「61歳の男性です。年をとっても子どもには頼らない。そんな気概の高齢者の方も多いかと思います。いつまでも元気でいてほしいとは思うのですが、困っているなら頼ってほしいというのも子どもの本音ではないでしょうか」
アラフォー、アラフィフ世代の女性を中心に、実体験エピソードを寄せてもらいました。年齢を重ねると健康や人間関係、お金などさまざまな問題が発生しますが...。あなたならこんな時、どうしますか?


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■「子どもに迷惑はかけない」が口癖の父
私の実父(92歳)は、少し足を悪くして杖をついてはいるものの、頭はしっかりしています。
2021年に母を亡くしてからは、兄(64歳)が折に触れ同居話を持ちかけるのですが、頑として受け付けず、実家で1人暮らしを続けています。
父はなかなかの苦労人で、戦後間もない頃に高卒で銀行に入行し、支店長まで出世した人です。
仕事柄、お金や経済にはめっぽう強く、記憶力も自慢で、未だに頭のほうは全く衰えを見せません。
母が亡くなったときも、あれよあれよという間に葬儀を執り行い、兄も私も何もやらせてもらえませんでした。
そんなわけで、父は私たちに気にかけられるのを嫌います。
「心配するな、迷惑はかけん」が口癖で、たまに兄や義姉(57歳)が様子を見に行ったり、片付けものをしたりしていると、父はあまりいい顔をしません。
ところが2023年の8月頃、兄からこんな電話がありました。
「どうも気弱になっているみたいなんだけど、例によって意地を張ってる感じなんだよなあ...」
父の誕生日が8月なので、お祝いかたがた私も電話を入れてみました。
「なかなか思い通りにいかなくなってきたよ。だがお前たちには迷惑はかけんから心配するな」
いつも通りの強がりでしたが、少し声に元気がないなあと感じていました。

■青天の霹靂! 父がいきなり老人ホームへ
少しは頼ってくれてもいいのになあ、と思っていた9月にまた兄から電話がありました。
「驚いたよ! 親父、いきなり老人ホームに行くって言い出して、その日のうちに体験入所しちまった!」
いつものんびりした兄が、ひどく早口だったこともその驚きを感じさせました。
「またいつもの通り、俺たちには相談もなしさ。自分で申し込みしたらしくて、こっちはまったくの寝耳に水だよ! うちの嫁さん、自分たちが頼りないと思われてるからだ、ってすっかり落ち込んじゃって...」
まくしたてる兄の口調には、全て自分だけで決めてしまう父への苛立ちがにじみ出ていました。
義姉は、母が存命の頃から義両親である父たちと上手に付き合ってくれて、母が亡くなるときも甲斐甲斐しく世話を焼いてくれました。
1人になった父のことも本当によく気にかけてくれていただけに、何も言わずに老人ホームに行ったことは、よほどショックだったに違いありません。
「世捨て人にでもなったつもりかね。携帯は持ってないし、ホームに電話しても出ない。こっちも面会に行くなんて悔しいからさあ...」
老人ホームの方に話を聞いたところ、最大3カ月は体験という形で入所が可能のようで、父はまだ正式契約は結んでいないとのことでした。
父に言わせれば、自分の行く末ぐらいは自分で面倒を見られる、というところなのでしょう。
ただの体験入所のつもりなのか、そのまま入所してしまうつもりなのかは分かりません。
いずれにしても、ずっと世話をして、気にかけてくれていた兄夫婦にもなんの相談もせず内緒で老人ホームへ、というのは少々わがままが過ぎます。
「本人が電話で話したくないとおっしゃっているので、元気で楽しく過ごされていますので安心してくださいね」
ホームに電話をしてみたのですが、申し訳無さそうな職員さんに門前払いを食わされました。
体験入所のまま2カ月近くが過ぎましたが、父の真意はまだ分かりません。