集中力が続かない、優柔不断、カッとなりやすい...それって性格だから、と考えていませんか? 脳科学者・西剛志氏が考案した「脳の鍛え方」で、それらのお悩みは解決するかもしれません。
西氏が考案した「脳の鍛え方」――それは「写真をみること」。ポイントをおさえて厳選された写真をみることで、「7つの脳力」が鍛えられるというのです。
『脳科学者が考案 見るだけで自然に脳が鍛えられる35のすごい写真』から、なぜ写真を見るだけで脳が鍛えられるのか、鍛えられる「7つの脳力」をご紹介します。
※本記事は西 剛志著の書籍『脳科学者が考案 見るだけで自然に脳が鍛えられる35のすごい写真』(アスコム)から一部抜粋・編集しました。

写真を見るだけでなぜ脳を鍛えられるのか


脳科学者が考案 見るだけで自然に脳が鍛えられる35のすごい写真
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

「最近、物忘れが多くて、記憶力が落ちてきた」「以前に比べて、やる気が出なくなってきた」「『アレよ、アレ、アレ』と、思い出せそうなのに思い出せないことがよくある」
こんな声をよく聞きます。 
これらは、すべて脳の老化のサイン。
脳は何もしないでいると、30代から老化がはじまり、気づけばどんどん老化が進んでいます。じきに認知症になる可能性も......!
脳は、日常の習慣を変えたり、トレーニングすることで鍛えることができます。老化のスピードを遅くしたり、ときに若返らせることもできるのです。
写真を見て脳を鍛えることは、その方法のひとつです。といっても、どんな写真でもいいわけではありません。
本書で紹介する写真は、脳科学者としての知見を生かして、10万枚以上の写真のなかから厳選した35枚です。
「ぼーっ」と眺めるだけでも効果はありますが、本書のメソッドである「4つの見方」を使って見ると、さらに脳が鍛えられます。

脳を鍛えるのに「年齢制限」はない!


「脳を鍛えるなんて、いまさら無理......」と思っていませんか?
いいえ、70歳になっても、80歳になっても、90歳になっても、もちろん若い人でも、脳は鍛えることができます。
実際、脳の神経細胞は70歳を超えても生まれ変わることが研究でわかっています。
また、2025年には高齢者の患者数が700万人、5人に1人に達すると推計されている認知症ですが、軽度認知障害(MCI)という認知症の入り口の段階で脳を鍛えれば、15~40%程度は正常の認知機能に回復できるという報告もあります。

では、あきらめて脳を鍛えないと、どうなるのでしょうか?
脳にはニューロンという神経細胞が網の目のように張り巡らされていて、ニューロン同士が情報交換をすることで脳のさまざまな部位が協力して働き、心身をコントロールして健康を保っています。
ただし、脳の神経細胞(ニューロン)は刺激を与えないと衰えてしまい、情報交換が滞り、脳の機能が低下します。すると、感情のコントロールがきかなくなったり、物事に集中できなくなったり、計画どおりに物事を進められなくなったりしてしまいます。
脳は怠け者の一面があるので要注意です。
朝起きて、食事をして、いつもの道を通って仕事に行ったり、いつもと同じテレビ番組を観たりと、変化のない毎日を送っていると脳の怠け心が首をもたげ、活性化しづらくなって老化しやすくなってしまいます。
脳を「怠けモード」にしないために有効なのが、本書の写真を見ることです。これで脳細胞が活性化して、脳を元気にすることができます。とっても簡単ですよね?

気になる考え方やふるまいは脳の問題が原因



集中力が続かない
緊張して大事なときに力が発揮できない
優柔不断で物事を決められない
すぐにカッとしてしまう

これらは性格そのもので、変えられないと思ってはいませんか? それは大きな誤解かもしれません。
こうした問題の多くは脳の働きが低下して、心と体の司令塔としての役割を果たせていないことが原因のひとつです。
つまり、脳の働きをよくすれば、「性格だから仕方がない」とあきらめていた多くのことを解決できるかもしれないのです。
「脳って鍛えられるの?」と疑問に思う人もいるかもしれませんね。
じつは、最新の研究で、脳は大人になっても環境に合わせてどんどん変化していくことがわかっています。
たとえば、大人になって食べ物の好みが変わったり、旅行に行くと朝早く起きられるようになったりしたことはありませんか?
脳はとても柔軟な組織のひとつなので、前向きな人と一緒に過ごすと気分が変わるように、目の前のものに影響を受けて、前向きな思考や行動が自然とできるようになります。
脳は、触れるものによって影響を受けて変化するのです。
そして、もっとも手軽に脳に影響を与える方法、それが 「写真に触れること」です。
なぜなら、五感のなかでも視覚の情報の多さは最大で、脳の約50%(半分)が視覚の処理に使われているからです。
しかも、写真を見ていろいろなことを考えたり、想像したりすると、脳の幅広い部分が活性化して、脳の状態がよくなります。
すると、脳は心身の働きをうまくコントロールできるようになり、気になる考え方やふるまいが自然と改善されていきます。

写真で鍛える「7つの脳力」


脳はさまざまな「脳力」が連携をとり合いながら働いています。
なかでも重要なのが集中力、記憶力、意欲、判断力、感情コントロール力、共感力、実行力という「7つの脳力」です。どれかひとつでも力が低下すると、ほかの脳力も低下していってしまいます。
そのため、本書では7つの脳力がバランスよく鍛えられる写真を厳選しています。
ここでは、写真を見る前に知っておいていただきたい7つの脳力と、その脳力が低下すると表れやすい問題をご紹介します。

【脳力1】集中力


ひとつの作業に専念する力のことで、集中力を司る脳の機能が低下すると注意力も散漫になります。すると、仕事がはかどらないとか、危険を察知することができずケガをしやすくなったりします。
また、まばたきは脳を休める働きをもつため、まばたきの回数を減らすと集中力や注意力を高められます。

【脳力2】記憶力


記憶力が低下すると、約束を忘れたり、物忘れをしやすくなったりと、日常生活に支障をきたす問題が頻発します。記憶には短期記憶と長期記憶があり、短期記憶は電話番号など短い時間だけ覚えられる記憶、長期記憶は何年経っても思い出せる記憶です。
認知症は、短期記憶が失なわれやすく、症状が進むと少し前に食事をしたことすら忘れてしまったりします。

【脳力3】意欲


意欲とは、自分の内側から生まれるやる気のことです。低下すると、楽しい、もっと知りたいといった感覚が失せていきます。
意欲の高い人は、幸せと感じる瞬間が多い(幸福度が高い)傾向があります。これは、やる気の中枢といわれるドーパミンが神経で活性化して脳が快感を感じやすくなるからです。

【脳力4】判断力


「どの道を行けば早く目的地に着く?」「この情報は本当に正しい?」などの問いに対し、現状を正しく認識して、有益なものや価値の高いものを見分ける力のことです。判断力が低下すると、優柔不断になったり、先を見越した計画が立てられなくなります。
くわえて、詐欺の被害にあったり、ニセの情報にだまされたりする危険が高まります。

【脳力5】感情コントロール力


不安、悲しみ、怒りなどの負の感情を抑制する力です。感情コントロール力を司る脳の機能が低下すると、カッとなったり、ふさぎこんだりすることが多くなり、社会生活が円滑に営めなくなります。実際、感情コントロール力の高い子どもと低い子どもの30年後の収入や健康状態を比較すると、高い子どものほうがすべて上回るというデータもあります。

【脳力6】共感力


共感力とは、人の気持ちを理解する力です。共感力を司る脳の機能が低下すると、人を傷つけるような言動をしてしまったりして、人づきあいがうまくいかなくなります。
また、共感力が低い人は自分の体の状態に鈍感な傾向があります。自分の心臓の音や体の感覚に意識を向けるクセをつけることも、共感力を高めるうえで有効です。

【脳力7】実行力


考えたことをすぐに行動に移す力のことです。実行力を司る脳の機能が低下すると、やるべきことを先延ばしにしてしまう、やりたい気持ちがあっても体がいうことをきかないといったことが増えてきます。
実行力は脳の運動野という体の動きを制御する部位と深く関わっているため、この力が低下すると、体の動きまで悪くなる可能性があります。