不慮の死で先立ってしまった弟。残された姉は親から「翼の分まで生きてあげてね」と言葉をかけられるが、それは慰めでも励ましでもなく――!?

【ホラー4コマ漫画】「茶壷」を読む

「弟の分まで生きてね」という言葉の意味は、弟の身代わりとして生きること!?王道の台詞が呪いとなった4コマに恐怖 / オカトマト(@tomatokeikakuan)
オカトマト(@tomatokeikakuan)さんの創作4コマ「茶壷」に、X(旧Twitter)上で2.7万件の「いいね」とともに、「理不尽すぎ」「こんな後味の悪い四コマ初めて見た」と反響を集めている。同作はX上で開催されている4コマの自主競作企画「ヨンバト!」(@yonkomabattle)の優勝作品でもある。「ヨンバト!」主催者でもある作者のオカトマトさんに、同作のアイデアや、1周年を迎えたヨンバト!への想いを訊いた。

亡くなったのは弟?それとも…。母の言葉で“呪われた”少女のその後が怖すぎる

話題を呼んだのは、オカトマトさんが2023年8月に投稿したオリジナルの4コマ作品「茶壷」。幼い弟が亡くなった日、泣き暮れる母に「あなたが翼の分まで生きてあげてね」と告げられた姉。だがそれは慰めではなく、言葉通りの意味だった。

4コマ漫画「茶壷」(1) / オカトマト(@tomatokeikakuan)
それから、自身の持ち物は全て処分され、服や持ち物、部屋まですべて弟のそれが与えられた姉。年齢も性別も違うのに弟の宿題や習い事をするように課せられ、挙句の果てには長かった髪も弟と同じ長さにまで切りそろえられてしまう。

4コマ漫画「茶壷」(2) / オカトマト(@tomatokeikakuan)
弟の身代わりとして生きることになってしまった姉。それを象徴するかのように、仏壇には弟ではなく姉自身の写真が飾られていたのだった……。

「そのお題の切り口があったか」ハイレベルな4コマ競作の舞台裏

狂気とも言える親の所業に飲み込まれてしまった姉の悲劇を4コマで描いた作品。タイトルの「茶壷」も、読者へオカトマトさんが「底を取って蓋にしろ」とコメントしているように、わらべうたの「ちゃちゃつぼ」で蓋のない茶壷なら底を蓋にする、という主客転倒な情景を示唆していると考えれば皮肉めいて聞こえる一作だ。

同作は“最強の4コマ漫画を決める4コマバトルトーナメント”としてX上で開催されている「ヨンバト!」の参加作品でもある。毎月、決められたお題をもとに4コマを制作し、投票機能を使ってトーナメント形式で優勝作品を選ぶという企画で、「ホラー」がお題の第11回ヨンバト!で優勝したのが4コマ「茶壷」だ。

オカトマトさんは4コマ作者としてヨンバト!に参加する一方、同企画の主催・運営も行っている。こうした競作企画をはじめた経緯や思いをうかがった。

――4コマ「茶壷」は、競作企画「ヨンバト!」のお題「ホラー」に合わせ描かれたとうかがいました。お題をもとに作品のアイデアやどう構成していったか教えてください。

「お題がホラーということで呪いをテーマに描きました。1コマ目の母親の言葉が呪いです。はじめは弟のように扱われ続けた女の子の喉から、喉仏が出てくるというオチを考えていたのですが、ホラーというかシュールになってしまう気がしたので、今の話に落ち着きました。タイトルの「茶壷」は端的に4コマの内容を捉えていて、ユニークなのでかなり気に入っています」

――この4コマバトル企画「ヨンバト!」は、オカトマトさん自身が主催されています。企画のはじまりについて教えてください。

「『ヨンバト!』はもっと多くの人に4コマ漫画を描いて欲しいという理由で始めました。4コマ漫画は老若男女全員が楽しめる遊びだと考えていまして、創作をしてみたいけど絵が描けない、時間がないといった方にぜひおすすめしたい創作活動です。たった4コマで完成し気軽に始められますが、追求しようとすると果てしない奥深さがあります」

――第11回のヨンバト!で「ホラー」というお題になった理由と、毎月のお題がどのように決められているのかを教えてください。

「第11回は8月だったので、夏といえばホラー!ということでホラーに決定しました。シリアスなホラーとホラーギャグが入り乱れる大会になったらおもしろいかなぁ、という意図もありました。毎月のお題は季節にちなんだり、連想ゲーム的に決めたりしています。たとえば5月の場合は『5月』→『ゴールデンウィーク』→『金』、といった具合です」

――ヨンバト!が始まり1年が経ちましたが、主催者として変化を感じる点はありますか?

「ヨンバト!をきっかけに4コマ漫画を描くようになったという人が出てきてとてもうれしいです。4コマ漫画を描く人のモチベーションに繋がればと思い開催していますので、ヨンバト!を通じて4コマ漫画の多様性や奥深さを広め、4コマ漫画シーンを盛り上げていきたいと考えています」

――また、4コマバトルに参加する一作家としては、自作やライバルの作品についてどう感じていますか?

「毎回初参加の参加者がいらっしゃるので新鮮な気持ちで参加できます。また、ほかの参加者の方に『そのお題の切り口があったか!』と舌を巻くことも多いです」

――今後の「ヨンバト!」でやりたいことや、展望があれば教えてください。

「ヨンバト!も回を重ね、多くのチャンピオンが生まれました。近いうちに、歴代のチャンピオンが一堂に会するチャンピオン大会を開きたいと考えています」

取材協力:オカトマト(@tomatokeikakuan)