ディズニープリンセスたちの今昔 「眠れる森の美女」より / (C)2023 Disney
【写真】夢のように美しい実写版「美女と野獣」ベル&野獣のダンスシーン

ミッキー・マウスをはじめさまざまな人気キャラクターを生み出し、世界を夢と魔法で満たしてきたウォルト・ディズニー・カンパニーが2023年10月16日、創立100周年を迎えた。この100年の歩みの中でも大きな功績の一つが、長編アニメーションをはじめとする映画作品の数々、とりわけ、1937年公開の「白雪姫」から変わらず人々を魅了してきた“ディズニープリンセス”たちの存在だ。時代に合わせてさまざまな形で変化を遂げ、愛され続けてきたディズニープリンセスの歩みを振り返る。(以下、作品のネタバレを含みます)

女の子の憧れ“ディズニープリンセス”の誕生

ディズニープリンセスのはじまりの作品は1937年の「白雪姫」。この作品は、初めてのプリンセス作品というだけでなく世界初のカラー長編アニメーション作品であるという点でも歴史にその名を刻んでいる。

だが、それまでミッキーたちキャラクターがコミカルに飛び回るアニメーションを手掛けていたアニメーターたちには、白雪姫と王子のロマンスをより写実的に描く技術がまだ備わっていなかった。ウォルト・ディズニーは当時を振り返り、「アーティストの特訓から始めた。何より大変だったのは、いかに静止画から脱し、動きをつけるかだった」と語っている。キャラクターたちの動きに真実味を持たせるため、白雪姫の衣装を着たモデルにさまざまなしぐさやダンスを実演してもらい、その演技を撮影してアニメーターたちが作画する際の参考にした。今も色あせない白雪姫のなめらかで美しい描写は、そんな地道な努力の上に築かれたものだ。

「白雪姫」より / (C)2023 Disney

王子様との出会いで幸せを手にするプリンセス像

その後、1950年に「シンデレラ」、1959年には「眠れる森の美女」が公開され、王子様との出会いによって夢のような幸せを手にする美しいプリンセスたちの愛と希望あふれるストーリーが人々の心に刻まれていった。

ディズニープリンセスの黎明期ともいうべきこの時期、「シンデレラ」でディズニー史上初めて外部のソングライターを起用、「眠れる森の美女」製作には総勢300人のアニメーターが6年がかりで取り組むなど、観客に常に驚きと感動をもたらすための努力が惜しみなく注がれた。

「シンデレラ」より / (C)2023 Disney
「美女と野獣」より / (C)2023 Disney

強いプリンセスへ…ストーリーにも時代の変化を反映

1989年以降、ディズニー長編アニメーションの第2次黄金期“ディズニー・ルネサンス”の時期に突入すると、ディズニープリンセス作品も新たなフェーズへと入っていく。

1989年公開の「リトル・マーメイド」は、手描きのセルを使った最後のディズニー長編作品。総作画枚数は100万枚とも言われ、海の中のカラフルな仲間たちがにぎやかに歌い踊る「アンダー・ザ・シー」やアリエルがエリックを嵐の海から救う場面など名場面も多く、作品を彩ったアラン・メンケンによる美しい音楽が「アカデミー賞」歌曲賞・作曲賞も受賞した。

この頃から、技術面だけでなくストーリーに時代の空気を反映させる試みも始まった。

「美女と野獣」より / (C)2023 Disney

大切なもののために自ら戦う強さ

「美女と野獣」のヒロイン・ベルは賢く勇敢な読書家で、呪いで野獣にされてしまった王子を救う。この頃から、ただ王子様に幸せにしてもらうのではなく、大切なもののために自ら戦う強さがディズニーヒロインに備わっていく。今作以降、数多くのディズニー映画を手掛ける女性脚本家リンダ・ウールヴァートンは、インタビューに「ベルは物事を動かします。彼女の素晴らしいところは、女性がただ座って待っているだけではないと私たちに示してくれたことだと思います」と語っている。

その後、1992年の「アラジン」でディズニー初の有色人種のプリンセス・ジャスミンが誕生。アメリカ先住民ヒロインの「ポカホンタス」(1995年)や戦乱の中国で兵士として戦場に赴く「ムーラン」(1998年)…と、守られるよりも守り、ともに戦うことを選ぶディズニープリンセスたちが生まれていった。

「アラジン」より / (C)2023 Disney
「美女と野獣」より / (C)2023 Disney

実写化…さらに進化した“プリンセス像”

そして2010年代に入り、ディズニープリンセスは実写化という新たな時代を迎えた。2014年、「眠れる森の美女」の魔女を主人公にした「マレフィセント」に実写版オーロラ姫が登場。その後、「シンデレラ」(2015年)、「美女と野獣」(2017年)、「アラジン」(2019年)、「ムーラン」(2020年)、「リトル・マーメイド」(2023年)と次々にディズニープリンセスが実写化されていった。

これらの作品では多様性に配慮したキャスティングが話題を集める一方で、アニメ版にはなかったシーンを追加することでより現代的なプリンセスの姿が浮き上がってきている。

「シンデレラ」では、シンデレラが森の中で王子と出会い、互いの素性を知らないまま馬に乗った状態で言葉を交わすシーンが出てくる。狩りに来た王子に「鹿を殺さないで!決まり事が正しいの?」「勇気と優しさを忘れたくないの」と堂々と語る姿は意志的で、決して受け身ではない現代ならではのプリンセス像を体現している。

「アラジン」より 初の女性スルタン(君主)になることを夢見るジャスミン / (C)2023 Disney

実写版のために用意された新曲も

「アラジン」のジャスミンはアニメ版とは違い、自ら王になって民を守ることをはっきりイメージしている。「私はもう若くない。お前の夫を見つけなければ…」という父(王)に、「私より民を愛せる王子がいる?私はずっと勉強して準備してきた」と訴え、重臣ジャファーに「女に必要なのは美しさ。意見は不要だ」と心ない言葉をぶつけられる。それは前時代的な伝統と戦う女性像そのもので、実写版のために用意された新曲「スピーチレス~心の声」にも“声を上げよう”“口を塞がれても負けない”という強いメッセージが込められている。

常に時代に合わせ、多くの人々に愛される姿に変容してきたディズニープリンセスたち。“永遠に完成しない”というディズニー哲学がここにも脈々と流れているからこそ、時代が代わってもファンをワクワクさせ、感動させてくれる存在であり続けられるのだろう。

2024年春には実写版「白雪姫」の公開も控える。100周年を迎え、まだまだこれから新たな姿を見せてくれるに違いないディズニープリンセスのこれからに期待したい。

ディズニープリンセス作品はアニメーション、実写版ともにディズニープラスで配信中。

◆=ザテレビジョンシネマ部

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