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インスタント味噌汁のトップブランド「あさげ」が今、“粉末タイプ”を推す理由とは?開発当初は社内で反対意見も

2024/03/13 12:00
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朝晩冷え込む日が続くなか、体を芯から温めてホッとさせてくれる「味噌汁」。「健康にいい」とは言われるものの、特に朝は身支度などで手が回らず、「作る時間がない」と感じる人も少なくないかもしれない。

そんなときでも手軽に味噌汁を飲めるようにと開発されたのがインスタントの味噌汁だ。なかでも株式会社永谷園が製造・販売する「あさげ」は、長年日本の食卓を支えてきたトップブランドとして親しまれている。2024年で誕生50周年を迎えた「あさげ」だが、開発当初は「こんな高価格では市場に受け入れられない」と、社内の反対意見もあったようだ。

今回は、株式会社永谷園(以下、永谷園)マーケティング企画部の藤村裕さんに、「あさげ」の誕生から現在にいたるまでの販売戦略と、なぜ今、“粉末タイプ”に注力しているのかについて話を聞いた。

「生みそタイプみそ汁 あさげ」(1985年)。生みそタイプの即席味噌汁の需要が増えて発売された商品
「生みそタイプみそ汁 あさげ」(1985年)。生みそタイプの即席味噌汁の需要が増えて発売された商品


社内での反発を乗り越えた「あさげ」の誕生秘話

インスタント味噌汁は、今でこそ日常的に飲まれており、その手軽さとおいしさが人気の理由だ。しかし、インスタント味噌汁が世の中に出回り始めた1970年代ごろ、各社から発売されたインスタント味噌汁は“手づくり”とは程遠い品質であり、消費者からは「安かろう、まずかろう」と言われていたという。

「『品質が低い』と言われるなか、弊社の『あさげ』は、『一切妥協せず家庭のおみそ汁と遜色ない上質な味わいを実現した商品を作る』という創業者・永谷嘉男の強い思いのもと、開発がスタートしました。その精神は永谷園のルーツにさかのぼります。江戸時代に、今で言う“煎茶”の製法を完成させた永谷宗七郎(後に永谷宗円)。宗円は、『お茶本来の上質な味と香りを、上流階級だけではなく一般の方にも楽しんでもらいたい』との想いで煎茶を発明しました。永谷嘉男も宗円と同じ思いで『あさげ』の開発に向き合ったのだと思います。そして、味噌の種類を吟味するのはもちろんのこと、味噌の風味を劣化させないために『さけ茶づけ』で用いたフリーズドライ技術を採用。さらに味噌汁のおいしさに大きく影響するだしと具材についても、全国から素材を厳選し、ついに『あさげ』は完成しました。ただ、品質にこだわると価格が高くなってしまうため、当時のインスタント味噌汁が1食10円に対し、『あさげ』は40円。開発当初の社内では『こんな高い価格では市場に受け入れられない』と反発の声があがっていました」

しかし、品質には圧倒的な自信を持っていた開発チームは、全国各地で大々的な試食キャンペーンを行うことに。「実際に商品の価値を体験してもらったところ、お客様の反応が我々の想像をはるかに超えてすごかったです。40円の価格にも納得していただけました。さらに、落語家の柳家小さんさんをを起用した当時のテレビCMのフレーズ『これでインスタントかい?』が大きな話題を呼び、ブランドの認知度を一気に高めることができましたね」

「あさげ」(1974年)。パッケージの色はさわやかな朝をイメージしたのだとか
「あさげ」(1974年)。パッケージの色はさわやかな朝をイメージしたのだとか

「生みそタイプみそ汁 あさげ 徳用10食入」(1999年)。長年愛飲しているファンは、「あさげ」のブランド担当者以上に味の変化に敏感なんだそう
「生みそタイプみそ汁 あさげ 徳用10食入」(1999年)。長年愛飲しているファンは、「あさげ」のブランド担当者以上に味の変化に敏感なんだそう


時代に合わせて展開するも…ロングセラーブランドならではの葛藤

1974年の発売以降、「あさげ」は劇的に売り上げを伸ばし、発売初年には14億円を記録。その翌年には36億円という驚異的な成長を遂げた。この成功を受け、1975年には「ゆうげ」、1976年には「ひるげ」を展開し、ブランドの確固たる地位を築いた。その後も、1985年に上記3種類の「生タイプ」、2016年に「減塩タイプ」を発売するなど、常に時代のニーズに応えた商品開発を行ってきた。

「実はこれまで味の基本方針を変更したことはなく、商品形態の変更やアレンジを加えるといった形で、時代に合った商品を発売してきました。たとえば、コンビニエンスストアの普及に伴い開発したカップタイプでは『具材を入れてほしい』という声が多かったので、フリーズドライ技術を使って具材をブロック状にしたりと工夫を凝らしています」

豆味噌を使用した「ひるげ」にも根強いファンがいる
豆味噌を使用した「ひるげ」にも根強いファンがいる

最近、北海道では甘い味噌が好まれており、その影響なのか白味噌を扱った「ゆうげ」の売り上げが少しずつではあるが伸びているそうだ
最近、北海道では甘い味噌が好まれており、その影響なのか白味噌を扱った「ゆうげ」の売り上げが少しずつではあるが伸びているそうだ


しかし、インスタント味噌汁のトップブランドとして新たな挑戦を続ける一方で、長年にわたり愛されてきた味を守らなければならない、という葛藤に直面することも。その一例として、「あさげ」は通常タイプと減塩タイプを発売しているが、減塩タイプは永谷園が期待するほどの売れ行きはなく、消費者の多くは通常タイプの濃い味付けを好むのだとか。「まさにロングセラーブランドとしてのジレンマですね(笑)」と藤村さん。

「カップ入生みそタイプみそ汁 あさげ」
「カップ入生みそタイプみそ汁 あさげ」


あらためて粉末タイプのよさを伝えたい!今後のブランド展開

2024年2月に50周年を迎えた「あさげ」は、多様な商品形態を提供しつつ、最近では粉末タイプのプロモーションに力を入れているのだとか。ただ、最新のデータによると、生タイプと粉末タイプの販売比率は7:1(※)となっており、主力は生タイプであることが明らかだ。それにもかかわらず、粉末タイプの販売に注力する理由とは?
※データ収集期間:2022年10月〜2023年3月。推定販売金額より比率として算出。

「若い世代の中には、粉末タイプの味噌汁への抵抗感を持つ人が多いようです。ただ、誕生秘話でお話ししたとおり『手づくりと遜色のないおいしさを実現する』商品ですので、使ってみるとそのおいしさと便利さに驚かれるはずです。お弁当に入れて持ち運びやすく、簡単に片付けられる点や、袋の開封も一度で済む点も魅力で、現代人の生活スタイルにマッチしています。また、賞味期限が生タイプは6カ月に対して粉末タイプは21カ月と長期保存が可能なのも、今の時流にマッチしていると言えます」

「フリーズドライあさげ 8袋入」(2022年)。賞味期限が21カ月と長期保存が可能なので安心して購入できる
「フリーズドライあさげ 8袋入」(2022年)。賞味期限が21カ月と長期保存が可能なので安心して購入できる

非常食として常備しておくのもおすすめだ
非常食として常備しておくのもおすすめだ


さらに、近年の朝食はパン食の増加などにより大きく変化し、味噌汁の位置付けも変わりつつある。そしてこのような状況でプロモーションしようにも、“一汁三菜が時代に合わなくなってきている”といった課題もあるという。これに対して藤村さんは、「こうした時代だからこそ、粉末タイプの高い品質と利便性が見直されるべきだと思いますので、引き続き提案していきます」と意気込んだ。

お湯を入れたときに温度が下がらないのも粉末タイプの魅力
お湯を入れたときに温度が下がらないのも粉末タイプの魅力


そのほか、粉末タイプはキャンプや登山といったアウトドアシーンで活用されることも多いとのことで、「あさげ」を含むインスタント味噌汁の市場は、これからさらなる需要の拡大が見込まれる。これらを踏まえ、今後永谷園がどのような販売戦略を展開するのか、イチ消費者としても大いに楽しみだ。

取材・文=西脇章太(にげば企画)

公式サイト:https://www.nagatanien.co.jp/brand/asage/

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