(C)松本ぽんかん/KADOKAWA
【マンガを読む】松本ぽんかんさんの『つわりが怖くて2人目に踏み切れない話』を最初から読む

「共感しかない!」

「読んでて涙が出た」

「私だけじゃないんだと励みになりました」

「甘えじゃないと分かってくれる人がいるだけでも救われます」

など、妊娠中・出産後の多くの女性が共感した松本ぽんかんさんの作品『つわりが怖くて2人目に踏み切れない話』。読むだけでもツラさが伝わってくるような壮絶な体験をコミカルにテンポよく描き、レタスクラブコミックエッセイ新人賞に入賞した作品です。

(C)松本ぽんかん
あまりに壮絶な実体験レポートに、レタスクラブコミックエッセイ新人賞の選考会でも読み進める審査員たちから「これはツラい……」「面白いけど壮絶……」などの声が上がったほど。

SNSでも多くの妊婦さんから共感の声を集める一方で、「妊娠怖すぎる」「これ読んで絶対に妊娠したくないと思いました」などの声も上がった話題作です。この作品のあらすじをご紹介しましょう。

『つわりが怖くて2人目に踏み切れない話』あらすじ

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妊娠6週目、妊娠が判明した夜からつわりがはじまった松本さん。お腹が空っぽになると気持ち悪くなり、それを防ぐために食べるとまた吐く……の繰り返し。ちょっとした臭いに反応して気持ち悪くなってしまい、食べられるものもどんどんなくなっていき、妊娠9週目には桃6個だけで1週間をしのぐという有様。

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妊娠11週目には突然「柿の種たべたい」と深夜2時に夫に買いに行ってもらった柿の種を貪り食い、それを喉につまらせてトイレで吐くことも飲み込むこともできず死にそうな目にあいます。どうにか喉のつまりは取れたものの、憔悴のあまり「もう妊娠やめたい」と泣きながら夫にこぼします。

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ついにその憔悴ぶりを見かねた夫が、松本さんを病院に連れていきます。尿検査でも血液検査でも全く採ることができないほどの脱水症状に、松本さんは病院で点滴をうけることになります。そして「妊娠悪阻」の診断を受け、医師には入院を勧められるのでした……。

どうにかつわりの期間が終わった後、晴れて自由の身かとおもった矢先に、松本さんは坐骨神経痛を発症してしまいます。

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杖をつきながら歩く生活を余儀なくされた松本さんは、どうにかこうにか無事に出産を迎えます。苦労して産んだ一人娘を「べらぼうにかわいい」と思いつつも、またあのつわりの日々を送るのかと思うと二人目にはふみきれない……そんな心情をコミカルかつ丁寧に描いた作品です。

この作品で「レタスクラブコミックエッセイ新人賞」を受賞した松本ぽんかんさんに、お話を伺いました。

松本ぽんかんさんインタビュー

──「レタスクラブコミックエッセイ新人賞」入賞おめでとうございます。この賞に応募された理由をお聞かせください。

松本ぽんかんさん:

ありがとうございます! 応募したつわり漫画は元々SNSにしか投稿していなかったのですが、終わってみたら100ページ近くになっていて…せっかくなのでどこかに応募してみようと思ったのがきっかけです。

──この賞に入賞したときのお気持ちをお聞かせください。またご家族やご友人など、周囲の方の反応はいかがでしたか?

松本ぽんかんさん:

エッセイ作家の憧れのKADOKAWAさんと繋がれた!と思いました(笑)

ただ、周囲の反応は特に…。

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──松本ぽんかんさんが漫画を描き始めたのはいつ頃ですか? そのきっかけについても教えてください。

松本ぽんかんさん:

2022年の1月頃です。祖母の癌がきっかけでした。

私は本当におばあちゃんっ子だったので、祖母が余命宣告を受けた時に感謝の気持ちを伝えなければと思い、今まで描いたこともないのに急に漫画を描いたんです。手紙で良かったはずなんですが、なぜか漫画を(笑)

勢いで描いたのはいいんですけど自分の漫画に自信が持てなくて、恥ずかしくて、人に見せることに大変抵抗がありました。もう捨ててしまおうかと思っているところを姉に見つかり、「見せずにおばあちゃんが死んだら後悔するよ」と言われて確かにそうだなと。勇気を出して見せてみたら、おばあちゃんが泣くほど喜んでくれて。そこで漫画を描く楽しさを知りました。

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──『つわりが怖くて2人目に踏み切れない話』を描き始めたきっかけについて、作品の中にも「つらかったあの頃の思いを浄化させもう一度赤ちゃんに会いたいという気持ちを取り戻すためにこの漫画を描きました」とありましたが、詳しく教えてください。

松本ぽんかんさん:

私は3人姉弟の真ん中っ子で、特に姉とはすごく仲が良いので、ずっと子供は2人以上ほしい!と思っていたんです。けれど1人産んでみるとまぁこれがつらくてつらくて…とてもじゃないけど二度と妊娠できないなと思いました。一人っ子確定です。

しかし2、3年もすると娘のお友達に妹や弟ができて、娘が「自分もほしい」と言い出して…そこからはずっと葛藤の日々です。どうにかこのつわり怖いループから抜け出せないかと思い、この作品を描きはじめました。

──この作品を描ききったことによって、つわりや妊娠に対する心境に変化はありましたか?

松本ぽんかんさん:

描く前は「絶対無理」と言い張って第二子について考えもしなかったんですけど、考えるようになりましたね。つわりや妊娠が怖いのは今でもそうですが、「絶対ないとは言い切れない」ぐらいにはなりました。

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──今後はどんな作品に挑戦してみたいですか?

松本ぽんかんさん:

自分の病気のことを描いてみたいです。あときょうだい児の話も考えています。

──いまつわりに苦しんでいる読者の方も、同じように二人目出産を迷っている方も、このエピソードに救われる方は少なくないかと思います。読者の方にメッセージをおねがいできますか?

松本ぽんかんさん:

私自身つわりで苦しんでいる時に、他の方のつわり体験記に大変救われたので、この漫画もそういった存在になれると嬉しいです。つわりを経験されていない方には、見えないところにいる妊婦の世界を少しでも知って頂けたら本望です。書籍の書き下ろしにもつわりに対する恨み辛み嫉みをふんだんに盛り込んでいますので、是非!読んでやって下さい!!!

取材・文=レタスユキ