夫婦が互いを大切に想う気持ちを描く…あみだむくさんの『あいいろ』が話題 / 画像提供/あみだむくさん
【漫画】“手の表情と心の会話”が素晴らしい…優しさあふれる夫婦の“愛情表現”に反響

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、藍染を生業とする夫婦の深い愛情を描いた漫画『あいいろ』をピックアップ。

漫画家である、あみだむくさんによる読み切り作品を集めた『こばなしあつめ』に収録されている本作。あみだむくさん自身が2月10日にTwitterに投稿したところ、感動的なストーリー展開も相まって5,100以上の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、あみだむくさんにインタビューを行い、創作の背景やこだわりについてを語ってもらった。

口下手な夫と病弱な妻 不器用ながらも深い愛情で繋がる夫婦の心あたたまる物語

『あいいろ』より / 画像提供/あみだむくさん
紺屋に嫁いだ妻は、藍染を生業とする夫の大きな手がいつも藍色に染まっているのを見て、夫に対してもどこか冷たく静かな印象を持っていた。口数が少なく、表情も変わらない物静かな性格の夫は、妻から見ても普段から何を考えているのかわからない。さらに、元々体が弱い妻は家業を十分に手伝うことができず、“夫の支えになれていないのでは”と劣等感に駆られる不安な日々を過ごしていた。それでもなにか力になりたいと思った妻は、作業を無理に手伝おうとして体調を崩してしまう。

看病してくれる夫のそばで、これまでの弱音を吐き出す妻。夫の優しさや愛情を誰よりもわかっているはずなのに、言葉が無いと常に不安になってしまうのだった。そんな妻の姿を見て、夫は昔を回想する。藍色に冷たい印象を持っていたと明かす妻が、染め物を眺めながら「あなたの染める藍は深みがあって暖かくて、とても好き」と言ってくれた日。染め物を手にして微笑む、その美しくて優しい表情を思い出していた。しばらくして、病弱な体ゆえ難しいとわかっていながらも二人の念願だった子どもをお腹に授かった妻は、出産の日を迎え…。

交わす言葉は少なくとも互いを想い、深い愛情で繋がる夫婦の姿を、あたたかく繊細な人物描写とともに描き上げた本作。様々な画材を使用して描かれるアナログならではの優しい仕上がりも相まって、Twitter上では「互いを想う優しさや愛しさが伝わってくるような作品」「隠れて泣きました…」「手の表情と心の会話が素晴らしかった」「尊い」「最高です」「感動的」など多くのコメントが寄せられ、反響を呼んでいる。

「鉛筆画や絵の具で作ったテクスチャなど空気感も楽しんで頂けたら」作者・あみだむくさんが語る創作背景とこだわり

『あいいろ』より / 画像提供/あみだむくさん
――『あいいろ』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

あいいろを創作したのは実はもう8年以上も前になるのですが、その頃は漫画家になるために色々模索中で、プライベートでもメンタルが落ちる出来事が続いたりと正直あまり元気ではなかった思い出があります。そんな中で、こんなあたたかい話があったらいいな~、と自分の沈んだメンタルを持ち上げるためになんとなく描きだしたのが始まりです。

――藍染を生業とする無口な夫と病弱な妻、それぞれのキャラクター設定はどのように生み出されたのでしょうか。

人間関係で、言葉が足りずにうまく伝わらずすれ違うということは度々あると思うのですが、そう言った関係性で思いついたのが、無口で口下手な夫と劣等感を抱えている妻といった構図でした。

――本作では、交わす言葉は少ないながらも相手を思いやる行動やさりげない仕草で夫婦2人の愛情を表現する、繊細な描写が印象的でした。本作に込めた思いや、「ここを見てほしい」というポイントがあればお教えください。

「紺屋の手は洗っても落ちない藍色に染まっている」というのを知り、とても味があって素敵だと思い紺屋を舞台にした経緯があるので、後半、じんわりと藍色に染まる手の雰囲気などその辺りにも注目して頂けたらと思います。

――本作の中で、あみだむくさんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?理由と共にお教えください。

この作品はトーン以外はアナログの作品で、藍色の色味やあたたかな雰囲気を出せたらいいなと鉛筆画や絵の具で作ったテクスチャのページなどを挟んでいます。なので普段のマンガとは違う遊びの部分やそこから感じ取れる空気感等も楽しんで頂けたら嬉しいです。

――あみだむくさんは本作以外にも『ダダダ』、『メシアの鉄槌』(ともに白泉社)など、“大切なもの”を守るために奮闘する男性の物語を描かれていますが、その理由や創作全般においてのこだわりがあればお教えください。

何かのために信念を持って戦い、立ち向かう、打ち込む男性にとても魅力を感じるのでそれを描くのがとても好きで、それと同時に感情的な涙を流す男性を描くのも好きだったりします。そのためそれが描けそうなストーリーを描きたくなるのかもしれません。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

グルメやボクシング、SFに吸血鬼物など色々描かせて頂いておりますが、今後とも様々なジャンルで漫画を描いていけたらと思っておりますので、気に入った作品がありましたら是非お手に取って頂けたらと思います。4月28日には初のピアノ漫画、『ラプソディ・イン・レッド(1)』も発売となりますのでどうぞよろしくお願い致します!