磯村勇斗 / ※2023年ザテレビジョン撮影
【写真】“赤髪”の不良を好演!役によって印象もガラリな磯村勇斗

俳優・磯村勇斗。2023年は、ドラマや映画のキャスト欄で、この名前を見ることが一段と多い。5月19日には岡田准一主演映画「最後まで行く」が公開され、26日(金)に荻上直子監督映画「波紋」、そして6月2日(金)に生田斗真主演「渇水」の公開が控える。また放送中のドラマ「ケイジとケンジ、時々ハンジ。」(テレビ朝日系)にも出演中で、いずれも主要キャストの1人だ。その躍進を支えるものとは。(以下、一部出演作のネタバレを含みます)

中学生の時に俳優を志す

1992年9月11日生まれ、静岡県沼津市出身の磯村。4月に出演したトーク番組「徹子の部屋」(テレビ朝日系)で、俳優の道を志したきっかけを語っていた。それは、中学生の時に校内イベントで自主制作した映画。上映後に拍手を浴び、「この世界に入りたい」と思ったという。

また、高校生になって入った地元の劇団で、年配の先輩俳優たちに演技の基礎を教えてもらった。

その後、進学のために上京。大学中退してオーディションを受けるも落ちる日々だった。そこであらためて芝居を学ぶために小劇場の作品に出演している中で、今の所属事務所から声がかかった。

2014年にドラマデビューした翌年、「仮面ライダーゴースト」の仮面ライダーネクロムに変身する青年・アラン役で注目されることに。

ライダー俳優から朝ドラ出演へ

そして、より幅広い層に認知されることになったのが、2017年放送の連続テレビ小説「ひよっこ」(NHK総合)の出演だ。有村架純演じるヒロイン・谷田部みね子が働く洋食店のコック見習いで、後に結婚するヒデこと前田秀俊に扮(ふん)した。責任感が強くて誠実という“THE好青年”な雰囲気で、みね子だけでなく視聴者もとりこにした。

ところがその翌年、視聴者は驚かされることになる。賀来賢人主演ドラマ「今日から俺は!!」(日本テレビ系)で主人公と敵対する不良にして、“悪の巣窟”と恐れられる高校のナンバー2である相良猛を演じた。卑劣で、何をしでかすか分からないイカれた奴という役どころで、眉毛を脱色し、いかつい風貌に。しかし、それが見事にハマっていて、好青年のヒデからの振り幅にうなった。

魅了される磯村の“ワル”の演技

磯村が演じる“ワル”には、どこか引き付けられる。「今日から俺は!!」での卑劣ぶりには、ほれぼれする魅力を感じた。同時期の月9ドラマ「スーツ/SUITS」(フジテレビ系)にも主人公の親友であり悪友の役で出演していたが、ここではまた違う“ワル”。あくどいやり方で金を稼ぐ方法を考え出す天才で、トラブルメーカーだが、親友と妹思いの一面をのぞかせる複雑なキャラクターを表情の演技で丁寧に見せ、それにグッとくるものがあった。

2021年のドラマ「珈琲いかがでしょう」(テレビ東京系)でも主人公の過去に深く関わる謎の男という、チンピラ風の見た目のワルい匂いがする役や、現在続編が公開中の映画「東京リベンジャーズ」での“闇落ち”する不良も話題に。

その“ワル”の演技は、2021年に公開された綾野剛主演映画「ヤクザと家族 The Family」で高い評価を得る。同作でヤクザの組員だった父を抗争で亡くし、その組の一員である主人公を慕う危うさを秘めた青年を演じ、第45回日本アカデミー賞の新人俳優賞を受賞した。

だが、実はその新人俳優賞は、もう1作品の演技も認められてのことだった。人気漫画を原作にした2019年のドラマ「きのう何食べた?」(テレビ東京系/ディズニープラスほかで配信中)の続編となる、劇場版「きのう何食べた?」だ。磯村の役は、同性の主人公カップルの友人で山本耕史演じる小日向の恋人である、“ジルベール”こと井上航。

ボサボサ頭に無精ひげ、憎まれ口をたたくも憎めないキュートなキャラクターを、原作ファンも納得の仕上がりにした。ドラマ初登場時には、“ジルベール”がトレンド入りしたほどだ。なお、ドラマ「きのう何食べた?」はSeason2が2023年10月からスタートすることが発表に。磯村のジルベールも登場することが決定しており、再び会えるのが楽しみだ。

磯村勇斗 / ※2023年ザテレビジョン撮影

作品ごとに変幻自在に役になりきる力

2作品でまったく異なる役柄ながら、存在感を放ち、アカデミー賞新人俳優賞を受賞した磯村。好青年、ワル、キュートなキャラの他にも、ドラマ「恋する母たち」(2020年、TBS系)で見せた年上の既婚女性を翻弄(ほんろう)する優秀な会社員や、初主演映画「ビリーバーズ」(2022年)での純粋な信仰心と抑えきれない欲望に揺れ動く男など、さまざまな役に挑戦を続ける。

かわいさ、危うさ、色気など、どれだけたくさんの引き出しがあるのか。変幻自在な“カメレオン”俳優と称されてもいるが、その作品の世界に存在するキャラクターに見事に染まり切る。中学生で抱いた夢に一途に向かう集中力に、懸命に磨いてきた演技力が実り、今のエンタメ界には欠かせない俳優となった。現在の出演作が相次ぐ活躍ぶりがその証だ。

当メディアによる「ビリーバーズ」での取材の際に、出演する作品選びについて「僕は脚本がすべてだと思っているので、読んでみて“どれだけ自分に刺さるか”“どのぐらい刺激をもらえるか”“自分の感覚と似た要素が入っているか”といったことを考えてから決めることが多いです」と語っていた磯村。

次にどんな役で見る者にも刺激を与えてくれるのか。彼が出ているならと、作品を見たくなる俳優の一人だ。

◆文=ザテレビジョンドラマ部