福島中央テレビの情報番組「ゴジてれ Chu!」で、毎週火曜日に放送されている人気ミニコーナー「にゃん旅鉄道」。「ねこが働く駅」として知られる福島県の会津鉄道・芦ノ牧温泉駅を舞台に、働くねこたちの様子を紹介している。約1分間の短いコーナーながらTVerでは、この4年間で総再生数170万回を突破し、なんと映画も公開された。

【漫画】本編を読む

「にゃん旅鉄道~さくらの物語~」は、そんな「にゃん旅鉄道」をモチーフにした創作漫画。妹ねこの「さくら」を主人公に、働くねこたちの日常はもちろん、芦ノ牧温泉駅にやって来る人々との実話をもとにしたエピソードや四季折々の風景を、イラストレーターで漫画家のゆきよみさん(@yukiyomi333)が丁寧に描く。

今回は、駅長を務める兄「らぶ」の帽子をうらやましそうに眺めるさくら。「さくらだってちゃんとお仕事できるのになんでまだ『見習い』にゃの?」と不満に思いつつも、駅を訪れるお客さんよりチョウに夢中になって…。

兄妹の個性を感じる本作について、ゆきよみさんにキャラクターの深掘りの方法やお気に入りのコマなどを聞いてみた。

兄や妹がいる人は特に共感⁉

兄と妹の個性が際立つ今回の漫画。テーマや工夫した点を教えてもらった。

「テーマは『早くお兄ちゃんに追いつきたいさくら』です。ご兄弟のいる方は、共感していただける場面もあるかもしれません。工夫した点は、雪深い会津の冬が終わり春が来た喜びを、読者の方に感じていただきたくて。どのように表現しようかな?と考えて、『春の生き物や匂いに誘われて、おサボりしてしまうさくら』を描きました。春と遊ぶ気持ちよさそうなさくらの表情にも、注目いただけると嬉しいです」

今回特にお気に入りのコマを聞いてみると、さくらの兄・らぶの深い優しさを感じる場面を挙げてくれた。

「さくらが仕事をおサボりしているところに、らぶがたんぽぽの綿毛を飛ばす場面です。怒ることも注意することもしない、優しいらぶの『お兄ちゃんらしさ』を感じていただければ嬉しいです」

実の兄妹であっても、性格が全く違うらぶとさくら。漫画を描くにあたって個々のキャラクターは、どのように深掘りしているのだろう。

「基本的な性格は、芦ノ牧温泉駅の駅員さんたちからお聞きしたことをもとに決めていますが、お話を作る段階でもう少しキャラクターを深堀りして考えています。例えば、『こんな時らぶなら何て言うかな?』『さくらはどんな仕草をするのかな?』などです。ただ、目を閉じて横にならないと考えが浮かばないタイプで。人に見られたら『おサボりしているな』と思われる光景だと思います。今回のさくらみたいですね(笑)。また、実際に出会った人物に置き換えて考えることもあります。特にらぶは、学生時代に『みんなのお兄ちゃん』的な先輩がいて、その方だったらと、イメージすることもあるんです」

兄と妹のやり取りが微笑ましいと同時に、実際に妹を持つ身としてはさくらの「妹感」がすごくリアルだと感じた筆者。実はゆきよみさん自身の体験も反映されているという。

「私は末っ子で兄がいるのですが、特にさくらについては自然と反映しているかもしれません。小さい頃って、兄の方が自分よりも先にいろいろなことが出来てしまう。自転車も、鉄棒も。小さい頃の1~2歳の年齢差はすごく大きいので仕方がないのですが、『何でお兄ちゃんばっかり出来るんだろう?』って思ってしまうんです。末っ子あるあるでしょうか。小さい頃のそんな記憶が今回のお話のさくらに繋がって、『さくらだってちゃんとお仕事できるのになんでまだ「見習い」にゃの?』というセリフになったように思います」

まだまだ小さくて遊び盛りのさくら。駅長として立派に働く兄の姿を見て、何を思いどう成長していくのだろう。さくらのこれからや会津鉄道・芦ノ牧温泉駅の美しい風景を、今後も楽しみにしてほしい。

取材・文=石川知京