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【漫画】「株式投資でもらえるお金ってどこからくるんですか?」ギャル高校生が資本主義を一刀両断する漫画がタメになると話題

2023/02/13 15:00 | 更新 2023/04/16 21:57
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仕事の合間の息抜きになる作品や働く人を勇気づける作品、今日がちょっとプラスになるような漫画をOneNews編集部がピックアップ。

今回紹介するのは、経済・政治・社会といった敬遠されがちなテーマを漫画に落とし込み、作品とSNSを通して啓発活動を行うmihanaさん(@mihana07)の「資本主義と戦うギャルの漫画」だ。とある高校を舞台に、「お金があれば幸せになれる」と投資によるお金の稼ぎ方を説く先生と、「こんな歪んだ世の中を変えたい」と昨今の株主資本主義に異を唱えるギャル高校生との間で白熱した論戦が繰り広げられる本作。現代社会の構造に鋭く切り込んだ核心的な作品内容に対し、2023年1月5日にTwitterで公開されて以降、さまざまな反響が寄せられている。ここでは、作者のmihanaさんにインタビューを行い、本作を描いた理由やきっかけ、難解なテーマを扱う際に意識していることなどについて話を聞いた。

ギャル高校生・伊佐波リオが株主資本主義に鋭く切り込むSNS漫画が話題
ギャル高校生・伊佐波リオが株主資本主義に鋭く切り込むSNS漫画が話題 【画像提供=mihana(@mihana07)】

「目が覚める思いがした」先生相手に一歩も引かない、ギャル高校生の熱い主張に反響続々

「みなさん、お金持ちになりたいですか?」。本作はそんな問いかけとともに、高校教師が生徒たちへ向けて「投資をすればお金を増やすことができる」と教えるシーンから始まる。正しい金融の知識を身につければ、投資はギャンブルではない。成長企業に投資をして応援することで、安定的にお金を増やすことができる。そのような先生の言葉を聞いて、「じゃあ、働かなくてもお金がもらえるの?」「それめちゃくちゃいいじゃん!」と生徒たちが盛り上がるなか、ただひとり、伊佐波リオだけはそうではなかった。

「そのお金ってどこからくるんですか?」というリオの鋭い質問に先生は表情を曇らせる。優秀な企業がいいモノやサービスを生み出せば売上は伸び、そのなかから配当金を支払っているのだと先生は説明するが、リオは「嘘ね」と一刀両断。「人件費を削れば簡単に配当金は捻出できる」「企業は賃金を上げずに、株主への配当金にお金を回し続けている」と、リオはデータを用いながら痛烈に批判する。しかし先生は、国に頼れない時代だからこそ、自分たちでお金を稼ぐ力が必要だと自らの主張を譲らず…。株主資本主義にまつわる論戦は、さらなる激しさを増すのだった。

「資本主義と戦うギャルの漫画」より
「資本主義と戦うギャルの漫画」より 【画像提供=mihana(@mihana07)】

熱いハートを持つギャル高校生・リオのキャラクターを軸に、難解なテーマをわかりやすく噛み砕き、キャッチ―な漫画に仕上げている本作。Twitter上では、「今の社会で生きるにはお金も必要だけど、本当に大切なモノを大切にすべき」「目が覚める思いがした」といった肯定的なものから、「正直、理想論」「私が先生だったら(リオに)反論しちゃう」といったやや批判的なものまで、さまざまな意見が寄せられている点も興味深い。作者のmihanaさんは本作のほかにも、硬派なヤンキーが日本経済について解説してくれる「ヤンキー経世済民漫画」をTwitterで不定期更新中だ。経済や社会について楽しみながら学べるmihanaさんの作品をぜひチェックしてみてはいかがだろう。

漫画を活用して現代社会に一石を投じる。メッセージ性に重きを置いたストーリー作り

ーー「資本主義と戦うギャル」はどのような思い、きっかけから生まれた作品でしょうか。
この漫画は、株主資本主義について警鐘を鳴らしたいという思いから生まれました。日本では長い間賃金が低迷しています。消費税をはじめとする国民負担の増加、非正規雇用の増加、グローバリゼーションなどさまざまな要因がありますが、株主資本主義(株主の利益を最優先させる考え方)による賃金への下方圧力についてはまだまだ問題視する声が少ないです。漫画でも紹介していますが、ここ20年で賃金や設備投資は減少しているのに、配当金は5倍以上になっています。評論家・中野剛志さんの著作『世界インフレと戦争 恒久戦時経済への道』(幻冬舎)の中でも、同じグラフを用いながら、株主重視の企業統治が賃金上昇を妨げていることを指摘されています。このことをもっと多くの人に知ってほしいと思ったのがきっかけでした。

もうひとつ、漫画を描く原動力になったのは、2022年9月に掲載された日本経済新聞のある記事です。記事の中では、高校において金融教育が必修になるなか、若い先生が「皆さんはお金持ちになりたいですか?」と高校生に呼びかける場面が紹介されています。この授業を受けた高校生は「お金があれば何でも解決する」と思ってしまわないか。社会全体のあり方を子どもたちに教えるのが教育の本分であるはずなのに、その役割が軽視されていないか。そんなただならぬ危機感を抱き、教育のあり方についても問い直すシーンを漫画の中に盛り込むことにしました。

ーー本作において、読者に注目してほしいポイントはありますか?
注目してほしいポイントは、ギャル高校生・伊佐波リオが「綺麗事なんかじゃない」のあとに続ける言葉。「社会は支え合いでできている」「国を支えるのは、この国に生きる人たち」「人よりお金が大切だなんてあり得ない」と畳み掛ける場面です。どれも当たり前のようなことだけど、今の現代人がお金への執着で忘れてしまっている大事なことだと思います。

「資本主義と戦うギャルの漫画」より
「資本主義と戦うギャルの漫画」より 【画像提供=mihana(@mihana07)】

ーーちなみに、mihanaさんが特に気に入っているシーンやセリフはどこでしょうか?
個人的に気に入っているのは、その次のシーン。先生が「俺たちみたいな小市民はシステムの中で自分が勝つことだけ考えてれば良いんだよ!(略)なぜ困難な道を生きようとする?なぜ楽に生きようとしない?」と問われて、リオが、「嫌だからよ」と答えるシーンですね。

私自身も自分の意見がほかの人と違う場面が多く、毎日葛藤しています。「今だけよければ、自分だけよければ、お金さえあれば」という個人はどこの世界に行っても多いです。その中で、社会全体を考慮したうえでの意見を言うと、その意見が浮いてしまう。あまりにも意見が噛み合わず、口をつぐんでしまうこと、悔しい思いをすることもありますし、政治・経済・社会のことを考えるのをやめようかなと思う瞬間すらあります。でもやっぱり、おかしいことには「おかしい」と言いたいですし、社会全体を変える努力をあきらめたくない。目の前の理不尽をなんとか止めたい。自分にできることは全部したい。リオの台詞は私の心からの叫びかなと思います。

「資本主義と戦うギャルの漫画」より
「資本主義と戦うギャルの漫画」より 【画像提供=mihana(@mihana07)】

ーー作品を公開後、Twitter上で多くの反響が寄せられました。印象に残ったコメントなどはありましたか?
教育関係者の方から、「教育の本来の役割(社会のあり方を教えること)を『綺麗事』で片づける声と常に戦っているので、こう言い切ってもらえてスッキリしました。正しい国家感、経済感で社会が回るように私も教育の現場からこのことを堂々と訴えていきたいとあらためて思いました」とコメントをいただいたのは非常にうれしく、印象に残っています。自分のことだけではなく、社会全体で考えることの重要性を私も引き続き訴えていきたいと感じました。

ーーmihanaさんご自身が経済や金融、政治といった分野に精通していらっしゃるからこそ、難しいテーマを漫画に落とし込めるのだと感じます。前述したようなジャンルを扱う際に意識していることなどはありますか?
正直、私自身精通していると言えるほど勉強できておらず、描きたいテーマに合わせて知識を集中的に吸収するようにしているので、毎回、悪戦苦闘しています(笑)。漫画を描くアウトプットの時間より、情報を得るためのインプットにいつも時間をかけています。

気をつけている点は3つほどありますね。1つ目に、できるだけわかりやすく表現すること。経済学は、難しい言葉が多いという印象を持たれがちなので、そのイメージを払拭し「わかりやすい!」と言ってもらえることを目標にしています。2つ目に、自分の意見だけにならないように、ほかの人の意見をうまく取り入れること。株主資本主義についても、私よりも早くに警鐘を鳴らしていた人はたくさんいます。漫画ではどうしても情報量が限られるので、後述する参考書籍やサイト等の情報にも触れていただきながら、ご自身で問題を考えるきっかけにしていただけたらと思います。3つ目に、メッセージ性を持たせること。本作で言えば、「社会は支え合い」「国を支えるのは、その国に生きる人」など、経済の知識と同じぐらい、こうした社会への意識が大事だと思っているので、その話のなかでキーワードになるような台詞は意図的に登場人物に何回も言わせています。

「資本主義と戦うギャルの漫画」より
「資本主義と戦うギャルの漫画」より 【画像提供=mihana(@mihana07)】

日本を少しでもよい方向に。よりよい明日のために漫画を描き続ける

ーーmihanaさんが経済学に興味を持ったきっかけやバックグラウンドについて教えてください。
まず、経済学には、主流派経済学と異端派経済学という2つの学派があるのですが、私は大学時代に経済学部に在籍し、経済学界で主流と言われる理論である主流派経済学を学んでいました。当時は本気で、「日本は財政破綻するのではないか?」と心配していました。しかし、一昨年ぐらいから私生活に余裕ができ、いろいろな本や動画に触れるなかで、「なぜ日本政府は円を発行できるのに、日本円の借金を返せないことになるの?」と疑問が湧き、自分が学んだ主流派経済学の前提を疑うようになりました。

そこで出会ったのが、現代貨幣理論(Modern Monetary Theory、通称MMT)という異端派経済学のひとつの理論です。現代貨幣理論は、先人の社会学者・経済学者の研究をベースにしながら、現代における貨幣のシステムをつまびらかにした理論です。詳細に踏み込むことはしませんが、「日本やアメリカなどの主権通貨国においては、資金的な制約はなく、人やモノといった実物資源が本当の制約である」というのが重要なメッセージだと私は受け止めています。MMTのレンズを通してみると、今まで主流派経済学が説明できていなかった現象、例えば、なぜ日本は債務対GDP比が高いのに金利が低いままなのかなどがよく理解できました。MMTのほうが事実に即していて妥当だと考え、さまざまな経済に関する漫画を描く際の軸にしています。

ーーMMTと出会ったことで、世の中の見え方が変わっていったのですね。漫画を描くことの動機にもなっているということでしょうか?
MMTを通じてお金について正しく理解できるようになると、目から鱗なことが本当に多く、それをひとりでも多くの方に伝えたいと思うようになりました。また、「国の借金は将来のツケ」であるとか、「税金を集めないと政府は何もできない」という政府が流布する思想がいかに間違っているか、その間違いがいかに日本国民の生活を苦しめているかを痛感しました。

そこで、「漫画という身近な媒体を使いながら、正しい経済の知識を広めることはできないだろうか?」と思い、描き始めたのが「ヤンキー経世済民漫画シリーズ」です。初期はまだまだ理解が不十分で出来も悪く、メッセージ性も薄いのですが、最近は「本当に大事なのはお金ではない、その国に生きる人たちだ」というメッセージで漫画を描き続けています。お金について正しく理解できるほどに、大事なのはお金じゃないと気づける。この感覚はおもしろいなあと思いますし、多くの人にも共感してもらえるよう、漫画を描く取り組みは続けていきたいと思っています。政治家やテレビのコメンテーターは相変わらずお金の話ばかりしていますが、本当に必要な議論は「日本に生きる人たち」の議論です。まずは、株主資本主義の是正、国民負担の軽減を通じて賃金が抑制されている原因を取り除くことが必要です。それとともに、食やエネルギーの自給率の向上、防災・国防、道路や水道など生活インフラの更新、年金の保障、医療・介護の拡充、教育の拡充など、日本に生きる人たちが安心して暮らせるために政府がやるべきことは多くあります。限られた実物資源をいかに配分するか、またいかに社会を支える人を育てていくか、というのが今やるべき本質的な議論です。この点に早く気づいてもらうためにも、自分ができる限りのことは全部したいと思っています。

「ヤンキー経世済民漫画シリーズ」の「第五話 財源って何や」より
「ヤンキー経世済民漫画シリーズ」の「第五話 財源って何や」より 【画像提供=mihana(@mihana07)】

ーーTwitterで「ギャルちゃんにはしばらく株主資本主義と戦ってもらう」と書かれていましたが、続編を期待してもよいのでしょうか?今後の展望について教えてください。
続編はぜひ描きたいと思っています。次作は、自分のことだけではなく社会全体で考えることの重要性を訴える作品にしようと思います。次々作では、田内学さんの『お金のむこうに人がいる 元ゴールドマン・サックス金利トレーダーが書いた予備知識のいらない経済新入門』(ダイヤモンド社)やムギタローさんの『東大生が日本を100人の島に例えたらおもしろいほど経済がわかった!』(サンクチュアリ出版)などを参考にしながら、投機行動(未来での価格の変動を予測し、現在の価格との差で利益を得る目的で商品や資産を売り買いすること)に疑問を投げかける作品も発表できたらいいなと思っています。

また、今の日本は、「国にはお金がないから年金は削る。自分の将来のために株主投資で資産形成をしてくれ」という、国民の将来を自己責任で片づけてしまうような、国の本分を忘れた主張を繰り返しています。ヤンキーくんとギャルちゃんの2人で、財政破綻の欺まんと株主資本主義の問題点を喝破する漫画もいつか描きたいですね。

ーー作品を楽しみにしている読者へ向けて、メッセージをお願いします。
経済の分野ではまだまだ勘違いされていることが多く、幸いにもまったくネタには困ることはないので(笑)、私も勉強を続けながら、緊縮財政と戦うヤンキーの漫画と(株主)資本主義と戦うギャルの漫画、2人合わせて新自由主義と戦う漫画を描き続けたいと思っています。

最後に申し添えたいのは、私だけではなく、すでに多くの人が日本を変えようと草の根運動をがんばっていることです。「本当の財源はこの国に生きるあなたである」と訴える「財源研究室」さん、包括的に日本経済の問題点を指摘している「経世済民同好会」さん、消費税やインボイスの仕組みのいびつさを訴える「STOP!インボイス」さんや「VOICTION」さん、ほかにも個人のブログで正しい貨幣観や国家観を広めようとがんばっている人は本当に多くいらっしゃいます。私ひとりでできることは限られていますが、こうして一生懸命頑張っている人たちと連携しながら、どんどん取り組みを大きくし、日本を少しでもよい方向に変えていけたらと思っています。

■Twitter:mihana@ヤンキー経世済民漫画(@mihana07)
https://twitter.com/mihana07
■関連サイト
財源研究室
経世済民同好会
STOP!インボイス
VOICTION

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