「あちこちオードリー」 / イラスト=渡辺裕子
人里離れた一軒家には不便さをこえる良さがある「ポツンと一軒家」/いつもテレビをみています#14

テレビ大好きイラストレーター・渡辺裕子さんが、お気に入りの番組をかわいいイラストで紹介する連載「いつもテレビをみています」。第15回は「あちこちオードリー」(毎週水曜夜11:06-、テレビ東京)をチョイス。

テレビでいつも笑いを振りまいている芸人さんだって、悩みはある

毎日楽しく笑って過ごしたい、しかしそうもいかないのが人生。仕事やら人間関係やらでモヤモヤを抱えた夜、とある料理屋の暖簾をくぐるとそこで待っているのは大将の春日さん、そしてカウンターで飲んでいる常連客の若林さん。ふらりとやってきた客の芸人さんたち(時々は俳優さんなどのことも)が加わって、だらりと雑談が始まる。そんなトークバラエティーが、『あちこちオードリー』。

ほんとうにただの雑談を聞かされているだけなのに、なんであんなにおもしろいんでしょうか。正直なところ、普段は人の愚痴なんてあまり聞きたくないんですが、彼らが「あの時、あの人がさぁ」ってぼやいてるのを聞いているだけでゲラゲラ笑えて、番組が終わる頃には私まで気分がスッキリしているのは不思議です。テレビでいつも笑いを振りまいている芸人さんだって、悩みはある。そんな、忘れがちだけど当たり前のことを思い出させてくれて、でも聞いているとどんな話でもやっぱり笑わせてくれるプロの話術、すごい。

本当に仲のいい人たちだけとの飲み会のようなトークバラエティー

その場にいない人について話をしても、聞いてて嫌じゃないし、言ってる人にも言われてる人にも悪い印象を持たない。これってかなり特殊な気がするんです。好きすぎて悪く言っちゃうみたいな、「あいつは、もう!」と言ったすぐあとに、言葉にならない「だから好き」がくっついてくる感じの噂話。これは、話を聞き出すオードリーの人柄が、そうさせているのでしょうか。彼らの前だと素直に気持ちを言いたくなるし、秘めていた思いもつい打ち明けたくなる。どんな話もふたりが笑って受け止めてくれるし、ゲストの人たちを好きな気持ちが態度にあふれているから、安心して見ていられる。

打ち明け話に大笑いしたり、ちょっとジーンとしたりしてるうちにあっという間にお開きになる、本当に仲のいい人たちだけとの飲み会のよう。疲れた夜にありがたい、これからもずっと街のどこかで存在していてほしい「店」です。

■イラスト・文/渡辺裕子