【写真】約20年前に発売された保冷炭酸飲料ボトル
サーモス株式会社は、2022年3月に「保冷炭酸飲料ボトル(FJKシリーズ)」を発売。文字通り、冷たい炭酸飲料を持ち運べる水筒で、発売後7カ月で20万本以上※を売り上げた大ヒット商品だ。
※保冷炭酸飲料ボトル(FJK-500/750)2022年3月1日~8月末までの出荷本数の集計
しかしこの商品は過去に一度、同じコンセプトのものを発売したものの、まったく売れずに販売を中止したという歴史があった。今回は、保冷炭酸飲料ボトルが再販後に大人気になった理由について、サーモス株式会社(以下、サーモス) 社長室ブランド戦略課プロモーショングループ リーダーの鈴木翔太さんに話を聞いた。

約20年前は大爆死!全然売れなかった「保冷炭酸飲料ボトル」
炭酸好きの心を掴んでベストセラーとなった保冷炭酸飲料ボトル。この商品の前身となったのは、実は約20年前に発売されていたモデルだった。約20年前、炭酸飲料対応ボトルを開発することになったのは、サーモスが水筒市場を開拓するうえで、さまざまなコンセプトの商品開発に挑戦していたのがきっかけだったという。「当時は新しいスポーツボトルの企画を行っていました。今ほど水筒が一般的に普及していない時代だったので、より使いやすい製品を、新しい製品を…といろいろな商品を企画開発していました。そのなかの1つとして、炭酸飲料対応のボトルを開発することになりました」

「当時は炭酸飲料を飲むことが今ほど当たり前でなく、さらにはそれを『持ち運びたい』というニーズが少なかったのが売れなかった理由です。そして、炭酸飲料に対応したフタには長さのあるネジを使用したのですが、通常の水筒のフタと比べてネジが2倍以上長かったため、洗浄性や使いやすさに課題があり、ヒットさせることができませんでした。そのため、2004年に終売となりました」


約20年の時を経て大ヒットした理由とは?
最初の発売時は全然売れなかった炭酸飲料対応ボトルだが、2022年に再発売すると大人気に。売れ数20万本を超えるヒットを叩き出す結果に。時代を越えて売れた理由として「炭酸水ブームが後押ししたのでは」と、鈴木さんは予測する。「2018年頃から炭酸水ブームが起こり、炭酸水を日常的に飲んだり職場に持って行ったりと、消費者のライフスタイルに大きな変化がありました。そして、コロナ禍におけるおうち時間のお供として刺激の強い『強炭酸』の飲み物が人気になり、これまで以上に炭酸飲料が飲まれるシーンが多くなりました」
一度終売した後も開発を続けていたが、炭酸飲料市場の高まりを受けて、「炭酸飲料対応ボトルをもう一度発売してみてはどうか?」と、再度製品化に着手した。デザインをよりおしゃれに、機能的に、そして技術面でも安全に簡単に使えるように、リニューアルを行って発売した。



シンプルな構造と使い勝手の良さを向上させ、今の時代に向けた新しい仕様に改良したことによりヒットしたと言える。また、同業他社も同じように炭酸ボトルを発売して市場が盛り上がったこともあり、さらに売上に拍車がかかることとなった。
「これからも“水筒のある暮らし”を浸透させたい」
“炭酸飲料を持ち運ぶ”という、人々に新たな選択肢を生み出した保冷炭酸飲料ボトルは、特に男性に多く売れているという。通常の水筒は主に30〜40代女性に売れることが多いそうだが、ビールやコーラなどさまざまな炭酸飲料を入れられるという特徴からか、これまでの水筒ユーザーとは異なる人にも広まっているようだ。「今後は、カラーやサイズラインナップを充実させていきたいと考えています。また、『もっと大きいサイズを出してほしい』と要望が多かったため、1リットルサイズの保冷炭酸飲料ボトルも販売を始めました。ぜひいろんなシーンで、炭酸飲料をたっぷり持ち歩いてください!」

炭酸飲料を気軽に持ち歩くことができるようになり、水筒が活躍するシーンはさらに増えることとなった。これから、サーモスはどのような画期的な商品を展開していくのだろうか。今後の動きに注目だ。
取材・文=福井求(にげば企画)