9月8日公開の映画「禁じられた遊び」で、橋本環奈と共にW主演を務めるジャニーズWESTの重岡大毅。本作は「リング」「スマホを落としただけなのに」などを手掛けた中田秀夫監督による最新ホラー作品で、脚本は「貞子」「青くて痛くて脆い」の杉原憲明が担当。第4回「本のサナギ賞」で大賞を受賞した清水カルマの同名人気ホラー小説を映画化する。また、その劇場公開を記念して、民放公式テレビ配信サービス「TVer」にて、映画出演キャストの過去ドラマが順次配信中だ。

映画「禁じられた遊び」完成披露イベントで笑顔を見せるW主演の橋本環奈と重岡大毅

重岡大毅は役柄をインストールしたかのような憑依的な芝居で視聴者を圧倒する

今回、初共演を果たす橋本と重岡。橋本は映像ディレクター・倉沢比呂子役で、重岡は比呂子の元同僚・伊原直人役を演じる。伊原は妻・美雪(ファーストサマーウイカ)と息子・春翔(正垣)と幸せな生活を送っていたが、突然の悲劇が一家を襲う。帰らぬ人となった美雪に、もう一度会いたいと春翔が禁断の呪文を唱えたことで恐怖の連載が巻き起こる——。

重岡にとって今作が初のホラー映画作品であり、公開に先駆けて行われた完成披露イベントでは、橋本から重岡には明るいイメージがあったが直人という役で闇落ちした姿に驚いたというコメントが飛び出したように、今作でも重岡の演技力が発揮されているようだ。

重岡は、ライブではメンバーと共に熱い歌唱でオーディエンスの胸を打ち、バラエティ番組等ではニコニコとした明るい笑顔を見せる陽気なキャラクターが魅力だ。芝居となると明るいキャラクターが一変。役柄をインストールしたかのような憑依的な芝居で、視聴者を圧倒する。

重岡が連続ドラマ初出演・初主演を務めたのは、2014年放送「SHARK〜2nd〜Season」(日本テレビ)。ロックバンドのメンバー・入江朔役を演じた。同年10月期には錦戸亮主演の日曜劇場「ごめんね青春!」(TBS系)で、錦戸が演じる高校教師・原平助のクラスの生徒・海老沢ゆずる役で出演した。第1話の冒頭では平助よりも先に第一声を発するなど、生徒の一人ではあるが物語を動かす重要なキャラクターとして活躍した。青春時代の一生懸命さと、慣れない恋愛を前にした青臭さが混ざったような絶妙な芝居は、デビューしてまもないこのタイミングの重岡にしか演じられなかったであろう。個性豊かな俳優陣に負けることなく、ハマり役と呼べるほどに爪痕を残した。ゆずるの一生懸命さとコミカルな展開のギャップに笑いつつも、ほろりとさせられる一幕も。

2016年には映画「溺れるナイフ」に出演。小松菜奈、菅田将暉のW主演で田舎町を舞台に10代ならではの繊細で危うい恋模様を描いた作品に上白石萌音らと共に出演。完成披露試写会の舞台挨拶では、菅田から「現場の太陽」と呼ばれるほど、重岡は現場でもムードメーカー的存在だと明かされた。2017年にはジャニーズWESTのメンバー全員で出演した配信ドラマ「炎の転校生 REBORN」(Netflix)を経て、2019年には上田竜也(KAT-TUN)と共にコミカルな演技で笑いを誘ったドラマ「節約ロック」(日本テレビ)、続いて亀梨和也(KAT-TUN)主演ドラマ「ストロベリーナイト・サーガ」(フジテレビ系)では若手刑事役として出演。グループ活動と並行しながら地上波ドラマに配信ドラマ、映画と着実に経験を積んできた。

作品を重ねるごとに同一人物とは思えない演技を見せる

さらに脚光を浴びたのがドラマ10「これは経費で落ちません!」(NHK総合)で多部未華子演じる主人公の経理女子・森若沙名子に想いを寄せる同僚・山田太陽役として出演した。キャスティングは多部からの推薦を受けてのことで、重岡は本作で「第17回コンフィデスアワード・ドラマ賞」新人賞を受賞した。さらに“闇落ち”の芝居で爪痕を残したのが、2020年「知らなくていいコト」(日本テレビ系)。吉高由里子演じる週刊誌記者の真壁ケイトの彼氏・野中春樹役を演じた。ケイトの生い立ちを知り、心身ともに落ちていく様を巧みに演じた。終盤では彼女を受け入れられなかった葛藤や戸惑いが痛々しいほどに伝わってきた。心の弱さや負い目など、落としどころが見つからない複雑な心情を表現してみせた。

続く2021年放送のドラマ「#家族募集します」(TBS系)では、初の父親役に挑戦した。3カ月前に妻を亡くしたばかりのシングルファーザー・赤城俊平役で、第1話から重岡の芝居に注目が集まった。息子とは前向きに生きていこうと誓い、気丈に振舞っていた俊平だが、第1話の終盤では感情が溢れ出てしまうシーンが登場する。息子の前ではヒーローのように振舞う俊平だが、一人の人間としては愛する人を亡くしたばかり。詳細に描かれてはいないものの、悲しみに暮れる間もなく、必死に駆け抜けてきた3カ月がありありと浮かんだ。泣かないと決めたから笑おうとするのに、どうしても涙がこぼれてしまう……重岡の心からの演技力に圧倒された。

作品を重ねるごとに同一人物とは思えない演技を見せる重岡。コミカルな役柄から闇落ちまで見せる表現力の幅広さと、ストーリーや場面に適したリズム感ある芝居が心地いい。“唯一無二”という前置きがしっくりくるほど、独創的な感性を感じる俳優のひとりだ。前述の通り、橋本が重岡の“闇落ち”演技に驚いたとコメントしていたが、今作でも重岡ならではの芝居が堪能できそうだ。

■文/柚月裕実