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パワポを極めすぎてサントリーから転身・独立。“好き”を突き詰めて仕事にしたパワポ芸人・トヨマネって知ってる?

2023/02/10 14:00 | 更新 2023/06/20 14:40
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プレゼンテーションをするのに必須ともいえるツール「PowerPoint(パワーポイント)」。Microsoft社が提供するスライドや資料の作成ができるソフトウェアツールだが、これを使いこなすあまり、大手企業を退職し、資料作成やセミナー開催をする会社を立ち上げた人がいる。Twitterでは「パワポ芸人」という肩書きで11万4000人(2023年2月8日時点)のフォロワーを持つトヨマネこと豊間根青地(とよまね・せいち)さんだ。ユーモアあふれる画像やパワーポイント(以下、パワポ)のお役立ち情報で数々のバズを作ってきた。「“オモロ”が好きなんです」と語る豊間根さんに、パワポ芸人を自称するようになった理由や、現在の仕事について話を聞いた。

パワポ芸人・トヨマネこと豊間根青地さん。趣味でパワポでおもしろ画像を作ったり、パワポ術について解説していたらそれが副業になり、仕事になった
パワポ芸人・トヨマネこと豊間根青地さん。趣味でパワポでおもしろ画像を作ったり、パワポ術について解説していたらそれが副業になり、仕事になった 【撮影=三佐和隆士】


“プレゼン芸人”と呼ばれた大学時代。SNSではいかに人を笑わせられるかに腐心

――豊間根さんが初めてパワポに触れたのはいつごろだったのでしょうか?
【豊間根青地】大学に入ってパソコンを買ったときが最初だと思います。そのころはレポートを作ったり、プレゼンをするために使っていたりしたので、いわゆる一般的な使い方の範疇ですね。大学ではボート部に入っていたのですが、サークルオリエンテーションで新入生向けのプレゼンに使用したり。大学在学中にも“パワポ芸人”と呼ばれていたんですが、今とはニュアンスが違って“プレゼン芸人”みたいな意味合いですね。大学では都市工学を専攻していて、そこではマスタープランを作ったり、集合住宅の設計をして、教授にプレゼンをする機会がありました。教授から「ここが狭すぎる」とか「ここはどうなっているんですか?」と質問を受けるんですが、真面目な課題なのにそこでウケを狙うことばかりしていました。例えば教授から鋭い質問がきたら「いい質問ですね〜」とリアクションをするといった具合にひと笑いとっていたので、それで“パワポ芸人”と言われていましたね。

――人前で話すことが好きだったのでしょうか?
【豊間根青地】はい、とても好きですね。高校での体験が僕の人生観に一番影響を与えているんですが、都立国立高校が母校でして、文化祭がとても盛んなんです。特に3年生は夏休みを返上して、クラスで演劇をするんですよ。ほかにも応援団長をやったり、新入生歓迎会の司会をしたり、漫才をしたりと、とにかく学校行事はフルパワーでやっていたタイプの人間でした。前に出てガンガンやりたいタイプなんです。

――大学では都市工学科を専攻されたとのことですが、建築関係にご興味があったんですか?
【豊間根青地】僕は国語と生物が得意科目で、アウトドアや自然が好きということもあって、入学当初は農学部に行く気満々だったんです。ただ、生命科学を学んでいると“こういう生物にはこういうタンパク質があって、それが作用して…”みたいな話が自分には遠いものにしか感じられなくて、ピンとこなかったんですね。もっと生活に直結したものをやっていきたいと。東大は進学振り分け制度を採用していて、3年生になるタイミングで進学する学部・学科を決めます。数学と物理が苦手だから工学部は無理だぞ、さてどうしようというときにボート部の先輩に都市工学科はいわゆる“理系”っぽくないということでおすすめされて、それで専攻にいたりました。

「お坊さんがカラオケに行ったときに絶対歌うやつです」として作られた般若心経のカラオケ画面
「お坊さんがカラオケに行ったときに絶対歌うやつです」として作られた般若心経のカラオケ画面 【提供=豊間根青地】

音に合わせて文字色が変わる部分もパワポで再現。芸が細かい…
音に合わせて文字色が変わる部分もパワポで再現。芸が細かい… 【提供=豊間根青地】

――豊間根さんを“パワポ芸人”たらしめるのはパワポ使いはもちろん、Twitterも欠かせない存在だと思います。Twitterはどうして始めたんでしょうか?
【豊間根青地】Twitterを始めたのは2012年、高校生のころですね。「大学受験しんどい」とか「明日合格発表だ」とか、いわゆる“普通”のことをツイートするプライベートなアカウントで、これをずっと使っています。ただ、日常のことをただツイートするだけではなくて、いかに友達を笑わせるか、当時なら“ふぁぼ(※)”、今なら“いいね”をいかに押させるかというところに腐心していました。友達がリツイートしてくれると、それを友達の友達が“ふぁぼ”してくれてということがちょくちょくあって、プライベートアカウントとはいえ、ほかの人の使い方とは少し毛色が違ったと思います。
※Twitterの現在の「いいね」機能は、2015年11月以前は「お気に入り(Favorite)」機能と呼ばれ、アイコンも星マークだった

――Twitter開始当時からウケを狙っていたんですね!お笑い芸人になろうとは思わなかったんでしょうか?
【豊間根青地】お笑いも好きですから、将来の進路に対して“芸人になる”ということもちらっと考えていたとは思います。でもいまさらNSC(吉本興業の養成所)に入ってもなぁと思って進学しました。

――パワポで作ったおもしろ画像を投稿し始めたのはどういうきっかけがあるんですか?
【豊間根青地】ウケを考えたときに文字だとバズりにくいから画像を作りたいと考えたんです。大学在学中は大学でAdobe Illustrator(イラストレーター)を使っていたんですが、卒業して使えなくなってしまった。Illustratorの月額料金は高いなぁというのがあって、パワポを使って画像を作り始めました。フリーの画像処理ソフト「GIMP(ギンプ)」や3次元モデリングソフトの「SketchUp(スケッチアップ)」にも手を出したりもしたんですが、難しくてパワポに落ち着きました。

――「パワポでこんな画像が作れるんだ!」と驚くものが多いのですが、どうやってスキルを身につけていったんでしょうか?
【豊間根青地】操作法でわからないことがあったらとにかく“ググって”ました。企業向けのセミナーでも話しているんですが、わからないことがあったらすぐ“ググる”というのを癖にしたほうがよいです。僕のパワポスキルは“ググる”の極地ですね。画像を作っていくうちに段々とスキルアップしていきました。

パワポでのおもしろ画像の記念すべき一作目。牛丼チェーン店の朝食メニューをおしゃれにしてみたもの
パワポでのおもしろ画像の記念すべき一作目。牛丼チェーン店の朝食メニューをおしゃれにしてみたもの 【提供=豊間根青地】

――パワポを使った“おもしろ画像”の最初の作品はどんなものですか?
【豊間根青地】2018年3月に投稿した「すき家の朝食メニュー」ですね。これまで400作品くらい作ってきています。

「『うまい』と感じるハードルは低い方が幸せかもしれない。」としてツイートした「舌が肥えている人(イメージ)/舌が肥えていない人(自分)」のイメージ図が、ツイートして一番反響があったもの
「『うまい』と感じるハードルは低い方が幸せかもしれない。」としてツイートした「舌が肥えている人(イメージ)/舌が肥えていない人(自分)」のイメージ図が、ツイートして一番反響があったもの 【提供=豊間根青地】

いいねの数は20.2万だが、それ以上にインプレッション数が2000万と圧倒的な数値を叩き出した
いいねの数は20.2万だが、それ以上にインプレッション数が2000万と圧倒的な数値を叩き出した 【提供=豊間根青地】

――一番バズったツイートってどれになるんでしょうか?
【豊間根青地】「舌が肥えている人(イメージ)」と「舌が肥えていない人(自分)」の解説図ですね。20.2万いいねで、インプレッション数(表示回数)は2000万までいきました。このツイートを引用された方のツイートがまたバズったりとか、引用リツイートとかもすごく多くて、物申したくなるツイートだったんでしょうね。あまりにも反応が多過ぎて通知機能はオフにしました。

――豊間根さんはフォロワー以外の方にもまめにリプライを返していますよね。あれはフォロワーを増やすための戦略なんでしょうか?
【豊間根青地】性分ですね。僕には座右の銘が3つあります。「日々是勉強」「思い立ったが吉日」そして「人間関係はフィードバックから」です。僕自身が何かをしたときに、そこに何も反応がないというのが嫌いで、だからツイートもいいねが欲しくて頑張っているんです。なので、僕自身のツイートに対してリプをもらったときに、そこにフィードバックをしないのも嫌なんです。あまりにもバズると追いつかないのであきらめますし、明らかな悪意があるものや失礼なものはスルーしていますが、基本返信するようにしています。

自分が何者かを一言で表すために名乗り始めた“パワポ芸人”

――豊間根さんが“パワポ芸人”と名乗るようになったのは、サントリーに就職されたあとですね。サントリーではどんなお仕事をしていたんですか?
【豊間根青地】サントリーウエルネスというサプリメントのお客様担当部署に配属されました。コールセンターのオペレーターさん向けに新商品のプレゼン資料を作ったり、景品表示法について説明したり。サントリーの中でも若手に裁量を持たせてくれる部署でもあったので、KPI(重要業績評価指標)の進捗を、社長を含めた部内で報告するようなことも多かったですね。仕事でパワポを使う機会が多かったです。

豊間根さんがパワポ芸人を名乗り出す前、唯一読んでいたパワポ術に関する書籍。山口周さんの「外資系コンサルのスライド作成術」(東洋経済新報社)。「僕のバイブルです」
豊間根さんがパワポ芸人を名乗り出す前、唯一読んでいたパワポ術に関する書籍。山口周さんの「外資系コンサルのスライド作成術」(東洋経済新報社)。「僕のバイブルです」 【撮影=三佐和隆士】

――豊間根さんのパワポ作品のすごさは、おもしろさもありますが、パワポ本来の機能である「わかりやすいスライドを作る」という部分にもあると思います。これは仕事で磨かれたんですか?
【豊間根青地】そうですね、「情報を構造化して整理する」というのがパワポ作り、ひいてはプレゼンでは大事なことです。これはサントリー時代に上司や先輩方から叩き込まれました。幸い、僕の最初の上司が細かいところまで指導してくださる方だったので。

――“パワポ芸人”を名乗り始めたのはどうしてでしょう?
【豊間根青地】パワポネタで何度かバズるようになったころ、「Twitterを伸ばすには何者なのかをわかるようにする」という話を聞きかじったんです。カタカナで「トヨマネ」だけだと、なんなのかわからないじゃないですか。何をしている人なのか一言で表現したほうがよいなと思って、肩書きを考えました。パワポクリエイターとかパワポ職人も候補にはしていたんですが、僕はやっぱり“オモロ”が好きなので「パワポ芸人」になりました。そしたらパワポ芸人って一般的にも使われる言葉だったんですよね。大した仕事もしないでパワポでスライドばっかり作って、仕事をした気になっているやつ…という揶揄の表現だったという(笑)。

――豊間根さんが“パワポ芸人”の意味を変える日が来るかもしれませんよね!
【豊間根青地】できたらすごいですよね(笑)。

2022年の振り返りで作られたTwitterのフォロワー推移表。もちろんパワポ製
2022年の振り返りで作られたTwitterのフォロワー推移表。もちろんパワポ製 【提供=豊間根青地】

――Twitterのフォロワー数はパワポ芸人を名乗ってからコンスタントに伸びていった感じですか?
【豊間根青地】パワポ芸人を名乗り始めたのが2020年夏ごろなんですが、当時のフォロワー数は2000人でした。2021年12月に7万7000人に、2022年12月に11万3000人になっています。

――先ほど、Twitterではリプを返すようにしているという話がありましたが、DM(ダイレクトメッセージ)もオープンにされているんですか?
【豊間根青地】はい。DMで企業の方からお仕事のお話をいただくことも多いです。アフィリエイトの依頼などは断っていますが…。あとは、僕はTwitterでこの人いいな!と思った方をナンパしがちで(笑)、この前も、DMでお相手の方にコンタクトを取りました。小麦粉ポン太郎さんという方で、パワポのセンスが素晴らしくて。ナンパに成功して、Zoomでお話しができて、今では一緒に仕事をしているところです。

「Peach boy」というベンチャー企業を経営している桃太郎が、イヌ、サル、キジに雇用契約を持ちかけているという設定で作られた通称「桃太郎パワポ」。全23枚の力作
「Peach boy」というベンチャー企業を経営している桃太郎が、イヌ、サル、キジに雇用契約を持ちかけているという設定で作られた通称「桃太郎パワポ」。全23枚の力作 【提供=豊間根青地】

豊間根さんによると、文字色のベースをグレーにするのがおしゃれに見せるポイントなんだとか。「桃太郎パワポ」より
豊間根さんによると、文字色のベースをグレーにするのがおしゃれに見せるポイントなんだとか。「桃太郎パワポ」より 【提供=豊間根青地】

パワポのスライドでどの程度、文字量を落とし込むのかも大事なポイント。「桃太郎パワポ」より
パワポのスライドでどの程度、文字量を落とし込むのかも大事なポイント。「桃太郎パワポ」より 【提供=豊間根青地】

アーリーステージ、人的リソースのショート、戦力のアウトソース…とカタカナが飛び出すのも笑える。「桃太郎パワポ」より。豊間根さんはおとぎ話をテーマにしたプレゼンパワポを複数作成している
アーリーステージ、人的リソースのショート、戦力のアウトソース…とカタカナが飛び出すのも笑える。「桃太郎パワポ」より。豊間根さんはおとぎ話をテーマにしたプレゼンパワポを複数作成している 【提供=豊間根青地】

――パワポ芸人を名乗り始める前から副業はされていたんですか?
【豊間根青地】パワポ芸人を名乗る前に「平成からの脱出」という謎解きイベントを企画しましたね。このときのデザインはすべて僕がパワポで作りました。しかし、“副業”になったのはパワポ芸人になってからですね。“もし桃太郎がイヌ・サル・キジにお供になってくれるようプレゼンしたら”という設定の「桃太郎パワポ」がバズったのがきっかけになり、eスポーツの実況をされている吉﨑智宏(ちひろ)さんから資料のブラッシュアップをご依頼いただいたのが最初の仕事でした。

――パワポでのスライド作りにおいてのお役立ち情報を発信するようになったのはパワポ芸人になってからですか?
【豊間根青地】そうですね。パワポ芸人黎明期にこれを求められているのかな?と感じてパワポの小ネタ「ポネタ」の発信を始めました。ただ、自分の中で葛藤もあるんです。ただのお役立ち情報を教える人にはなりたくなくって。「ポネタ」についてまとめた本を出したりもしていますが、いまだに悪あがきをしていて(笑)、ただのお役立ち投稿にはならないようにしています。といっても仕事が忙しくなってなかなかできていないのですが…。

――わかりやすいスライドを作るとき、いろいろと注意点はあると思うんですが、何を一番大事にしていますか?
【豊間根青地】「聞き手と、聞き手にどう言ってほしいかを明確にしましょう」ということですね。桃太郎パワポならイヌ、サル、キジに「なんていいサービスなんだ!さっそく登録しよう」と言ってほしくて作る資料なのか、はたまた29歳営業職独身男性に「つみたてNISA始めたほうがいいな、口座開設しよう」と言ってほしい資料なのか。ここが定まってないと何もできないです。

――ものにもよるとは思うんですが、画像を作るのってどれくらいかけていますか?
【豊間根青地】桃太郎パワポは半日かかりましたね。10分ほどで出来上がっているものもあります。

――作業そのものよりもネタ出しに時間がかかっているんでしょうか?
【豊間根青地】そうですね、作るものさえ決まっていればささっと。ネタはスマホにメモっています。「東銀座はかなり銀座なのに、東日本橋は全然日本橋じゃない」とふと思いついて、もとの駅名とそこから東西南北がついた駅をマッピングすることで傾向などがみえてこないか、とか。「ファミマのセルフレジに慣れると、ローソンのセルフレジで失敗する」「教習所で習う縦列駐車のハンドルを切るタイミングは現実だと全く役立たない」とか。なかなか形にはできていないですが。

――本当に“芸人”ですね(笑)!サントリーでは、どの段階で豊間根さんが「トヨマネ」だとバレたんですか?
【豊間根青地】パワポ芸人を名乗る前から、同僚や仲のいい後輩にはネタツイートをしているというのは知られていて、フォローしてくださる方もいたんですよね。芸人を名乗り始めてから、2020年冬くらいに徐々に知れ渡って、2021年春には社内向けの勉強会で講師役を務めました。サントリーって「寺子屋」という社内プラットフォームがあって、社員同士のスキルシェアをする仕組みがあるんです。人事の方が僕の投稿を見て、講師をしてほしいという話がきて、全3回で開催しました。

“オモロ”が好きな豊間根さん。「デイリーポータルZ」「オモコロ」のWebメディアが大好きで、お笑いも好きなんだそう。しかし、一番会いたい人はももいろクローバーZの百田夏菜子さん
“オモロ”が好きな豊間根さん。「デイリーポータルZ」「オモコロ」のWebメディアが大好きで、お笑いも好きなんだそう。しかし、一番会いたい人はももいろクローバーZの百田夏菜子さん 【撮影=三佐和隆士】

――リアルの知り合いにツイートを見られる抵抗はなかったんですか?
【豊間根青地】ないですね。一時期は、自分の顔の濃さをネタにして、濃い味の食べ物を僕の顔何個分にあたる濃さかで示す「どんと濃い」っていう動画コンテンツも作って発信していたくらいです。ちなみにそれは僕のことを知っている人からのウケはよくて、「復活しないの?」みたいに言っていただくこともあります(笑)。

――サントリーで働いているとき、人並み以上にパワポが使えてよかったという経験はありましたか?
【豊間根青地】僕のいた部署では、オペレーターさん向けに年に2回お疲れ様会をやるんです。そのときの催し物でクイズを出すときに「クイズ$ミリオネア」風のスライドを作ったんですが、そのときはパワポがとっても役立ちました(笑)。これが一番おもしろかったですね。もちろん、仕事がおもしろくなかったという意味ではないですよ!おもしろいものを作って、それによってみんなが盛り上がってくれるというのがめっちゃ楽しいんです。

「トヨマネ」だけに依存しないチーム作りが今後の目標

――SNSはTwitter以外もやっているんですか?
【豊間根青地】Twitterが一番好きですが、Instagram、YouTube、noteをやっています。会社としてはTikTokもやっています。noteは桃太郎パワポを見た高校の後輩が、わかりやすいから作り方のセミナーをしてくれと依頼してきたんです。それで、桃太郎パワポについての解説をさらにパワポでまとめて、知人向けにZoomのセミナーを開催しました。そしたら、そこに参加してくれた「世界最速で日経新聞を解説する男」略してセカニチという名前で活動している南さんという高校の先輩が、「これはnoteなどで文字化して残しておけ、絶対どこかから声がかかるから」とアドバイスしてくれたんです。そして、KADOKAWAの編集者さんの目に入って…という感じで、パワポ芸人としての仕事につながっていきました。

――すごい、アドバイスが生きていますね!アドバイスされたことはしっかり実践されるんですね。
【豊間根青地】それこそ座右の銘の「思い立ったが吉日」です。誰に言われたことであろうと、自分がいいと思ったら取り込みます。

――サントリーは副業OKな会社だったんですよね?
【豊間根青地】はい。その当時は何をするのか決めていたわけではないですが、就活のときにも副業がOKなのか、副業している人はどんなことをしているのか確認していました。会社ではパワポ芸人に対して、好意的な反応をいただいていました。

――それでもサントリーを退職して、起業されたのはなぜですか?
【豊間根青地】サントリーでの収入と、パワポ芸人としての収入がトントンになって、パワポ芸人としての活動をしているといろいろなものが膨らんでいくイメージを持ったからです。知らない人に会いに行けたりして、ここに人生フルコミットしたらもっと膨らんでいくんじゃないかと感じて直感的に決めました。

――周囲の人に反対はされなかったんでしょうか?
【豊間根青地】今は頑張れと言ってくれていますが、当時両親からは大反対を受けました。親はサントリーが好きで、入社が決まったときも喜んでくれたんですよね。なので、どうにもならなくなるまで親にサントリーを辞めることを言うつもりはなかったんですが、ある日話の流れでバレてしまって。特に、それまで父は僕のやろうとしていることに真っ向から反対したことがなかったので、けっこうショックでした。そんなこともあったので、サントリーを退職することに迷いはありませんでしたが、葛藤はありましたね。

――立ち上げ当時は「株式会社Cataca」だった社名が、今は「シリョサク株式会社」ですね。どうしてですか?
【豊間根青地】わかりやすい名前がいいだろうということで変更しました。“資料をサクッと作る”からシリョサクです。

パワポ術についてのセミナーを多数開催。よいスライドを作るには、情報を階層化していくことが重要だと語る
パワポ術についてのセミナーを多数開催。よいスライドを作るには、情報を階層化していくことが重要だと語る 【撮影=三佐和隆士】

――シリョサクはどんな事業をしているんでしょうか?
【豊間根青地】企業向けのセミナー、資料作成、それからコンサルティングです。コンサルティングは起業のタイミングで始めましたが、業務内容としては副業時代の延長線上にあります。

パワポ術についてまとめた書籍を2冊執筆。我流でパワポを使っている人が、自分の使い方について考え直せるきっかけが詰まっている
パワポ術についてまとめた書籍を2冊執筆。我流でパワポを使っている人が、自分の使い方について考え直せるきっかけが詰まっている 【撮影=三佐和隆士】

――本も出されていますよね?
【豊間根青地】はい、こちらは僕個人の活動としてですね。2021年9月に「秒で伝わるパワポ術」(KADOKAWA)、2022年9月に「秒で使えるパワポ術」(KADOKAWA)を出しました。「秒で伝わる〜」はよいパワポを作るための考え方について説明しています。一から十までを抑えた基本の“キ”ですね。ある程度パワポを使っていながらも、自分のやり方に自信がないというような人が読むと、使い方を標準化ができるんじゃないかと思います。「秒で使える〜」はパワポの小ネタ術「ポネタ」を紹介した本です。こちらは新しいTipsを増やしたい人におすすめですね。ダメパワポの例も載せているので、実務に生かしやすいと思います。どちらの本も、中面に使っている図解は全部自前で作った力作です。

――起業して、どんなことに難しさを感じていますか?
【豊間根青地】僕が案件を取ってきて、話をして、請求書を作って…と個人事業主の延長線上の動きになってしまっているのが目下の課題です。メインの価値がトヨマネに依存してしまっているので、チームとして動けるようにしていかなければと考えています。

――シリョサクとして、豊間根さん個人として、目標はありますか?
【豊間根青地】制作の部分でいうと、企業のニーズをヒアリングして、情報整理とデザインをしていかなければというのが近々の目標ですね。僕は自分の考えていることがうまく伝えられると楽しいし、楽になると考えています。まだアイデアレベルですが、僕が毎回しゃべらなくても大丈夫なように動画コンテンツを作って、アカデミーのようなものを作るのもいいなと思っています。あとは、ゲーム感覚でエクセルやパワポについて学べるアプリを作るとか、“芸人”っぽい企画を立てていくとか…“オモロいもの”を作りたいですね。いいもの、おもしろいものを作っていく会社だと思われるようにしていきたいです。

「人生がずっと楽しい」と朗らかに話す豊間根さん。“オモロ”を発信するのには、自分自身が一番おもしろがることが大事なのだと感じさせてくれた。豊間根さんとシリョサクが、今後どんなコンテンツを生み出していくのか注目だ。

この記事のひときわ#やくにたつ
・情報は構造化して整理する
・ニーズを反映しつつも、自分らしさを忘れずに
・アドバイスは素直に受けて、取り入れる

取材・文=西連寺くらら
撮影=三佐和隆士

豊間根青地(とよまね・せいち)
1994年生まれ。東京大学工学部卒業後、2017年サントリーウエルネスに入社。趣味でパワーポイントを使って“おもしろ画像”を作成、Twitterに投稿しているうちに、類稀なパワーポイントスキルを活かした仕事がまいこむように。2021年に独立し、シリョサク株式会社を立ち上げる。著書『秒で伝わるパワポ術』『秒で使えるパワポ術』(KADOKAWA)。

■パワポ芸人 トヨマネ
Twitter:@toyomane
Instagram:@toyomanegram
note:@toyomane

■株式会社シリョサク
公式ホームページ:https://shiryosaku.co.jp/
Instagram:@shiryosaku
TikTok:@shiryosaku
YouTube:シリョサクTV byパワポ芸人トヨマネ

■著書販売リンク
秒で伝わるパワポ術 仕事でもSNSでも〈いいね〉がもらえるスライド作成のコツ
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