若林(高橋海人)は年末の「M-1」優勝に向けて予定を立てるが… / (C)日テレ
【写真】「M-1グランプリ」で準優勝した南海キャンディーズの山里(森本慎太郎)としずちゃん(富田望生)

ユニットコンビ「たりないふたり」として数々の漫才を生み出した、オードリーの若林正恭と南海キャンディーズの山里亮太の半生を基にしたドラマ「だが、情熱はある」(毎週日曜夜10:30-11:25、日本テレビ系)。5月21日放送の第7話で、山里(森本慎太郎)は南海キャンディーズとして「M-1グランプリ」で準優勝。片や、若林(高橋海人)と春日(戸塚純貴)のオードリーは2回戦落ち…。ツラすぎてもうやめたいのに自分からはやめられない、若林の苦悩が爆発した。(以下、ネタバレを含みます)

若林、明日の予定は「春日に説教」

このドラマは、若林と山里の半生を基にした、“ほぼ実話”の青春サバイバルストーリー。“極度に人見知りな超ひねくれ男”(若林)と、“妬み嫉みの固まり男”(山里)、そんなたりない2人の友情物語でもないし成功物語でもないが、もがきながらも“情熱はある”人生を描いていく。

2004年4月。若林は、テレビで、若い社長が成功の秘訣として「目標を立てたらスケジュール帳に書き、またそれに向かう予定を立てる」と語っているのを見て、感銘を受ける。ネタを書くはずだったノートは予定帳になり、若林は毎日の予定を書き込んでいった。そして、「まず明日が大事」と、明日の所に「春日に説教する」と書いた。

翌日、若林は、ネタを書いている自分の横で脳天気に「美味しんぼ」を転がりながら読んでいる春日に向かって“予定通り”説教を始めた。そんな若林に「また何か始めてるねぇ。自己啓発か何かですか?」と、お見通しな発言をする春日。さすが付き合いが長いだけある。

若林の書いた予定帳を「今日は私に説教する日なんですねー」などと言いながら、宿題を確認する先生のように眺める春日。若林はさっきまでの説教モードはどこへやら、「コレ始めたら、予定埋まってる気がして何かいいんだよな」と話しかける。12月の予定を見た春日は、「で、今年の『M-1』で優勝する。と」と他人事のように言うのだった…。

予定帳には、月に数回の芸人としての仕事の他は、当然「作戦会議」「ネタ作り」など、「M-1」に向けた予定もあったが、毎日が休みみたいなものなのに「休む」とか、「練乳をかける」「ブランコに乗る」など、本気で「M-1」出る気あるのか?と言いたくなるような“予定”がいくつも書かれていた。そして、あっと言う間に9月になり、「M-1」エントリーの時期が来た。

“ナイスミドル”、2回戦で敗退…

「M-1グランプリ2004」の予選が始まり、若林と春日の“ナイスミドル”は1回戦を通過した。そして2回戦。舞台袖で「(3回戦に)行ける、行ける。だって、社長が言ってた。目標立てて、スケジュール立てれば絶対成功する、って」と、緊張している自分たちを奮い立たせて挑んだ結果は……敗退。ただスケジュール立てただけで成功するなら、世の中全員成功者だ。若林は、やってる“気がしてただけ”だ。

落胆しながら、アルバイトの喫茶店の店先で弁当を売っていた若林は、TV局に取材される。それは芸人としてではなく、鳥の木箱のようなブースに入っている姿が珍しく、「『木箱』のお弁当屋さん」としてだった。「10月までにTVに出る」という目標は成し遂げられたが、こんなカタチで出るのは違う。悔しくて情けなくて、やり場のない苛立ちと怒りがこみあげる。OAを見てはしゃぐ祖母の声を聞きながら、若林は、スケジュールのノートを床に叩きつけた。

「M-1グランプリ2004」で、”ナイスミドル”は2回戦敗退、”南海キャンディーズ”は準優勝 / (C)日テレ

若林、“南海キャンディーズ”に衝撃を受ける

そして、「M-1」決勝当日。春日と共に生放送を観ていた若林は、“南海キャンディーズ”という男女コンビに「このコンビ、優勝しなくても勝ちだよ」と衝撃を受ける。準優勝した“南海キャンディーズ”に、「2位でも売れるね!」と上から目線で拍手を贈る春日。それに対し、「バカじゃねーの」とボソッと吐き捨てた若林。「オレら、こんなトコ行けるワケねーじゃん。何が“『M-1グランプリ』で優勝”だよ」と、実は何もしてなかった自分に怒りをぶつけた。

そして春日に、「オマエ、芸人やめたい。って思わねーの?こんな状況でも楽しいって思えるの?」と尋ねる若林。春日は、少し考えて「まぁ楽しいですからねぇ…何と言ったらいいか…」と返答に困る様子を見せる。そんな春日に若林が「オレと芸人やってくれる?」ときくと、「まかせます」と返ってきた。「オレが、やめたい。って言ったら?」ときいても、「まかせますよ」と答える春日。

常にツラい若林、常に楽しい春日

続けるのも、やめるのもしんどくて、「オマエが、やめたい。って言ってくれたら、やめれんだけどなー」と繰り返す若林に「やめたいんですか?」と逆に尋ね、「やろうって言ったのは若じゃない」と言う春日。この一言が若林を爆発させた。「やめるのもオレが決めなきゃいけねーのかよ!」。若林は今のもがき苦しむ状況から、もう解放されたいのだ。でも、自分からやめる勇気が無く、誰かに引導を渡してもらいたいのだ。だが春日は、「アタシャ、楽しいからね…」と、相変わらず「楽しい」と言うばかり…。

「何で楽しいんだよ?何でツラいのもやめるのも続けるのもオレなんだよ!“ボクはまだ頑張れたんですけど、相方が限界なので解散します”って言わせてくれよっ!!」と叫ぶ若林。しかし、春日は「ワタシは…まかせる。としか…」と、人まかせな姿勢を崩さず、堂々巡りで終わりが見えないやりとりに、若林は様々な感情が大渋滞して頭がおかしくなりそうだった。

1人で苦しみを背負っている若林が見ていてツラい。「20年後に、東京ドームで漫才をする事になるよ」と教えて、ラクにしてやりたい。だが、絶対信じないだろう。“オードリー”と改名した彼らが、「夢見るにもほどがある」と思っていた「M-1」決勝に敗者復活し、準優勝を遂げるのは2008年。あと4年の辛抱だ。

◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部

※高橋海人の「高」は、正しくは「はしご高」