【写真】「万協フィギュア博物館」内にある松浦社長のお気に入りフィギュア
館内にあるフィギュアは、「ウルトラマン」や「仮面ライダー」、「ゴジラ」といった特撮シリーズから、「ドラゴンボール」「ワンピース」などの大人気漫画作品のものまで多種多様なラインナップとなっている。フィギュア好きにとっては夢のような施設だが、なぜスキンケア製品を作る会社の敷地内にあるのだろうか。
今回は、万協製薬株式会社(以下、万協製薬)代表取締役社長の松浦信男さんに、「万協フィギュア博物館」(以下、フィギュア博物館)の誕生秘話や運営するうえでのこだわり、そして来館者の特色について聞いた。

趣味で保有していたフィギュアが、思わぬ形で話題に!
万協製薬は、もとは1960年に兵庫県神戸市で創業した製薬会社だったが、1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で本社と工場が倒壊。その後、製薬会社の誘致に積極的だった三重県で物件を見つけ、1996年に三重県多気郡多気町(以下、多気町)に移転した。では、ここからどのような経緯でフィギュア博物館の設立に至ったのだろうか。「昔から趣味でフィギュアを集めていましたが、震災からしばらくは集めることに注力できなかった時期がありました。しかし、年月が経つにつれて心に余裕が出てきたのか、再びコレクションを始めまして。最初は自宅の倉庫に保管していたのですが、次第に収まりきらなくなってきたんです。そこで、本社工場の一角が空いていましたので、そこに収納することにしました」



フィギュアは毎年約1000体以上増加!一方で管理上の課題も
テレビをはじめとしたメディアへの露出によって、フィギュア博物館の認知度は上昇。今では博物館のファンからフィギュアが寄贈されることもあるそうだ。なかには展示品の購入希望者もいて、松浦さんは「買取専門なのでお断りしていますが、博物館に魅力を感じてくれているのはとてもうれしいですね」と話す。「寄贈なども合わせて、年間で約1000体以上増えています。また、私は書籍を発売して全国各地で講演会を行っているのですが、いつもその土地のショップにしかないフィギュアを購入して回っています。ちなみに、出発の前日にはその土地にどんな店があるかを徹底的にリサーチしています(笑)」

※うち、等身大フィギュアは200体以上。
「来館者さまの満足度を高めるため、2023年には照明をLEDにしてフィギュアがしっかりと見えるようにしたり、写真で撮影しても光が反射しないように、あえてショーケースに入れないといった工夫を施しています。しかしながら、管理者は私1人なのでマンパワーが足りず、管理が行き届いていない箇所もあります。ただ、どのフィギュアも私にとって大切なものですので、自分の手で管理するのが楽しみでもあるんです」

国内外問わずフィギュア好きが夢中になる場所に
フィギュア博物館にはとにかく熱心なフィギュア好きが集まり、国内だけでなくアジアを中心とした海外からの観光客も訪れるのだとか。2023年現在は1日20〜30人の人が来館するそうだが、株式会社ドワンゴが主催した地域参加型のイベント『ニコニコ超会議 2018』に多気町が参加した際には、1日で約5000人が来館した。「三重県には『伊勢神宮』や『松阪牛』といった名所や名物があるのに、博物館に来るためだけにわざわざ遠方からご来館くださる方がたくさんいます。また、家族連れの方も多くお越しいただいていますね。理由はわかりませんが、もしかすると、どの世代でも魅力的に感じていただけるジャンルのものを展示しているので、親子で一緒に楽しめるのかもしれません」

「自分の欲望だけに時間を消費しても、もったいないなと思うんです。だったら、出会った人たちとの縁を大切にして、みんなが幸せになることを実行したいんですよ。そのうちの1つがフィギュア博物館の設立でした。なので、『こんなにもいろんなフィギュアが見れて幸せです!』といったお声をいただくたびに、本当に運営しててよかったなと思います」


目標は“廃校を再利用した「フィギュアミュージアム」の建設”!
製薬業界の性質上、顧客と直接対話する機会は少ないそうだが、フィギュア博物館の運営を通して多くの人々と接することができるという。松浦さんは、「設立当初から計画していたわけではありませんでしたが、結果的に万協製薬を知っていただけるいい形になっていますね」と話す。今や国内外から多くの人が集まるフィギュア博物館だが、今後の展開についてはどのように考えているのだろうか。
「目下の目標として、多気町にある廃校を有効活用した『フィギュアミュージアム』の建設を画策しています。ただ、店番の配置やフィギュアの管理だったりと運営上の課題があるので、最適な形を模索している最中です。あと、何より『フィギュアたちを自分の手元に置いておきたい』という気持ちもあるんですよね。ジレンマです(笑)」


取材・文=西脇章太(にげば企画)
※新型コロナウイルス感染対策の実施については個人・事業者の判断が基本となります。