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大島てるは声がいい「それって!?実際どうなの課」/テレビお久しぶり#17

7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は、「全力!脱力タイムズ」(毎週金曜夜11:00-11:40、フジテレビ系)をチョイス。

何かに踊らされる側の人間の色気「全力!脱力タイムズ」

今回は、なんてことはない、「全力!脱力タイムズ」という番組が大変面白かったというお話をさせていただきたい。私はこの番組を初めて見たので新鮮に楽しむことができたけども、私なぞが今さら脱力タイムズの魅力についてあれこれ語ることもないのだし、そもそもこういった、報道バラエティを装ったコント番組、というメタ的な構造を持った番組について、さらに手前から何かを語るのはちょっとやりづらく、我ながら書きづらい番組を選択してしまったと思うのだけども、全体的な面白さとは別に、一点感動したポイントがあったので、それを記させていただきたい。

今回のメインテーマは、自分の隠れた才能。出演者たちがそれぞれ自分の隠れた才能をスタジオで披露していく中で、事前に違う台本を渡されている”芸人ゲスト”のダイアン津田は予想だにしない状況に翻弄されるばかり。そして何もわからぬまま順番は津田のもとに回ってきて、あるVTRが流れる。写っていたのは津田の8歳の娘・ここのちゃんで、父親の隠れた才能(=長所)をカメラに向かって健気に伝えてくれる。そしてスタジオでは、フリップにここのちゃん直筆で書かれた津田の長所の箇条書きが用意されており、ゲスト俳優・白洲迅の一声によって、ここに書かれている長所を津田が全部やろう、という流れになっていく。脈絡がなさ過ぎて、脱力タイムズの展開を文章で説明するのは難しい。勘弁してほしい。

その中で、ここのちゃんの書いた「大喜利がうまい」という津田の長所を確かめるべく、白洲迅と大喜利対決に挑む一幕がある。「こんなコンビニは嫌だ!どんなコンビニ?」という単純も単純なお題に対し、すでに台本を用意されている白洲はフリップを利用して主演ドラマの告知を行うのだが、1から考えている津田が「ハイ」と手を挙げたところで照明がつき、コーナーが終了してしまう。「書いたやん!書いたやん…」とキレたあと呆れかえる津田が乱暴にカメラに見せたフリップには「8イレブン」と書かれていて、それがマジで果てしなく面白かった。ハイと手を挙げたところで強制的に終わらされる理不尽な大喜利に対し、断末魔として残されるボケの中で、「8イレブン」以上に完璧なものがあるだろうか。無い。津田の字体も良い。明らかに”踊らされる側”の字体をしている。全編にわたって”踊らされる側”としての役割をまっとうした津田にリスペクトを捧げたい。もしヒッチコックが、津田を主演に巻き込まれサスペンスを撮ったらどうなっていただろうか…。

音に合わせて津田が困り顔を3回やるというワケの分からない一幕も爆笑させてもらった。なにかに踊らされ続ける人間には、なにがしかの色気がある。たまには人生、なにかに踊らされてみるのも悪くはないのかもしれない。