近年、リスキリングや大人の学び直しの重要性が叫ばれるなか、キャリアアップやスキルアップのための勉強を始めた人も少なくないだろう。だが、仕事の合間を縫って勉強時間を確保するのは困難なこと。社会人にとって効率的かつ効果的に勉強するには、どうすればいいのだろうか。

今回、話を聞いたのはアドネス株式会社(以下、アドネス)にて代表取締役社長を務める三上功太さん。高3の5月で東大E判定ながらも、東大理科二類に現役合格したという頭脳の持ち主だ。受験期には脳の動きや機能を利用し、徹底的に効率化した方法で難関試験を突破している。

そんな三上さん率いるアドネスが開発し、推し進めているサクセスラーニング(R)(以下、サクセスラーニング)とは、どのような教育システムなのだろうか。三上さんに、サクセスラーニングというシステムや、それに伴うビジネス展開についてインタビューを行った。

 『月に1億円稼ぐ現役・東大生社長の勉強法』(KADOKAWA)を携える三上さん
『月に1億円稼ぐ現役・東大生社長の勉強法』(KADOKAWA)を携える三上さん【撮影=福井求】


高3の5月でE判定。東大合格できた勉強法とは?

ーーまずは、三上さんの経歴について教えてください。
【三上功太】1998年にスペインで生まれ、10歳になった2008年前後ぐらいに日本に戻りました。その後、広島の小学校に通い、そこから中高一貫の男子校に進学しました。そこから、2017年に東京大学に現役で入学し、今にいたります。

【三上功太】実は、受験勉強を開始したのは高3の5月からでした。その時期に受けた模試は東大E判定で、全然合格ラインには到達していませんでした。ですが、そこから独自で編み出した「一極集中勉強法」という勉強スタイルで、およそ10カ月で東大の試験を突破しました。

ーーすごく短い期間の受験勉強で合格されたのですね。どのような勉強をされたのですか?
【三上功太】5月半ばから6月は丸々化学だけ勉強して、次の7月から8月の途中までは物理、そして、次の9月から10月までは数学、そして11月から12月は過去問だけ解くという勉強を行いました。ちなみに英語はスキマ時間でやっていました。

【三上功太】このような勉強方法を編み出した背景には、当時、自分の頭がどういうふうに動いたり、ものを覚えたりしているのかを考えていたということがありました。時には心理学なんかも勉強したりして、人の記憶の作られ方を理解しました。脳に入ってくる情報って単体であるわけではないので、情報と情報が結びついてネットワークに刻まれるような感じの入り方をするんです。いわゆる「学習の転移」という概念ですね。

【三上功太】この脳の動きを利用して、有機と無機、電磁力学と熱力学、というふうに、ちょっと似ているもの同士をつなげていき、共通するような領域が多くなるように学習の順番を整えるという、徹底的に効率化した勉強を行いました。このときに培った勉強法をもとにして『月に1億円稼ぐ現役・東大生社長の勉強法』(KADOKAWA)を2021年に出版しています。

【写真】「さまざまな失敗が自分を強くしている」と三上さんは話す
【写真】「さまざまな失敗が自分を強くしている」と三上さんは話す【撮影=福井求】


ーーその後の大学生活はどのように過ごされていたのですか?
【三上功太】東大入学後には営業の仕事を始めてみたり、学生団体を作ったりしていましたが、あまりうまくいきませんでした。また、仮想通貨の投資詐欺に引っかかって、消費者金融に200万円ほど借金をしてしまうという失敗もありました。

ーー借金をされたことがあったのですね。意外です。
【三上功太】そうなんです。そのようなドン底のなかでSNSと出合い、SNSの可能性にすごく魅せられました。そこからSNSマーケターとして活動し始め、途中からTikTokで顔を出して勉強法や心理学など、さまざまなことを発信するようになりました。それが数カ月で20万人ぐらいフォロワーが増えましたね。

【三上功太】そこからTikTokの教育業がSNSマーケティングの教育業に進化し、その後法人化する流れとなりました。現在はリスキリングに軸足を置き、教育業に少し枠を広げていろいろなところに教育サービスを提供しています。

教育に革命を!サクセスラーニングとはどんなシステム?

ーー東大合格や教育業などを経た三上さんが編み出した、貴社の教育システム・サクセスラーニングとは、どのようなものなのでしょうか?
【三上功太】サクセスラーニングとは、ゴール達成にコミットした弊社独自の教育システムです。そもそも、教育というのはサクセスするためにありますよね。たとえば、受験に合格するとか、お金を稼ぐとか。教育を受けるその人それぞれによって、「成功」というものが定義されているはずなんです。

【三上功太】サクセスに対してコミットする教育システムのあり方というのがサクセスラーニングですね。サクセス、つまりゴール達成にコミットするために、さまざまな仕組みが回っているのが特徴です。自社で作成する「ラーニングシステム」というシステムを開発しているので、これどおりにやるだけで、ゴールに達成できるというのが一番の強みです。

【三上功太】世の中にはさまざまな成功の形があると思うのですが、わかりやすく言えば、その可能性をグンと上げるためのシステムですね。これを編み出すうえで、学習塾の仕組みを抽象化して定義しました。塾の行っていることというのは、ロードマップの策定、生徒の現在地の確認、生徒がやるべきアクションの提示、そしてアクションの実行の確認の4つです。


ーーサクセスラーニングはどのようなきっかけで考案されたのですか?
【三上功太】私が教育業に携わっていたころの話なのですが、当初は一対一でのコミュニケーションで課題を解決していく、コンサルティング的な立ち回りをしていました。その後、生徒の増加によってスクール形式で教育業を展開していったのですが、さまざまなスクールの実態を見ていて、非効率な部分がたくさんあるなと強く感じていたんです。

【三上功太】先生のレベルによって言っていることが変わったり、生徒がゴール達成にコミットできない授業をしていたり、そもそも教えることが目的化していたりと、既存の教育業態にはさまざまな問題がありました。これをどう効率化しようかとずっと考え続け、それが積み重なって昇華されたものが、先ほど申し上げたサクセスラーニングを構成する4つの要素になります。

四谷に構えるオフィス。ビルすべてがアドネスのフロアになっている
四谷に構えるオフィス。ビルすべてがアドネスのフロアになっている【提供=アドネス】


ーー教育業をされていたことが糧となって生み出されたのですね。
【三上功太】そうですね。教育を通してゴールを達成してもらうためには4つの要素さえあれば十分なんです。これを自動かつ高精度でやりきることができるのが、サクセスラーニングの大きな特徴です。逆に言えば、目標達成のためにはこの4つくらいしかすべきことってないんです。だからこそありとあらゆる分野の勉強や学習に応用できるという強みがあります。

【三上功太】もう少し端的に言えば、できない人ができるようになるのがポイントなのです。できる人ができるなんて当たり前なんですよね。だからこそ、できない人にできる人の頭の使い方を強制的に実践させるのがサクセスラーニングの特徴です。

ーー現在はどのような分野で教育プロダクトを展開されていますか?
【三上功太】現在、弊社ではサクセスラーニングを用いたさまざまな教育プロダクトを展開しています。代表的なものですと、SNSマーケ・事業構築ともに未経験の方から上級者の方まで幅広く対象にした「SNSERS」ですね。これは「完全未経験からSNS×起業で0→100達成」を目指すコンサルコミュニティで、SNSを用いて事業構築するための知識・ノウハウがすべて手に入るというものです。

【三上功太】実際にこのプロダクトを利用して、たくさんの方を成功に導いてきました。一例をあげると、ある営業代行をしている生徒さんがいたのですが、最初は全然仕事ができず、講習内容も全く理解できないという状態でした。私も「ヤバい生徒をとっちゃったかな…」と心配になったのですが、サクセスラーニングを通して教育を行い、その結果、月200万円もの売り上げを出せるようになりました。

ーー営業マンとして大成功をされていますね。
【三上功太】そうなんです。このように確実に結果に結びつけられるのが、サクセスラーニングの最大の強みです。弊社では「選ばれるデザイナー」になりたい方が対象の「デザジュク」、コンサルティングセールスを完全習得し、トップセールスマンや営業のプロとして活躍したい方が対象の「ギブセル」など、目指すべきゴールに合わせたさまざまな教育プロダクトを展開しています。

目指すは世界進出!三上さんとアドネスの野望とは?

ーーリスキリングや大人の学び直しはさらに広がっていくことかと思います。そこで、サクセスラーニングや教育プロダクトをさらに展開していくうえで注力されていることはありますか?
【三上功太】今はプロダクト自体を磨き込むというところに注力をしています。サクセスラーニングの仕組み自体をどんどん強化することにコミットしていますね。カリキュラム自体のブラッシュアップをしたり、エンジニアがシステムをどんどん改善したりしています。まだまだ、私が頭で描いているサクセスラーニングには追いついてないので、その辺を詰めていっている段階です。あとはAIの導入にも力を入れています。

ーーAIでどのような課題を攻略したいと考えていますか?
【三上功太】AIとシステムの力で人間の力を超えることを考えています。現段階においては、人間が一対一でやったほうがいい分野があるのですが、そこをAIで超えないといけないと考えています。特に、ToDo出しの部分とエネルギーをあげる部分の2つですね。

【三上功太】ToDoを出すところに関しては、本当なら優れた先生が行うのが一番いいですね。ですが、優れた先生は量産可能なものではないので、そこはカリキュラムをブラッシュアップして、サクセスラーニングのシステムとして提供していくという形になります。また、エネルギー上げのほうについては、「おめでとう」みたいなメッセージの送信などをアルバイトの方などにお任せしてもいいのかなと思います。もちろんシステム化するところはどんどんしていきますが。

ーーほとんどすべての事業がAIで自動化されそうですね。
【三上功太】そうですね。今後はあらゆる事業の自動化を進める予定です。

総会でマイクを持つ三上さん
総会でマイクを持つ三上さん【提供=アドネス】


ーーキャリアアップのために、リスキリングや学び直しを考えている社会人に一言お願いします。
【三上功太】これは私の考え方ですが、私にとっては私の人生が一番素晴らしいんです。そして、あなたにとってはあなたの人生が一番素晴らしいはずなんです。もし誰かと入れ替われるボタンがあっても、ほとんどの人が押さないと思います。それは、自分の人生が一番いいって自分で知っている人がほとんどだからです。

【三上功太】人生には今この瞬間から無限の分岐があり、その分岐におけるベストマイライフが人それぞれにあります。自分の人生がまず一番よくて、ほかの誰の人生も自分の人生とは違うのです。そして、人生の中で一番いい選択肢を選べるのは自分だけなんです。そのような選択にどれだけ寄り添えるかというのが、私たちの腕の見せ所だと思っています。

【三上功太】ベストマイライフの追求。それこそが人生の目的だと私は考えています。ただひたすら、まさにベストを尽くすじゃないけど、最善の選択というものをしていけばいいのではないでしょうか。リスキリングや学び直しが最善であると思うならば、自分の考えに従って行動するのがベストだと思いますね。

「世界進出を目指していきます!」と三上さん
「世界進出を目指していきます!」と三上さん【撮影=福井求】


ーー最後に、三上さんの事業における野望を教えてください。
【三上功太】世界的な企業にします。スターバックスやAmazon、Apple、Googleなどに匹敵する、いわゆる世界的に一般的に使われるようなサービスを作り、世界規模の企業に成長させていきたいと考えています。まずはサクセスラーニングという概念がどれだけ既存の教育に対してインパクトを与えられるかを見届けたいですね。

【三上功太】ただ、現状のプロダクトでは世界で戦うことはできないので、サクセスラーニングを中心として世界で通用しうるプロダクトを組成するというのが次の目標です。日本ではすでに業界をリードする側になっているので、次は世界中の人がこのサクセスラーニングを用いて学べるように事業を展開しています。

ーー世界進出、とても楽しみにしています。
【三上功太】教育というのは人間がいる限りなくなることはありませんし、人々の世界や未来を広げる最大の手段です。だからこそ世界中を巻き込んで、教育に革命を起こしていきたいですね。

この記事のひときわ#やくにたつ
・勉強を行ううえで効率化は必須条件
・応用できる仕組みを作ることでビジネスが広がる
・ゴールを見据えた勉強方法を採用することが大事

取材・文=福井求(にげば企画)