状態で「個」が使っていくコンセプトですよね。

——「つながり」なくして成り立たなくなりつつあるのですね。
【澤円】僕が言う「個」というのは、特定の場所や人間関係に限定された「ひとりの人間」のことではありません。例えば、パソコンには「エイリアス」という、ファイルなどを別の名前で参照できる機能がありますが、それにイメージは近いですね。自分のエイリアスが、ほかにも世の中にたくさん存在し、同時並行的に活動しているイメージです。「この仕事はこのエイリアス、あの趣味の集まりはこっちのエイリアス……」というように、人とのつながりの中を「複数の自分」に動いてもらう感じです。

——そこには、どんな自分がいたっていい。
【澤円】そのとおりです。「個」といっても、自分を固定化して定義づける必要などありません。また、誰かに定義づけられるのを受け入れてもいけない。いろいろな自分がたくさん存在していいのです。

【澤円】ひとりの人間が、ひとつの場所で、ひとつの仕事をする時代は終わりました。これからは、人との「つながり」を大切にしながら、自分のエイリアスにどんどん動いてもらう働き方に変わっていくでしょう。そうして活動の場が増えるほど、そのぶんお金を得られる機会が増えていきます。もちろん、新しい出会いだってどんどん生まれます。そんな世界を軽やかに生きることが、なにより自分自身を幸せにしてあげられるのではないでしょうか。

(※1)Web3
ブロックチェーン技術によって実現した分散型インターネット。特定の管理者やプラットフォームに依存しない、次世代のインターネットの概念。

(※2)ブロックチェーン
情報を記録するデータベース技術のひとつ。暗号技術によってデータ(取引履歴)を管理し、過去から鎖(チェーン)のようにつなげてデータを正確に保管する技術。データの破壊・改ざんが極めて難しいのが特徴。

この記事のひときわ#やくにたつ
・お金は「誰のために使うか」が大事
・仕事は最終的にお互いが「いいことやったね」「面白かったね」と言い合えることが大切
・人との「つながり」を大切にしながら複数の自分に動いてもらう働き方に変わっていく

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=辻本圭介

『やめるという選択』
日経BP(2021)

【プロフィール】澤円(さわ・まどか)
1969年生まれ、千葉県出身。株式会社圓窓代表取締役。立教大学経済学部卒業後、生命保険会社のIT子会社を経て1997年にマイクロソフト(現・日本マイクロソフト)に入社。情報コンサルタント、プリセールスSE、競合対策専門営業チームマネージャー、クラウドプラットフォーム営業本部長などを歴任し、2011年にマイクロソフトテクノロジーセンターセンター長に就任。業務執行役員を経て、2020年に退社。2006年には、世界中のマイクロソフト社員のなかで卓越した社員にのみビル・ゲイツ氏が授与する「Chairman's Award」を受賞した。現在は、自身の法人の代表を務めながら、琉球大学客員教員、武蔵野大学客員教員の他、スタートアップ企業の顧問やNPOのメンター、またセミナー・講演活動を行うなど幅広く活躍中。2020年3月より日立製作所の「Lumada Innovation Evangelist」としての活動も開始。著書に『個人力 やりたいことにわがままになるニューノーマルの働き方』(プレジデント社)、『「疑う」からはじめる。これからの時代を生き抜く思考・行動の源泉』(アスコム)、伊藤羊一氏との共著に『未来を創るプレゼン 最高の「表現力」と「伝え方」』(プレジデント社)などがある。

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