娘がいじめをしていました
『娘がいじめをしていました』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)

 もしも自分の子供が、いじめをしていたら……。親はどうするのが正解? 相手の親にはどんな対応をすればいい? “子供のいじめ”を親視点で描いたコミックエッセイ『娘がいじめをしていました』(しろやぎ秋吾/KADOKAWA)。ギョッとするようなタイトルが思わず目を引きます。

 主人公は、赤木家と馬場家、2つの家族。両家にはそれぞれ、小学生の娘、赤木愛(まな)と馬場小春がいます。幼稚園から一緒だった愛と小春は、大の仲良し。小学5年生になった二人は、久々に同じクラスになります。母親たちは、仲良しの二人がまた同じクラスになったことを喜んでいたのですが……。

 というのが物語の設定。お察しの通り、仲良しだったはずの愛と小春は、いつしか「いじめっ子」と「いじめられっ子」という関係になっていました。

 最初に異変に気づいたのは、小春の母・千春。娘の様子に違和感を覚え、話を聞いてみると、小春は「愛ちゃんに嫌がらせされている」と打ち明けます。戸惑う小春と夫の大樹。両親はひとまず学校に相談してみることに。先生が見ていてくれれば安心……と思いきや、いじめはさらにエスカレート。小春は愛に怪我をさせられてしまうのです。

娘がいじめをしていました

いじめをしていた娘を受け入れられない母

 馬場家から連絡を受けた愛の母・加奈子は、そこで初めて娘がいじめをしていたことを知ります。しかし、「自分は何もしていない」と平然と嘘をつく愛。学生時代に酷いいじめに遭っていた加奈子は、まったく反省していない様子の娘に、かつて自分をいじめていた相手の姿が重なります。

娘がいじめをしていました

娘がいじめをしていました

 加奈子は夫と娘を連れて馬場家に謝罪に行きますが、問題はそれで解決するわけではありませんでした。

 心に深いキズを負った小春を、母である千春は必死にサポート。学校に行けないのであれば代わりにフリースクールはどうかと提案しますが、これに夫は真っ向から反対します。夫婦の間に溝が生まれ、どんどん追い詰められていく千春。

「私たちばかり壊されて 耐えなきゃダメか?」
「謝って済む話じゃないんだよ 私たちは全然済んでないんだよ」

 耐えきれなくなった千春は、ある行動を取ります。そしてその行動は取り返しの付かない事態へと発展していくのです。

「いじめ」は親に見えない場所で起きる

 いじめ問題はやがて皆に知れ渡り、加害者の愛は学校で孤立します。しかし母の加奈子は、娘と向き合うことができないまま。愛の話を聞く人は誰もいなくなってしまいました。

 いじめをきっかけに、壊れていく2つの家族。愛が加害者として描かれていますが、なぜ愛がいじめをしたのか、その原因については、まったく描かれていません。また、愛以外にいじめに加担した人がいたのかどうかも最後まで明かされません。本作はあくまで、親視点。「現場を直接見ていない」という点において、読者もまた、両家の親と同じ立場に立って、物語を読み進めることになります。2つの家族が下した決断とは……。

 千春と加奈子、それぞれの取った行動は果たして正解だったのでしょうか。もしあなただったらどのような行動を取りますか?

文=中村未来


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