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「売れるはずない」と猛反発された“甘いカレー”がヒット商品に!バーモントカレー60年の歴史背景と進化の秘訣に迫る

2024/01/21 19:00
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1926年に発売された「ホームカレー」以来、さまざまなルウカレーを世に送り出してきたハウス食品株式会社。なかでも「バーモントカレー」は長きにわたり愛され続け、2023年に発売60周年を迎えている。そんな超ロングヒット商品「バーモントカレー」について、ハウス食品株式会社 食品事業一部 ビジネスユニットマネージャーの山本篤志さんに話を聞いた。

ハウス食品株式会社 食品事業一部 ビジネスユニットマネージャー・山本篤志さん
ハウス食品株式会社 食品事業一部 ビジネスユニットマネージャー・山本篤志さん【画像提供=ハウス食品株式会社】


反対された「甘いカレー」がヒット商品に

――りんごにはちみつ…というマイルドさを売りにした1963年発売の「バーモントカレー」は、当時としては画期的だったと思いますが、なぜ“甘いカレー”を作ろうと考えられたのでしょうか?

【山本篤志】当時のカレーは、一般的に「シャバシャバで辛い」というイメージを持たれていました。また、そのころはちょうど家庭の主役が父(家長)から子どもに移ってきている時代でもありました。そんなとき、当時の副社長・浦上郁夫が消費者の方々に「家庭でお子さんにカレーを食べさせるとき、どうしているのか」と聞いたそうなんです。

【山本篤志】その際、「牛乳を入れて(辛さを和らげて)食べやすくしています」「果物を入れて甘くして食べています」といった声があり、“家庭のカレーはいろいろと工夫している”ということを知ったそうです。そこから“辛くない、マイルドなカレー”にニーズがあるのではないかと考え、バーモントカレーの開発にいたったと聞いています。

1963年に発売された初代「バーモントカレー」のパッケージ
1963年に発売された初代「バーモントカレー」のパッケージ【画像提供=ハウス食品株式会社】


――“甘さ”を出すものとして、さまざまな選択肢があるなかで、なぜ「りんご」と「はちみつ」だったのでしょうか?

【山本篤志】バーモントカレーは、子どもにも食べてもらえるようなマイルドなカレーを目指したので、最初は果物を擦って入れてみたり…といろいろ試したようです。それで最終的に行きついたのが、りんごとはちみつの組み合わせでした。これが、最もマイルドで食べやすく、食べ飽きない組み合わせだったようです。

――なるほど、食べやすさだけでなく「食べ飽きない」というのも意識されていたのですね!ちなみに、「バーモント」という名の由来は?

【山本篤志】発売前は、果物を使っていたりしたので(社内で開発時に)「フルーツカレー」と呼ばれていたこともあったようです。ですが当時、アメリカ東部の長寿で有名なバーモント州に民間療法として伝わるりんご酢とはちみつを使った「バーモント健康法」が流行っていたことから、りんごとはちみつを使ったカレーということで「バーモントカレー」と名付けて販売したそうです。

――それまでのイメージを覆す“マイルドなカレー”に対して、当時は反対の声などはなかったのでしょうか?

【山本篤志】当時は「カレーは辛いもの」という認識が広まっていたため、「りんごとはちみつ入りの甘いカレーなんて売れるはずがない」と販売店からは猛反発されたそうです。ですが、発売の1カ月前から集中的にTVコマーシャルを行い、お客様のほうから「バーモントカレーをください」とアクションしてもらえるようにするなど、工夫をしたそうです。ほかにも、店頭での試食宣伝活動でお客様にPRした結果、数カ月後には爆発的なヒットを遂げ、増産体制が間に合わず品切れの状態が続くほどの人気商品となりました。

――「バーモントカレー」は、ハウス食品の商品の中でも特に人気があるように思いますが、やはり人気は上位でしょうか?

【山本篤志】おかげ様で、ルウカレーのシェアはNo.1(※)を獲らせていただいています!
※(株)インテージSRI/SRI+月次データ ルウカレー市場
SRIデータ期間:2002年1月~2016年12月、SRI+データ期間:2017年1月~2023年12月 販売金額シェア

――「バーモントカレー」の人気の理由はどのようなところにあると思われますか?

【山本篤志】「マイルド」というだけでなく、食べ飽きないまろやかさやコクがポイントだと思います。また、辛さが強くないのにご飯にすごく合いますし、家族全員でおいしく食べられるカレーであるというのも人気の理由のひとつかなと思います。辛さが強くないので、子どものころから家庭で作られることが多く、「食べ慣れている」ということもあるかもしれません。

【山本篤志】そして、「バーモントカレー」を食べて育った子どもたちが、親になってからもまた子どもに食べさせたいと思ってくださる…ということも人気が継続できている理由かもしれませんね。

――そういった点では、ハウス食品で実施されている子ども向けのクッキング教室も、バーモントカレーの人気を支えているのかもしれませんね。

【山本篤志】そうですね、1996年からバーモントカレーを使ってカレーを作る「はじめてクッキング」教室を子ども向けに実施しており、大変好評をいただいています。自分の手で食材に触れて食べ物の大切さを知り、みんなで料理する楽しさや食べる喜びを感じてもらうことが目的ですが、子どもたちへのPR活動の一環であるという側面もあると思います。

「はじめてクッキング」教室の様子
「はじめてクッキング」教室の様子


その時代のお客様のニーズに寄り添う商品づくり


――「バーモントカレー」は、味の改良がたびたび行われているそうですが、これまで何回くらい改良されているのでしょうか?また、最近ではいつ改良されたのでしょうか?

【山本篤志】これまで実は15回、改良しています。最近では、60周年を迎えた2023年の2月から味を改良したリニューアル版を販売しています。今回の改良では、健康への配慮から食塩相当量を1皿あたり0.1グラム減らしています。また、大箱(230グラム)タイプでは、環境に配慮し、石油由来のプラスチック原料の削減や植物由来の原料を一部使用したトレイを新たに開発し採用しています。

60周年を迎えた2023年に「バーモントカレー」はリニューアル!
60周年を迎えた2023年に「バーモントカレー」はリニューアル!【画像提供=ハウス食品株式会社】


――15回も改良されているのですね!ということは、日本人の味覚は時代により変化してきているのでしょうか?

【山本篤志】はい、おっしゃるとおりだと思います。おおもとのコンセプトのまろやかなコクや食べやすさは変えてないのですが、その時代時代によって嗜好が変わってくるので、そこに合うように微調整をしています。当時の味を全くそのまま受け継いでいるというわけではなく、大きな考え方は維持しながら少し変更をしていっている、ということです。

――「時代に合わせた」ということですが、それはどうやって?

【山本篤志】お客様の声を参考にしながら、風味や色味などを少しずつ調整しています。ほかにも、「バーモントカレー」ブランドとして、時代のニーズに寄り添えるようなさまざまな商品展開を行っています。たとえば、アレルギーをお持ちの方でも食べられる「特定原材料7品目不使用シリーズ」や、健康志向の高まりに応えるためカロリー・脂質を50パーセントオフ(1皿あたり、バーモントカレーと比べて)にした「プライムバーモントカレー」などがあります。

おいしさはそのままに、アレルギーをお持ちの方でも食べられる「特定原材料7品目不使用シリーズ」
おいしさはそのままに、アレルギーをお持ちの方でも食べられる「特定原材料7品目不使用シリーズ」【画像提供=ハウス食品株式会社】

【画像】“まろやかなおいしさ”と“カロリー・脂質50%オフ”(1皿あたり、バーモントカレーと比べて)を両立した「プライムバーモントカレー」
【画像】“まろやかなおいしさ”と“カロリー・脂質50%オフ”(1皿あたり、バーモントカレーと比べて)を両立した「プライムバーモントカレー」【画像提供=ハウス食品株式会社】


【山本篤志】また、昨年(2023年)は60周年の節目に、「バーモントカレー」のレトルトカレーを新発売しました。バーモントカレーを食べたくても食材を切って作るのが大変という忙しい方に向けた、時代のニーズを捉えた商品になっていると思います。「少しでもお客様の役に立つように」「寄り添えるような商品づくり」というのは、常に大切にしています。

2023年に発売された「レトルトバーモントカレー」<甘口>と「レトルトバーモントカレー」<中辛>
2023年に発売された「レトルトバーモントカレー」<甘口>と「レトルトバーモントカレー」<中辛>【画像提供=ハウス食品株式会社】


――バーモントカレーはまだまだこれからも進化していきそうですね!

【山本篤志】バーモントカレーは、お客様に寄り添って生まれたブランドです。“その時代のお客様にいかに寄り添えるか”という軸はそのままに、もっともっと新しいことを考えていきたいと思っています。

【山本篤志】現代では(外食の増加などで)調理する機会が減ってきていますが、カレーでまだまだ新しいことができるのではないかと思っています。家庭でカレーを作ることやその楽しさをもっと広げていきたいと思っていますので、これからも時代に合わせたご提案をしていきたいです。


今回の取材のなかで「実は気づかれないようなところでも、いろいろな改良をしてきているんですよ」という山本さんの言葉が特に印象的だった。常に時代のニーズを読み取り、進化させていくその姿勢がある限り、「バーモントカレー」の人気はまだまだ続きそうだ。

この記事のひときわ#やくにたつ
・定番や常識を疑うことが新商品やヒットにつながる
・時代のニーズに合った進化が人気の継続へと導く

取材・文=矢野 凪紗

■ハウス食品公式サイト
https://housefoods.jp/

■「バーモントカレー」商品サイト
https://housefoods.jp/products/catalog/cat_1,curry,roux,vmt.html

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