歳を重ねると避けて通れないのが白内障。唯一の改善方法は人工の眼内レンズの使った手術です。ただし、レンズの種類はいくつもあり、手術後の生活に影響を与えることも。手術後に満足のいく生活を送るためには、レンズの種類を慎重に選ぶことが重要です。今回は眼科専門医の平松類先生にお話を伺いました。
この記事は月刊誌『毎日が発見』2024年4月号に掲載の情報です。

「手術後にどんな生活をしたいか」で選ぶ


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白内障は、目のレンズである水晶体が白く濁って硬くなる病気です。
70歳で90%、80歳以上はほぼ全員がなる老化現象です。
物が見えにくくなったり、かすんだり、二重に見えたりと、同じ白内障でも人によって症状はそれぞれです。
目薬で進行を遅らせることはできますが、症状を改善するには、人工の眼内レンズを入れる手術しかありません。
「手術後に後悔しないように、自分がどういう人生を送りたいか主体的に考えて治療を受けることが大切です」と平松先生。

手術後、こんな悩みが生じる場合があります
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自分にぴったりの眼内レンズはどれ?


手術は日帰りも可能で年齢による制限も特にありませんが、手術の時期や眼内レンズの種類は慎重に考える必要があります。
「大きく分けて単焦点レンズと多焦点レンズがあります。単焦点は1カ所にピントが合い鮮明ですが、ピントが合わない距離では眼鏡が必要。多焦点はピントの合う位置が多いのでおおむね眼鏡なしの生活ができて便利ですが、鮮明さは単焦点に劣ります。夜間の運転がしづらいなどのデメリットも」と平松先生。

手術後の見え方について
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眼内レンズの特徴は?
【単焦点レンズ】
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費用の目安(片目):3万~5万円(保険適用可)
焦点が合う距離:5m以上
特徴:遠くははっきり見える。携帯電話・タブレットなど近くにある物はぼやけて見えるため、老眼鏡が必要となる。
2404_P041_02_W500.jpg費用の目安(片目):3万~5万円(保険適用可)
焦点が合う距離:1m前後
特徴:近い距離も遠い距離もぼやけるもののまずまず見えるが、はっきりと見るためには遠近両用眼鏡が必要になる。
2404_P041_03_W500.jpg費用の目安(片目):3万~5万円(保険適用可)
焦点が合う距離:30~40cm
特徴:手元は眼鏡を使用せずにはっきり見える。遠くの時計・風景などの見え方は弱いため、遠方用の眼鏡が必要。

【多焦点レンズ】
2404_P041_04_W500.jpg費用の目安(片目):3万~5万円(保険適用可)
焦点が合う距離:遠方~70cm
特徴:鮮明度は落ちないが手元はよく見えないので、手元を見るときは眼鏡が必要。多焦点レンズで保険適用。
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費用の目安(片目):15万~35万円(一部保険適用可)
焦点が合う距離:遠方から中間(50~60cm)
特徴:単焦点レンズほど鮮明度が高くなくてもよいが、もう少し広い範囲が見たい人や夜間の光の見え方の不具合(グレア・ハロー)が少ないほうを希望する人向き。細かい作業などでは弱い老眼鏡が必要となる。夜間運転が多い人におすすめ。高額。
2404_P041_06_W500.jpg費用の目安(片目):15万~35万円(一部保険適用可)
焦点が合う距離:遠方・中間・近方の計3焦点
特徴:手元から遠くまでおおむねピントが合うため、眼鏡を使用しなくても生活しやすい場合が多い。夜間は光の見え方の不具合(グレア・ハロー)がある。高額。
2404_P041_07_W500.jpg費用の目安(片目):50万~100万円(保険適用外)
焦点が合う距離:遠方・遠中・中間・中近・近方の計5焦点
特徴:積極的に先進医療を受けたい人向け。新しいレンズなので、手術の事例が少ない。海外メーカー品なのでトラブルがあった場合対応に遅れが生じやすい。全額自費なので高額。

手術の主な方法
(1)点眼麻酔後、メスで角膜を2~3mm切開し、さらに前嚢(水晶体が入っている袋の前面)を切り開く。
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(2)水晶体に超音波を当てて砕き、吸引して取り除く。
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(3)眼内レンズを入れて、固定する。
2404_P041_10.jpg取材・構成・文/古谷玲子 イラスト/ノグチユミコ