国内だけでなく、海外にも出店している複合エンターテインメント空間「ラウンドワン」。もともとはボウリング場の経営からスタートし、現在ではスポーツ施設にアミューズメント、カラオケ、スポッチャといった多種多様な娯楽がひとつの場所で楽しめる。

なかでも「スポッチャ」は、個性的なアイテムが盛りだくさんで、若年層から家族連れを中心に幅広い年代から支持されている。また、パック料金や1日遊び放題のフリータイムなど、遊ぶ時間を自由に選べる料金体系も魅力だ。

今回は、そんなアミューズメント業界に革新をもたらしたスポッチャの導入秘話や、ここまでの人気を得るにいたった理由とそのビジネス戦略について、株式会社ラウンドワン(以下、ラウンドワン)代表取締役 社長執行役員・杉野公彦さんに話を聞いた。

今回取材に応じてくれた、株式会社ラウンドワン(以下、ラウンドワン)代表取締役 社長執行役員・杉野公彦さん
今回取材に応じてくれた、株式会社ラウンドワン(以下、ラウンドワン)代表取締役 社長執行役員・杉野公彦さん【画像提供=ラウンドワン】


部活動以外にもスポーツができる機会を!

時間制課金レジャーや漫画喫茶などが登場し、人気を博していた2000年ごろ。ラウンドワンもその流れをくみ、2003年12月にスポッチャの前身となる「レジャスタ」というカテゴリーの店舗展開を開始した。そこでビリヤードやダーツ、バッティングといったスポーツを取り入れたところ大変好評だったそうで、さらに多くの来場者を呼び込めないかと思案していた。

「まず小さなお子さまがいるご家族には、公園の代わりに安心して遊んでいただける施設を作れないかと考え、実際に子ども用職業体験テーマパーク『キッザニア』を参考にしました。また、日本のスポーツは部活動が中心なので、加入しないとなかなかスポーツに触れ合えない現実があります。対して欧米では、季節ごとにスポーツを選べる“シーズン制”が一般的でしたので、弊社のサービスを通じて、いろいろなスポーツを気軽に試すことができる機会や場所を提供しようと思ったんです」

その後、2004年7月にスポッチャを併設した第1号店舗「ラウンドワンスタジアム京都伏見店」をオープン。現在では「ローラースケート」「ゴーカート」など、約50種類※のアイテムを設置しており、年代問わず多くの人々から人気を集めている。※店舗により設置数は異なる

ラウンドワンスタジアム京都伏見店の「ローラーリンク」(2004年オープン当時)。ちなみにスポッチャは「スポーツ+チャレンジ」の略称だ
ラウンドワンスタジアム京都伏見店の「ローラーリンク」(2004年オープン当時)。ちなみにスポッチャは「スポーツ+チャレンジ」の略称だ【画像提供=ラウンドワン】

【写真】今やスポッチャを代表するアイテムとなった「バブルサッカー」 ※写真はイメージ
【写真】今やスポッチャを代表するアイテムとなった「バブルサッカー」 ※写真はイメージ【画像提供=ラウンドワン】


杉野さんは「キッズ・ファミリー層や4名以上のグループ層が大幅に増えましたし、もともとはアミューズメントフロアに設置していたゲーム機がバージョンアップに伴い、旧型となったものをスポッチャ内のゲームコーナーで再利用できるメリットも発生しました」と話す。新たな客層を取り込むだけでなく、これまでのコンテンツも活かせるという革新的なサービスがここに誕生した。

ラウンドワンスタジアム所沢店の「キッズコーナー」。小学校3年生まで利用可能
ラウンドワンスタジアム所沢店の「キッズコーナー」。小学校3年生まで利用可能【画像提供=ラウンドワン】


人気の秘訣は“地域密着”!さらに都心部と郊外で客層に違いが!?

そんなスポッチャの人気の理由について、杉野さんは「テーマパークのような特別な施設とは異なり、“地域密着”なので誰でも気軽に行きやすく、楽しさや思い出を共有できる施設だからでしょうか」と語る。特に学生は、放課後や体育祭終わり、春休みや夏休みなどに遊ぶ場所として選ぶことが多いという。

「また、どの世代の人にも受け入れられる要素を持った複合施設であることも要因ではないかと推測しています。さらに最近では『推し活』の流行により、カラオケルームでDVDを鑑賞(ライブ映像の視聴や推しの誕生日会など)する人たちも増えましたね」

「ゲームやアニメといった、かつてのサブカルチャーがメインカルチャーとなり、多くの人が楽しめる時代や環境になったことも支持していただける要因かもしれません」と話す杉野さん
「ゲームやアニメといった、かつてのサブカルチャーがメインカルチャーとなり、多くの人が楽しめる時代や環境になったことも支持していただける要因かもしれません」と話す杉野さん【画像提供=ラウンドワン】


一方、スポッチャ来場者はファミリー層が多く、特に郊外の店舗では車で来店する傾向が強いという。また、都心部の店舗は学生が多い傾向にあるそうだ。

ファミリー層は、小学生の子どもを保護者が引率して連れてくるケースや、小さな子どもと一緒にキッズコーナーの遊具を利用する場合が多いとのこと。また、来場者全体で見たときに最も多い客層はファミリー層で、全体の約40%を占めるそうだ。しかし、コロナ禍にはファミリー層の利用が大きく減少したようで「感染者数が減ればお客さまが増え、増えれば減ってしまうの繰り返しでしたね」と杉野さんは振り返る。

「アフターコロナ期になってからは、学生さんたちを中心に来場者数は戻りましたが、ファミリー層や深夜時間帯の利用は苦戦しておりました。ですが、おかげさまで今では、ファミリー層もコロナ禍前と同程度の来場者数となっています」