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開発から発売まで約10年…“食べるラー油”の立役者「辛そうで辛くない少し辛いラー油」が15年間も愛されるワケ

2024/03/22 12:00
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2009年に発売された、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」。世間では「食べるラー油」と呼ばれており、その名前のインパクトと調味料であるラー油を“食べる”という新感覚の食品に、衝撃を受けた人も多いのではないだろうか。

発売直後は人気のあまり品薄状態となり、“店頭で見つけられたらラッキー”という状況にもなった「辛そうで辛くない少し辛いラー油」も、2024年で発売15周年を迎え、今ではすっかり食卓でおなじみの商品となっている。

今回は、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」がヒットした理由や開発の裏側について、株式会社桃屋 営業企画部の栗山歩美さんに話を聞いた。

今では“ご飯のお供”の定番となった「辛そうで辛くない少し辛いラー油」
今では“ご飯のお供”の定番となった「辛そうで辛くない少し辛いラー油」


機械任せにせず人の五感を活かした商品

「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の開発のきっかけは、1990年代に四川省に出張した当時の開発担当者が、現地の食堂で“ニンニク入りのラー油”を食べたところから始まる。担当者はこのラー油を非常に気に入り、「同じようなものを日本でも売り出せないか」と考えた。

中国といえば、辛く痺れる料理で有名。このときのラー油も非常に辛かったそうで、実際に開発するとなると、日本人の舌に合わせて調整する必要があった。そこで、桃屋独自の材料調達力や製造技術を活かし、開発をスタート。その期間はなんと10年にも及んだという。研究を重ねた末、2009年に「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の発売にいたった。

「日本人の舌に合う味わいにするためにベストな唐辛子を探し求め、ラー油は自社で抽出することを選びました。こういったノウハウは、現在当社の商品で人気No.2の『キムチの素』の開発ノウハウを活かしているんです」

カリカリとしたフライドガーリックの食感が楽しい。真っ赤なラー油は見た目に反して辛くなく、老若男女食べやすい
カリカリとしたフライドガーリックの食感が楽しい。真っ赤なラー油は見た目に反して辛くなく、老若男女食べやすい


「辛そうで辛くない少し辛いラー油」は特徴的な赤色をしているが、これは着色料を使ったものではなく、唐辛子から出た自然な色。色味は素材選びの基準にもなっているそうだ。

また、フライドガーリックにも並々ならぬ情熱が注がれており、作業員が色や香り、食べたときの音にいたるまでを判断して、手作業で揚げている。ニンニクは焦げ付きやすく揚げ時間の調整が難しいため、機械作業にはせず、人の五感によって作られているという。

「見た目で『食べたい』と思ってもらえるよう、“ご飯にかけたときの鮮やかさ”という点はとても大事にしています。味ももちろんですが、色味やフライドガーリックの食感など細かいところまでとてもこだわったひと品です。開発については、社員間でも秘密になっていることがたくさんあるんですよ(笑)」

白米に卵と「辛そうで辛くない少し辛いラー油」をかければ、少し特別な卵かけごはんに!
白米に卵と「辛そうで辛くない少し辛いラー油」をかければ、少し特別な卵かけごはんに!


実は桃屋では、商品の発売後に改良を行うことはほとんどなく、「最もおいしいものを提供できる」と判断できたものしか発売していないそう。そのため、桃屋の代表格である「ごはんですよ!」は50年以上もの間、味が変わらない。そんなポリシーを持った桃屋が唯一、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」だけは発売後に改良を行ったという。発売から少し経ったころ、「時間経過でフライドガーリックがしんなりして食感が変わってしまう」という声が寄せられたことで改良を行い、サクサク感をさらにアップさせたのだとか。

「“良品質主義”が企業理念で、創業当時から手間と時間をかけ、原材料にもこだわり続けています。工程を端折って生産量を増やそうとするのではなく、品質には特にこだわりを持ち続けていたいんです」

機械に任せれば大量生産も可能だが、必要な部分は人の手も加えることで、味も見た目も妥協しない商品が生まれる。桃屋はこのようにして、「食べるラー油」という新ジャンルの開拓に成功したのだった。

発売直後、即品薄状態に!15年間愛され続ける理由とは?

「辛そうで辛くない少し辛いラー油」が発売となった2009年は、リーマンショックの影響がまだまだ残っている不況の時期で、外食をする家庭は少なかったそう。そのため、「家で食べる食事を、より豊かにしよう」という動きがあった。

そんな中で打ち出されたテレビCMは、「食べるラー油、誕生」というひと言から始まり、ご飯にラー油をかけて食べるという内容のCMだった。

「これまでにない『食べるラー油』という言葉と、“ご飯にラー油をかける”という斬新な組み合わせに驚きの声がたくさん寄せられ、みるみるうちに品薄状態になってしまったため、急遽CMの放送を終了しました。12日間という、大変期間の短い放送となってしまったんです」

品薄状態が続き、新聞にはお詫びの広告が。当時の営業担当は、製造されたらすぐに卸先へ納品するという作業に奔走していたそう
品薄状態が続き、新聞にはお詫びの広告が。当時の営業担当は、製造されたらすぐに卸先へ納品するという作業に奔走していたそう


そして、この反響を見たほかの企業も追従するように類似品を発売していき、世間に「食べるラー油」というジャンルがかなりの速さで定番化していくこととなる。一時は300種もの商品がさまざまな企業から発売されていたそうで、その年の流行語大賞にも取り上げられるほどの大ブームを巻き起こすこととなった。

「ここまで反響をいただけたのには、ネーミングの独特さも一役買っているんだと思います。『ごはんですよ!』の産みの親でもある当時の社長・小出孝之が名付けたんですが、この長い名前は、小出が実際に食べたときの感想をそのまま名前にしたものなんです。『見た目は辛そうだけど、食べてみると辛くなくて、食べ進めていくと程よく少し辛い』と語っていました。見ただけで味の想像もしやすく、多くの方に受け入れられたのではないかと思います」

「ごはんですよ!」の名付け親でもあるという小出前社長。その絶妙なネーミングセンスで、ヒット商品を生み出していった
「ごはんですよ!」の名付け親でもあるという小出前社長。その絶妙なネーミングセンスで、ヒット商品を生み出していった


見た目は辛そうに見えるため、よっぽど辛いものが好きでないと手を出しづらいところであるが、桃屋は「“辛そうで辛くない少し辛い”という消費者側の感覚に寄り添ったネーミングになっていることで、購入に踏み切りやすかったのではないか」と推察しているという。

「15年もの間、生産を終えることなく多くの方に食べていただけているのは、こうしたネーミングのインパクトと具材や味付けへのこだわりが関係しているんじゃないかと思っています。“ラー油”という名前が付いてはいるんですが、フライドガーリックの大きさや揚げ具合で“食べている感覚”というものをしっかり感じていただけていると思います」

「ごはんですよ!」を代表とする数々のヒット商品を打ち出してきた桃屋。長年培ったノウハウと商品への並々ならぬこだわりがあったからこそ、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」は15年間愛されてきたのだろう。

「味の改変」ではなく「新商品」でファンの要望に応える

前述したとおり、「一度発売した商品は基本的に改変しない」というポリシーを持つ桃屋。時代によって求められる味があると感じた際には、現行品の味を変えるのではなく、新商品として打ち出すようにしているのだそう。「辛そうで辛くない少し辛いラー油」を発売したあとに寄せられた「より辛いものがほしい」「痺れるような山椒系の辛味がほしい」といった要望には、シリーズ商品を発売することで応えていったという。

「『辛そうで辛くない少し辛いラー油』発売当初から“激辛”のご要望はいただいており、研究を重ねて2021年にようやく『辛さ増し増し香ばしラー油』の発売にこぎつけました。フライドガーリックは少なめにして唐辛子をふんだんに使い、唐辛子本来の旨味や辛さを感じていただけるようにしています。もととなった『辛そうで辛くない少し辛いラー油』がヒットしたからこそ、シリーズ商品を展開できるようになりました」

「辛そうで辛くない少し辛いラー油」のヒットをきっかけに、さまざまなシリーズが登場。「しびれと辛さががっつり効いた麻辣香油」はそのひとつで、2種の山椒による痺れと辛さが特徴だ
「辛そうで辛くない少し辛いラー油」のヒットをきっかけに、さまざまなシリーズが登場。「しびれと辛さががっつり効いた麻辣香油」はそのひとつで、2種の山椒による痺れと辛さが特徴だ

発売当初から「より辛い食べるラー油がほしい」という要望があり、その声に応えるために発売された「辛さ増し増し香ばしラー油」。「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の約10倍の辛さだそう
発売当初から「より辛い食べるラー油がほしい」という要望があり、その声に応えるために発売された「辛さ増し増し香ばしラー油」。「辛そうで辛くない少し辛いラー油」の約10倍の辛さだそう


「今後もさまざまな瓶詰商品を提供してきたい」と語る栗山さん。瓶は、食品の品質を保つうえで最適な容器であるとされ、空気を通さないため食品に外気の影響を与えず、瓶自体にも食品の味が移りにくくリサイクル率が高い容器だ。さらに、中身が見えることでより安心感が得られるという利点も。瓶を採用する理由には、「おいしくて安心安全な食品を提供したい」という桃屋の想いが込められている。

「“ごはんのお供”としてだけでなく、“料理のお供”としても使い続けていただけるよう、SNSなどでさまざまなレシピを広めていき、新しいおいしさを知ってもらえたらうれしいです」

餃子のたれを食べるラー油シリーズに変えるだけで、味、食感ともに変化が
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作るのが難しそうな担々麺も、「辛そうで辛くない少し辛いラー油」を使えば簡単に味が決まる
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四川料理の定番「よだれ鶏」を自宅で簡単に。花山椒をかけるとより本場の味に近づく
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桃屋の公式サイトでは450にものぼるレシピを紹介しており、なかには意外な組み合わせのレシピも存在する。現在では当たり前となった「食べるラー油」を確立させた、桃屋の「辛そうで辛くない少し辛いラー油」。こだわりが詰まったその味わいを、あらためて確認してみて。

取材・文=織田繭(にげば企画)

桃屋 公式サイト:https://www.momoya.co.jp/

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