こんにちは。YouTubeチャンネル「聞いてわかる投資本要約チャンネル」を運営している、二児の父でサラリーマン投資家のタザキ(@tazaki_youtube)と申します。

【図解】中央銀行の仕事とは

学生時代に株の魅力を知って以来、投資本好きが高じて自分の学びをYouTubeで発信したところ、想像以上の反響を呼び、3年間でチャンネル登録者が10万人を超えました。これまでに読んだ投資・マネー系の本は300冊以上。その経験から、ここでは特におすすめの書籍や、コスパの高い書籍を、経験値や投資スタイル別で紹介していきます。

今回は、市場サイクルを極め、勝率を高める投資の王道とされる哲学を提唱するハワード・マークス氏の本「市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学」(著:ハワード・マークス/日本経済新聞出版)をご紹介していきたいと思います。この本には、ウォーレン・バフェットやチャーリー・マンガー、レイ・ダリオなど、名だたる人々が絶賛しています。

市場サイクルを極める 勝率を高める王道の投資哲学
ハワード・マークス氏の別の名著「投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識」(日本経済新聞出版)は、ウォーレン・バフェットが株主総会で配るほどの有名な本で、そのサイクルに関する章の続編として同書は書かれました。

本書は18章に分けられていますが、次のような言葉があります。

「本書ではサイクルをそれぞれ独立したものとして論じるが、それは現実ではない。その相互関係は本書の簡潔さとは無縁である」

景気、企業利益、投資家心理、信用、不動産など、経済の世界には多くのサイクルが複雑に絡み合って全体が形作られています。この複雑な相互関係について詳細に論じると、簡潔に本をまとめることは無理だというのが、作者の主張です。

それ故、現実はそれぞれのサイクルが違うものだけれども、独立したもののように書かれています。

本書の流れに沿いながら、一つひとつを分解していくことで、市場サイクルを理解し、それを投資に活かすための知識を深めることができるでしょう。

景気サイクルと中央銀行の2つの役割

まずは景気サイクルについてです。

景気サイクルに大きく影響を及ぼす要素として、人口動態の変化や労働投入量の変化が挙げられます。これらは生産人口の数や生産性に関連し、労働者の意欲、教育水準、技術の進展、自動化、グローバル化など、マクロ経済の変動と連動して、景気サイクルが大きく変動します。

景気サイクルに対する政府の介入も重要な側面です。中央銀行の役割としては、景気拡大時にインフレの抑制を図り、マネーサプライを減らしたり金利を引き上げたりすることで市場を冷却するのが一つの任務です。もう一つの役割は、景気縮小時にデフレ脱却や雇用の支援を目的に、お金を増やし、金利を下げ、ビジネスを活発化させる活動を展開することです。

要するに、ほとんどの中央銀行には「インフレの抑制」と「雇用の支援」という2つの相反する目的があるのです。

不況時に雇用の支援をするためには、マネーサプライを増やす、金利を引き下げる、(近年の「量的緩和」政策で行われているように)証券を購入して経済に流動性を供給するといった景気刺激型の手段を通じて、雇用を促進します。雇用に重点的に力を注ぎ、こうした手段に頼る傾向が強い中央銀行は「ハト派」と呼ばれます。

インフレを抑制したいときは、逆のマネーサプライの減少、金利の引き上げを通じて、景気を抑え込みます。インフレの抑制に重点的に力を入れる中央銀行は「タカ派」と呼ばれます。

図1 中央銀行の仕事
現実の問題として、デフレの状況下での増税など、多岐にわたる複雑な事情が絡むことがあります。しかし、本質的には、景気サイクルへの政府の介入が存在し、このような干渉が景気の周期性を生み出します。そして、この景気サイクルは企業の利益サイクルに変動を引き起こし、投資においても大きな影響を及ぼすのです。

心理の振り子サイクル

次に、心理の振り子サイクルについて触れます。

この心理の振り子サイクルの影響力は、投資家が過去をすぐ忘れるために増大すると言われています。経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスは「金融に関する記憶が持続する時間は極端に短い」と述べました。

振り子の動きは一般に対称的であり、サイクルのあらゆる動きには「反対側」があります。すべての上昇期のあとには下降期が続く、そしてその逆もまたしかりです。心理サイクルのもう一つの特徴は、「幸せな中心点」に留まる時間がほとんどなく、穏当な範囲を通る時間も短いことです。市場の流れに乗ることを拒否していた者も、あっという間に降伏して便乗しようとしてしまうのです。

以下の図では振り子が行ったり来たりする様子を描写しています。ポイントは、恐怖と強欲が行ったり来たりする中で、その中心点にいる時間が非常に短いということです。

一般社会では、物事はたいてい「すばらしい」状態と「それほどでもない」状態の間を行き来します。ところが投資の世界では、投資家の認識が「非の打ちどころのない」状態と「絶望的な」状態という極端な状態で揺れ動くということです。

図2 幸せな中心点は一瞬
例えば、1970年から2017年の47年間におけるS&P500の年間騰落率を考えると、1年間でプラス37%になることもあれば、マイナス37%になることもあります。これを考えてみると、企業の全体の利益が3割も増えたり減ったりするわけはありません。

つまり企業の業績の実態以上に株価は大きな比率で動いているということですね。

そして、その株価を動かすのは人間の心です。

「もっと高くてもいいから、今のうちに買っておきたい」

「損失確定になったとしても、とにかく今は手放したい」

そのような心理状態になれば、“価格がいくらであろうと“買いたい人や売りたい人が現れるため、暴騰や暴落を引き起こします。

この47年間のうちで、中心的なリターンが8%から12%の間に収まったのはわずか3年しかないということでした。47年もあるのに、その他の44年間はどちらかに偏りすぎているのです。

人々のリスク許容度の変化

もう一つの重要な心理の概念として「リスク姿勢のサイクル」があります。人々にはリスク許容度が高い人とリスク許容度が低い人がいますが、同書で示されているのは、市場サイクルの位置によって、同じ人であってもリスク許容度が変わるということです。

具体的には、好況のときほど人々のリスク許容度は高くなり、リスクに対して無頓着になってしまうことが多いのです。したがって不況時よりも好況時に、より分別に欠ける投資が行われることは驚くに値しません(リーマンショック前夜の不動産バブルの際、住宅ローンの審査はあってないようなものでした)。

しかし実際は、市場サイクルの頂点に近い時期というのは、潜在リターンが発生する可能性が非常に低いのです。つまり、勝つ可能性が低いときにこそ、人々はリスクに無頓着になり、リスク許容度を高めてしまいます。

逆に、サイクルの底に近いときほど、最近の下落を経験している人々はリスク許容度が非常に低くなり、リスクを回避したくなってしまうということです。

先ほどとは逆に、その時点でリスクはほとんど低く、マイナスになる発生頻度はかなり低いのです。プラスになる可能性の方が高いときほど、人々は相場から離れたくなり、リスクを回避したくなる傾向があります。本当はこの時期に勝つためにリスクを取るべきなのですが、リスクを取る能力が失われてしまっているのです。

ここでも、サイクルのあらゆる動きには「反対側」があり、すべての上昇期のあとには下降期が続くのであり、その逆もまたしかりであるということを、思い出さなければなりません。

信用サイクル

信用サイクルは、多くのサイクルの中でも特に大きな影響を及ぼすものとされています。このサイクルは非常に皮肉な性質を持っています。

好況時には、銀行やその他の金融機関が積極的に顧客に接近し、リスクへの懸念が減少するとともに、金利の引き下げ競争が始まります。

さらに、好況時には本来融資に値しない相手にまでお金を貸してしまうことがあります。このような行動が積み重なると、デフォルトが一定数発生し、その結果として不況に突入することとなります。

不況が始まると、金融機関の貸し付け意欲が低下します。企業にとっては、不況時にこそ融資を受けたいところですが、リスクを恐れる金融機関は高い金利でしか貸すことができなくなります。企業は借り換えをしながら運営していることが一般的なため、借り換えができないと倒産するケースも出てきます。

投資の視点から言うと、不況期には掘り出し物の銘柄が現れることがあります。逆に、好況期にはハイリスクで潜在リターンが低くなるという現象が観察されるのです。

さまざまなサイクルについて検討してきましたが、その中で逆張りの戦略が重要であることが明らかになりました。

好況時、人々が極度に強気になり、銀行が積極的に金融供給する際、景気と株価が頂点に達し、リスクが高まることが多いです。このような時期には、潜在的なリターンがほとんど見込めないという事実があります。これらの要素は密接に関連しており、強気から弱気への転換には3段階が存在します。

弱気相場の3段階

1. 思慮深い一握りの投資家が、強気相場の中にあってもそれがずっと続くとは限らないと認識する。

2. 多くの投資家が、状況が悪化していることに気づく。

3. 最後にすべての人が、状況が悪化の一途をたどると思いこむ。

強気相場の3段階

1. 並外れて洞察力に富んだ一握りの人が、状況がよくなると考える。

2. 多くの投資家が、市況がよくなり始めていることに気づく。

3. 最後にすべての人が、状況がよくなり続けると思いこむ。

結果として、先見の明を持つ人々は割安な資産を手に入れることができ、一方、大衆は高値で購入して損失を被ることが多いです。

本書では、上昇が永続すると人々が信じ始めたときが危険であると指摘しています。大衆が買おうと高揚しているときに売る、あるいは売ろうとしているときに買う勇気が必要です。しかし、その逆張りによって最大の利益を得ることができます。

この本は非常に深く、一見難しそうに感じるかもしれませんが、世界の投資家たちが大絶賛する普遍的な内容を持っています。興味を持たれた方は、ぜひ読んでみてください。