資産形成は、50歳からでも遅くない? 2024年1月から始まった「新NISA制度」は一見、初心者に優しそうですが、じつは正しい知識がなければ「損をして終わり」になる可能性もあります。そんなリスクを減らすべく、なかのアセットマネジメント社長の中野晴啓氏が執筆したのが『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』。50代にターゲットを絞った入門書で、「新NISA制度」をフル活用するための基礎知識をしっかり学びましょう。
※本記事は中野晴啓著の書籍『1冊でまるわかり 50歳からの新NISA活用法』(PHP研究所)から一部抜粋・編集しました。

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新NISAで運用すべきは「投資信託」


資産形成にあたって、どのような投資商品を選べばいいのでしょうか。
株式、投資信託、債券(さいけん)、FX(外国為替(かわせ)証拠金取引)、暗号資産、コモディティ、不動産など、資産形成に使える投資対象はたくさんあります。
私は、自分が投資信託会社を経営しているからというわけではなく、このなかから選ぶとしたら、迷うことなく投資信託です。
50歳になり、これから資産形成に取り組もうと考えている人が投資をするのであれば、投資信託一択でしょう。
新NISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」というものがあり、成長投資枠を使えば、株式の個別銘柄(めいがら)などにも投資することができます。
しかし、50歳から老後資金をつくろうとするなら、新NISAで運用すべきは投資信託です。
ここでは、新NISAでは投資できないものも含めて、投資信託以外の投資商品はなぜ50歳からの資産形成にふさわしくないのか、また、なぜ投資信託がいいのかについて、述べていきます。


株式の個別銘柄投資は難易度もハードルも高い


投資という場合、最も王道感があるのが、株式の個別銘柄投資だと思います。自分で企業の業績、財務状況、ビジネスモデルなどを分析し、さらには経営者の人となりも調べたうえで、投資すべきかどうかを判断する。まさに投資の王道ですが、これから投資を始める人にとって、数ある上場企業から数社を選び抜くのは、とてもハードルが高いでしょう。
2023年3月31日時点で、東京証券取引所に上場している企業数は、プライム市場が1834社、スタンダード市場が1446社、グロース市場が523社、TOKYOPROマーケットが71社となっています。合計で3874社もあります。
投資が好きな人のなかには、あの分厚い『会社四季報』に全部目を通して、投資する企業を見極めようとする人もいますが、それは長年にわたって失敗を繰り返し、自分なりに投資経験を積んだ人だからできることです。
それに、投資資金がたくさんあれば、30銘柄、50銘柄に分散投資することで、特定の銘柄の株価が大暴落したり、あるいは投資先企業が倒産して株券がただの紙切れになったりするリスクを軽減できますが、そこまでの資金を株式投資に回せる人はほとんどいないでしょう。数銘柄に投資するだけでは、分散投資効果を十分に得ることができず、資産価値が目減りするリスクをかえって高めることになります。
その点、投資信託ならたくさんの銘柄に分散投資しているので十分な分散投資効果を得ることができますし、その銘柄も投資を専門に行っているプロが選んでくれます。
もちろん、何事にも最初はありますから、これから株式投資の経験を積んでいけばいいという考え方もあります。
でも、それはまだ30代、40代くらいの人がいうことです。もう50代になった人が運用をするにあたっては、できるだけ大きな損をしない方法を考えなければなりません。損を取り返す時間がないからです。その意味においても、株式の個別銘柄投資は避けたほうがいいでしょう。
時々、株式のトレードで億円単位の資産を築いた人の話を聞くことがあるかもしれません。何となく「自分にも同じことができるのではないか」という気持ちになるかもしれません。が、それは幻想です。株式投資でそれだけの資産を築ける人は、恐らく100人のうち1人もいないでしょう。
それに、成功するまでに、ものすごい損失を被(こうむ)って「もう株式になんて投資しない」と思った経験を持っている人が大勢います。それでも諦めずに続けられた人だけが、株式投資で大成しているのです。
それを考えると、五十の手習いで資産形成を始める人は、株式の個別銘柄投資には手を出さないほうが無難だと思います。




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