甘いカオもここまでだ! / (C)野原広子/KADOKAWA
「今日だけでいいから学校休ませて」がスタートだった。まさかうちの娘が学校に行けなくなるなんて!

文部科学省が2021年10月に発表した「令和2年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」によると、2020年度、小中学校における長期欠席者の数は28万7747人、そのうち不登校の児童生徒数は19万6127人に及び、8年連続で増えているのだそう。

数々の人気コミックエッセイを手掛ける漫画家・野原広子さんの娘・トモちゃんも不登校になった児童の一人。小学5年生のある朝「今日だけでいいから学校休ませて」と言い出します。野原さんが「今日だけだよ」と許可したところ、そこから学校の話をすると喘息や発熱するようになり、学校に行けず不登校状態になってしまいました。叱咤も励ましもトモちゃんには効かず、どうしたらいいのか悩む野原さん。暗く深い迷路に迷い込んでしまった気分だったそうです。

いよいよ明日から新学期!野原さんはトモちゃんのペースで過ごすのを認め、好きなことをやらせて、励まして、とさまざまなことを夏休みのあいだに試みてきました。その成果が出るのでは、と期待していた野原さんでしたが、トモちゃんはまさかの「学校を辞める」と退学宣言。それまで大きく構えていた野原さんでしたが、ついに焦りに囚われてしまい、何がなんでもトモちゃんを学校に連れていくことを決めます。果たして新学期初日、どうなるのでしょうか?

※本記事は野原広子著の書籍『娘が学校に行きません 親子で迷った198日間』から一部抜粋・編集しました。

どーしょ娘ヤバイ!? / (C)野原広子/KADOKAWA
私のやってきたことは何? / (C)野原広子/KADOKAWA
学校行くよ! / (C)野原広子/KADOKAWA
私はいません / (C)野原広子/KADOKAWA
どうしちゃった? / (C)野原広子/KADOKAWA
いろいろ頑張りすぎちゃったな? / (C)野原広子/KADOKAWA
ひたすら娘の充電に徹した1ヶ月半。夏休みの最終日、始業式は行けるだろうという母親の期待虚しく、まさかの退学宣言をしたトモちゃん。こうなったらもう実力行使しかない!無理やりトモちゃんを車に乗せ学校へ向かうと、担任とともに出迎えてくれたのは保健の先生。

「頑張りすぎちゃったな?」トモちゃんへの優しい声かけが始まりました。

この後もたくさんの大人たちが見守る中で、不登校の娘と向き合い続けた野原さん。次第に状況が変化していくのですが、その時のお話を野原さんにうかがいました。

「最初、『今日だけでいいから学校休ませて』と言われたとき、まったく不安はありませんでした。もともと元気で明るい子だったので、1週間も休ませればすぐに元気になると思っていました。

そのお休みがまさかそんなに長引くものだとは思いもよらず…」

――無事に登校できるようになったあと、不登校期間があったことで何か困ったことなどありましたか?

「親としてはないですが、子ども自身はあったと思います。実際に教室に戻って元気に過ごしていたように思いますが、本来の娘に戻るまでには1年くらいかかったように感じています。再び教室に通うようになってみて改めて、中途半端にエネルギーを充電した状態で教室に戻してはいけないんだということは感じました」

――改めてお伺いします。子どもが手を離れた今、この当時のことを振り返ってみてどう感じますか?

「不登校は子育てしてきた中で一番の大変な出来事だったのですが、娘と密に過ごせた貴重な時間だったと思います。一緒にお風呂に入るというのもその頃すでに終わっていたのですが、不登校の時期は一緒にお風呂に入り、庭でお弁当食べたり、昼間からお買い物に行ったり、海をただ眺めに行ったり。娘が幼い頃に戻ったような楽しい時間として記憶がすり替えられています。都合いいな〜と思われるかもしれませんが、都合よく考えることにしています。

娘が中学生の時に不登校の時のことを『あの頃は幸せだった』と言ったことがあったのですが、その理由を聞いたら『お母さんが一緒にいてくれたから』って言ったんです。涙が出ました」

焦らず見守る。なかなか難しいことですが、大切な子どもが登校拒否をしたら、「SOS」が出ているという事。子どもに寄り添う気持ちが大切なのかもしれません。

著=野原広子/『娘が学校に行きません 親子で迷った198日間』(KADOKAWA)