「我が家の愛犬ユキが一番大好きだったのは、たくさんの愛情を注いでくれた息子でした。いよいよユキの死期が近づいたとき、実家に戻ってきた息子に昔と変わらぬ甘えん坊で元気な姿を見せたのは、ユキなりの気遣いだったのでしょうか...。あの健気な姿を思い出すたびに、涙がこぼれます」
親や夫、子ども、友人に職場の同僚、ご近所さん...。アラフィフ女性を中心に、みなさんから寄せられた人間関係の「モヤモヤ」「スカッと」「泣ける」実体験エピソードを、過去の人気記事をもとにして漫画で再構成しました。この時、あなたならどうしますか?
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四六時中ユキのことをかまっていて、散歩につれていくのも、餌をやるのも、ノミ取りをするのも息子でした。
ユキも息子にはよく懐いていて、他の家族が散歩に連れて行こうとすると、嫌そうについてくる有様。
息子が大学に入って家を離れた6年前まで、犬の世話はもっぱら息子の役割だったのです。
「はるたか(息子)がいれば少しは元気になるかもな」
なんて妻と話していましたが、そのとおりだったわけです。
息子が職場に戻るまでの3日間、ユキは元気いっぱいに過ごしていました。
三が日が終わり、息子が車に荷物を積み込んでいるのを不安そうに見つめていたユキ。
いよいよ出発するとき、ユキは息子の膝に体を擦り寄せ、息子も名残惜しそうにユキの頭をなでていました。
息子の車がすっかり見えなくなっても、ユキはその行方を見つめて座っていたのです。
その次の日の朝は雪でした。
「うわあ、寒いと思ったら...」
そう言いながらユキの小屋の方を見ると、小屋の中にユキの姿がありません。
「え? まさか鎖が外れたとか...」
そういぶかしみながら、雪の中に踏み出すと、雪がうず高くなっているところを見つけました。
「まさか」と思いながら雪を払うと、そこには冷たくなったユキの姿が...。
あわてて妻を呼び、すっかり固くなったユキの体を毛布に包んで玄関に横たえました。
「あんなに元気にしていたのに...」
妻は信じられないという面持ちでユキの体をなでていました。
ユキは、大好きな息子に弱った姿を見せたくなかったのかもしれません。
最後の力を振り絞っての空元気だったのかと思うと、涙がこぼれました。



漫画:なみき/原案:「毎日が発見ネット」みなさんの体験記