石原さとみが主演を務めるドラマ「Destiny」(毎週火曜夜9:00-9:54、テレビ朝日系)が現在放送中。石原演じる横浜地検の検事・西村奏が、12年前に起きたある事件の真相を追うとともに、運命の波に翻弄されていく様子を描く本作。4月16日に放送された第2話では、奏のかつての恋人・真樹(亀梨和也)の父である弁護士・野木浩一郎(仲村トオル)が、奏の父・英介(佐々木蔵之介)の死に関係していたことが判明。毎回怒涛の展開で話題を集めている。
今回WEBザテレビジョンでは、野木浩一郎を演じる仲村トオルにインタビューを実施。本作で演じた役柄の印象や、息子役を演じた亀梨和也との意外な関係性、さらには今後の物語の鍵となる部分についても語ってもらった。
石原さとみとの何気ない会話の中で見出した浩一郎の「答え」
――まずは本作で演じられている野木浩一郎という役柄について教えてください。浩一郎は弁護士で、すべての弁護士の方がそうかはわかりませんが、やっぱり「裁判で勝つこと」が最も大事だと考えている人だと思うんです。時にはそれが「正義」でなくても、浩一郎は勝つことが大事だというようなやり方をしてきたような気がします。
そんな風に厳しい法律の世界で生きてきた結果、浩一郎は亀梨くん演じる息子・真樹の子育てというか、親としては足りなかったり行き届かなかったりしたところがあったのかな、というようにも思っています。
――今回の役どころは冒頭から“黒幕感”漂うキャラクターですが、役柄の印象はいかがでしたか。また、演じていく中で変化はありましたか?
3話の中で、浩一郎が石原さん演じる奏が所属する横浜地検を訪れて話をするシーンがあるのですが、そのシーンを撮っている合間に、石原さんから「浩一郎さんは、なぜこういう行動を取っているんですかね?」ということを聞かれて。
例えば矢本(悠馬)くん演じる祐希の元を訪ねて行ったこととか、その一見バラバラに見える浩一郎の行動について、何となくその場での思いつきで辻褄を合わせようとしながら答えていたんですが、最終的に石原さんに「…ということなんじゃない?」って言った時に、僕自身も「あ、これが答えか」って発見した感じがすごくあったんです。
そのすぐ後に、プロデューサーの中川(慎子)さんにも「…っていうことで最後まで行っていいんですよね?」と確認したんですけど…、ネタバレにならないように話すとよくわからない感じになってしまいますね(笑)。
人間ってよく「裏表がある」みたいなことをネガティブに捉えがちですが、本当に大人になればなるほど多面性は必要で。職業によっては、それこそ弁護士は「この人本当は絶対無罪にしちゃいけない」という人でも無罪にしなきゃいけないという局面もあるでしょうし。そういう意味で、弁護士の方々はいろんな顔を持っていないとできない仕事なのかなと思ったりもして…。
――野木浩一郎の役作りや、演じる上で意識されたことはありますか?
自分が持っている大きな「目的」、やらなければならないことのために、誰にも本心を明かしていないし、誰にも心を許していないっていうのは、わりと最後の方まで意識しながら演じていたような気がします。
「どんなパターンがあったとしてもイメージできる」佐々木蔵之介との共演
――先日放送の第2話では、浩一郎が「奏の父・英介を死に追いやった張本人」という事実が明らかになりましたが、台本を読んだ際その展開をどのように感じましたか?英介の役を佐々木蔵之介くんが演じるというのは、僕にとってはとてもイメージしやすかったんです。それはなぜかというと、15年以上前ですが、蔵之介くんと二人芝居をやったことがあって(演劇ユニット「Team申」の舞台『抜け穴の会議室』)。
その時は輪廻転生の話だったんですけど、何度生まれ変わっても出会ってしまう二つの魂みたいな関係の役柄で、時には兄弟であったり、時には夫婦であったり、時には医者と自分の子供が患者っていう関係であったりっていう、いろんな関係を一本の芝居の中で演じたんです。
芝居の中で、二人はとてもうまくいっていた時もあるし、憎しみ合っていた時もあるし、片方が片方を死なせてしまったこともあって…。それで今回、蔵之介くんが奏のお父さんをやるって聞いた時には、「英介は実は〇〇で…」といういろんなパターンがあったとしても、そこはイメージができるだろうなっていうか、やりやすいんじゃないかなと思っていました。
「目に見える関係性だけがあの親子の過去ではないとも感じた」
――その事実が真樹の口から語られるシーンでは、浩一郎・真樹親子が劇中で初めて本格的にぶつかり合うシーンでしたが、そのシーンを振り返ってみていかがでしたか?実はそのシーンを撮影する数日前に、亀梨くんから「俺、小学生の時にトオルさんに会ったことあるんですよ」って話をされたんです。それが、「親子が12年ぶりに会う」というシーンを演じる時にかなり役に立ったのかなって。
昔、僕が出演していたドラマに、小学生の亀梨くんが野球少年のエキストラとして来ていて、昼休みにベンチで寝ていたら、誰かにかき氷を口の中に放り込まれてびっくりして起きた。そうしたら、「うわっ、仲村トオルだ!」って驚いた、という話をしてくれたんです。
僕はそのドラマは覚えてましたし、そのドラマのとある回で少年野球チームの子たちがエキストラで出ていたことも覚えてましたけど、その中のひとりの少年にそんなことをしたのはまるで覚えていなくて。
僕の行動パターンとしてほぼほぼしない行為なので、もし本当にそんないたずらをしたのだとしたら、少年が大口を開けて寝ている姿がよほど面白いと思ったか(笑)、すごい可愛い男の子だなって思ったか、そのどちらかだろうなと。
そんな会話を亀梨くんとした数日後に撮ったシーンだったので、自然と親子を演じられたというか。このドラマ上の関係で言うと、大変な事故を起こして、人が死んでしまうような事態になったのに、真樹は12年間姿を消していて。とても穏やかな気持ちでは会えないだろうと。実際、浩一郎は穏やかな気持ちではなかったと思いますが、ただ、それだけがあの親子の過去ではないとも感じたんですね。
真樹の回想として、父親に良くない印象を持ったシーンがいくつか出てきますが、「そうじゃなかった時もきっとあったんじゃないかな」って考えられたというか。だからこの親子も、それこそキャッチボールを一回くらいしたことあるんじゃないかとか、テレビを見て一緒に笑ったこともあるんじゃないかという考えを持てた。それは、亀梨くんが27年前の出来事を雑談風に話してくれた、そのことがとても大きかった気がします。
亀梨和也は「演じていて気持ちのいい役者」
――浩一郎の役どころは、先ほどのシーンに代表される真樹との向き合い、ぶつかり合いも大きな要素を占めていくと思います。亀梨さんと現場で対峙されて、「役者」としての亀梨さんの印象はいかがでしたか?気持ちいいですよね。時々掴みかかるお芝居をやる時に、相手が先輩だったり年上だったりすると、遠慮しちゃう俳優もいるんです。なので「遠慮しなくていいよ」ってこっちが言ったこともあったりするんですけど、亀梨くんは最初からガーッと来たので、演じていて気持ちよかったです。
――先ほどのお話にもありましたが、浩一郎は石原さとみさん演じる奏とも3話から大きく関わっていくことになります。石原さんとの共演はいかがでしたか? 印象に残るエピソードがありましたら教えてください。
どのシーンというわけではないんですが、石原さんはよく撮影の合間に「トリセツ」(NHK総合)で得た知識を教えてくれるんです。本当にためになる知識が多くて、家に帰ってから家族に「これこれこうなんだって」って話をあまりにするので、娘たちに少々、呆れられました(笑)。腸にいい食べ物とかリンパの流し方とかいっぱいありましたけど、別の番組の宣伝になってしまうのでこれくらいで(笑)。
「浩一郎の“信念の源”のようなものを見つけてもらえたら」
――佐々木蔵之介さん演じる英介との関係もこれから明らかになっていきますが、かたや自殺に追いやられた英介と、かたや「正義の弁護士」となった浩一郎の現状は対照的です。演じる仲村さんから見て、浩一郎にあって英介に無かったものは何だと思われますか?先ほどお話しした奏と浩一郎が対峙するシーンの中で、リハーサルの段階から「このせりふが来ると、(浩一郎として)出さない方がいい怒りが出てしまうな」と感じるせりふがあって。それは「なぜお父さんは、自身の潔白をかけて、闘わなかったんだと思いますか?」っていう、亡くなった英介について奏に問いかけるせりふです。
浩一郎から見れば、「法律の世界に生きる人間ならばもっとしたたかさやズルさ込みの強さが必要なのに、なぜあの人には無かったんだ」っていう思いはあるのではないでしょうか。そして、英介の「死を選ぶ」という選択はある意味妻と娘を守るためのものだったのでしょうが、おそらく浩一郎には、「家族を守るために死を選ぶようなことを俺は絶対にしない」という思いがあるような気がします。
――最後に、第3話の見どころを含めて視聴者へメッセージをお願いします!
今お話しした奏との会話の中で、浩一郎の感情が最もあらわになっているところに、彼の信念の源のようなものがあって。それを見つけてもらえたら、いや、「見つけられるかな?」という感じです。「これじゃないか?」というものが見つけられたら、後半へ向けてよりドラマが面白くなるんじゃないかと思います。