ドラマスペシャル「ペルソナの密告 3つの顔をもつ容疑者」に出演する竹内涼真にインタビューを実施した / (C)テレビ東京
【写真】竹内涼真、膝を抱え上目遣いで視線を送る

3月24日(金)に、沢村一樹主演のドラマスペシャル「ペルソナの密告 3つの顔をもつ容疑者」(夜8:00-9:48、テレビ東京系)が放送される。同作は、過去にある事件で妻を殺害された元刑事・獅子舞亘(沢村)が「連続誘拐事件」の真相に迫るヒューマンサスペンス。

WEBザテレビジョンでは、獅子舞が連続誘拐事件の容疑者として取り調べに挑む、いくつもの人格をもつ解離性同一性障害(DID)の青年・元村周太役の竹内涼真にインタビューを実施し、DIDへの向き合い方や役作り、共演者の印象などについて聞いた。

一カ月半をかけ、綿密に重ねた準備

――台本を読んだ率直な感想と、面白いと感じた点をお聞かせください。

元村の人格がチェンジする瞬間は面白いと思います。もちろんDIDという一つの症例に基づいて今回の物語の展開があるわけですが、“DIDの人を演じる”という感覚とはまた違いました。

僕の役は、幼少期に満足のいく愛情を受けられなかったことで、そういった自分に足りないものや満たされていないものを一生懸命もがきながら埋めようとするんです。だから、見てくださる方も人間ドラマとして感情移入していただけるんじゃないかなと思います。

交代人格が登場するサスペンスというと、自分の知らないところで犯罪が起きていたりとか、他人を痛めつけていたりと事件性に重きを置かれることが多いと思いますが、今回は“良いこと悪いこと”という区別ではなくて、全ての人格が自分を守るため、自分の愛情を勝ち取るために生きている姿をフィーチャーしているんです。そこはやはり今までにはなかった描き方なのかなと思います。

――解離性同一性障害(DID)を抱える青年という難役を演じるにあたって準備されたことがあれば教えてください。

一カ月半くらい準備期間があったので、監督やスタッフの皆さんが用意してくださったDIDの資料を読んだり、DIDの子供たちと触れ合う機会があって、そこでたくさんのヒントを得ました。あとは、交代人格にチェンジする姿を自分でビデオを撮って見返したりと、いろいろと試行錯誤しました。

――かなり苦労されたのではないでしょうか?

役の目的を明確にすることで、台本に書いてある交代人格とその交代人格たちをどういうふうにこの物語上で展開していったらいいかということがおのずと見えてきた気がします。だから、交代人格を作る準備が大変だったというよりも、すごく複雑な内容なので、台本を読み解くのに一番時間がかかりました。

こだわり抜いたのは、人格が変わる瞬間の“目”

――監督からリクエストされたことで印象に残っていることはありますか?

交代人格のキャラクターに関しては、事前に一つ一つ、監督やプロデューサーの皆さんからイメージ資料をいただいて、その情報を基に僕の役作りの中に取り入れました。

あとは、主人格からそれぞれの人格に変わる瞬間の“目”を撮っていきたいと言ってくださったので、そこは現場で監督と相談しながら意識して取り組みました。

――それは具体的にどのような変化でしょうか?

出来上がったものを見た方は、「鋭くなった」とか「優しくなった」という表現をするかもしれません。でも、僕の中ではそういう意識はしていないんです。

例えば、主人格がパッと切り替わった時に、いきなり交代人格が話し出すわけではなくて、その変わったタイミングの余韻が欲しいということだと思うんです。

多分それが見た方からすると、「あっ今変わったんだな」という間になると思うんです。そういう間を色とりどりに撮っていきたいということだったので、そこには一生懸命応えました。

――交代人格それぞれのキャラクターの特徴と、演じる上でこだわった部分をそれぞれ教えてください。

カブトは、人見知りでちょっと内向的なのですが、すごく頭が良くて、一瞬で数を暗記できたりと、数学に関して天才的な知能があります。自分が長けているものと少し不足している部分の落差が激しいです。

“勉強や自分ができること、すごいことをしたら褒めてもらえる”というのが原動力になっているのかなと。カブトは愛情を追い求めるために出てきた人格なんじゃないのかなと思います。

すごく愛情に飢えていて、褒められようと必死になって頑張る。そういう部分を自分の中にある感情から、「こういうことなのかな」とひもづけて演じました。

特に沢村さんが演じる獅子舞には、どうにかこうにか褒められようと、すごく忖度(そんたく)するんですね。彼から愛情をもらうために、他の刑事とは全く別の扱いをするので、ちょっと媚びているように見えるかもしれません。

どうしたら彼が振り向いてくれるかということを、沢村さんとのお芝居の中で見つけていきました。そこでの一生懸命さというのはすごく愛らしかったですし、カブトの臆病な部分や良くない部分も出せるように意識しました。

バクは、相手に自分の意見を認めさせたり、支配下に置きたかったり、自分が正しいと思わせたいときに出てくる人格なのですが、自分が否定され続けた分、相手の事も否定する性質を持っています。

でも、演じ方として一概に声を大きくするとか、そういうことではなかったように思います。確かに、バクの時に何か否定されたりするとすごくテンションが上がるし、「俺を否定してんじゃねぇ」って怒ると思います。

身振りや声のボリュームも大きかったり、ちょっと口調が荒かったり、畳み掛けて相手を言い負かしたり、そういうのはバクの性質として元々あるのですが、それらはいずれも相手からのリアクションありきで演じました。

主人格の元村周太は、幼少期から自分の感情を押し殺して生きてきたので、すごく精神的に弱いですし、塞ぎ込んでしまいます。僕はそれぞれの人格は、彼の弱さから生まれてくるものだと思っています。

それぞれの交代人格は自分がやりたいことや目的がはっきりしているので、違った道筋を歩いてはいるのですが、最後は同じゴールに向かっていきます。

僕が演じる交代人格は、自分からチェンジを誘発することはほとんどなくて、外部からのリアクションを受けて変わります。要は、その交代人格が、ピンチになったり、何か助けを求めた時にチェンジするので、その人格が何をしたらいいのかということが、おのずと見えてくるんですね。そうすると、その役のテンションがだんだんと作られていきます。

――演じていて楽しかった、もしくは手応えがあったのはどの人格ですか?

カブトですかね。獅子舞と接する時間が多い分、その2人で演じた、そこでしか生まれないものがたくさん出てきて、一番厚みがあるかもしれません。

沢村一樹は「あらゆる球を大きな懐で受け止めてくれる」

――共演の沢村一樹さんの印象をお聞かせください。

それぞれの人格で沢村さん演じる獅子舞に向き合うため、僕からあらゆる球を投げさせていただいたのですが、沢村さんが本当に大きな懐で受け止めてくれるので、沢村さんとのお芝居は楽しいです。やっぱりその場で生まれるものがたくさんありますし、目の前のキャッチボールを大切にしてくださるので、いい距離感でお芝居させていただきました。

――ドラマの中で、「人は誰だって、いくつもの顔を使って生きている」という沢村さんのせりふがありますが、竹内さんもご自身で使い分けている顔はありますか?

意識的に変えているわけではないですが、例えば、仕事をしているときと、家に帰ってからでは違うと思うんです。そういう感覚で、みんな知らぬ間にいろいろな顔を使い分けていると思うし、その状況に応じてコミュニケーションを取って生きていくので、おのずと変わっていると思います。

僕だったら、ドラマを撮影していく中で「このチームではこの佇まいがいいのかな」と自然になっていきますし、考えれば考えるほど、だんだん順応していく感じです。

――ドラマタイトルにちなみ、作品について「密告」したいことがあれば教えてください。

このようなすごく難しい題材をドラマで扱おうという気合が僕は好きです。僕が感じたことや思いついたアイデアをすごく尊重して受け止めてくださるチームで。だからこそ、すごくいろいろなアイデアが飛び交いました。

積極的に寄り添ってくださって僕はすごくうれしかったですし、こういうふうに、ちゃんといい作品は作れていくんだなと感じました。現場はすごくいいチームですし、各部署がこだわりをもっていて、ライティングもすてきです。

――最後に、視聴者にメッセージをお願いします。

DIDというとあまり聞きなじみはないかもしれないですが、そういう症例に苦しんでいる方がいることを今作を通して知り、たくさん勉強した上で臨みました。

今回の交代人格は、自分を守るためだったり、自分の目的やゴールに向かってゴールテープを切るために歩んでいきます。かつてしまい込んだ愛情や、人間の欲というものを、交代人格が一生懸命補っていくさまが見どころです。

すごく人間味のある分厚いドラマになっています。僕と沢村さんの、生感というか、繊細な、リアルな掛け合いを体感していただきたいです。