「大奥」第10回より / (C)NHK
【写真】白髪混じりで熟年夫婦感がある風間俊介“杉下”と冨永愛“吉宗”

ドラマ10「大奥」(毎週火曜夜10:00-10:45、NHK総合)の第10回が3月14日に放送され、「8代 徳川吉宗×水野祐之進編」が展開。吉宗(冨永愛)や家重(三浦透子)に看取られた杉下(風間俊介)の最期が感動を呼んだ。(以下、ネタバレを含みます)

「大奥」とは

よしながふみの同名コミックを森下佳子の脚本でドラマ化した作品。3代将軍・家光の時代から幕末・大政奉還に至るまで、男女が逆転した江戸のパラレルワールドを舞台に、ジェンダー、権力、病など、現代社会が直面する課題を描く。

江戸幕府3代将軍・徳川家光の時代、「赤面(あかづら)疱瘡(ほうそう)」と呼ばれる奇妙な病が日本中に広がっていった。この病は“若い男子にのみ”感染し、感染すれば“数日で死に至る”恐ろしい病であった。対処法も治療法も発見されず、結果として男子の人口は女子の4分の1にまで激減し、日本の社会構造は激変した。男子は希少な種馬として育てられ、女子はかつての男子の代わりとして労働力の担い手となり、あらゆる家業が女から女へと受け継がれるようになる。江戸城でも3代将軍・家光以降、将軍職は女子へと引き継がれ、大奥は将軍の威光の証であるがごとく希少な男子を囲い、俗に美男3000人などと称される男の世界が築かれていくのであった。

「大奥」第10回より / (C)NHK

杉下が心身痛で倒れてしまう

吉宗が家重の素行が良くない話を杉下に相談していたとき、杉下が突然、胸を押さえて倒れてしまう。

杉下は心身痛の可能性が高く、薬代がかからないように堪えていたのではないかと吉宗は久通(貫地谷しほり)に話す。久通がなんと杉下様らしいというと、「文句の一つも言わず、ずいぶんと長い間仕えてくれた。せめて、あやつに何か一つでも報いてやりたい」と吉宗は言うのだった。

吉宗は自ら薬を飲ませて杉下を手厚く介抱

進吉(中島裕翔)が持ってきた薬が高価なものなのではと杉下が心配すると、そうやって薬も飲まないからこうなったのだろうと吉宗が諫める。煎じた薬が運ばれてきて杉下が吉宗から薬を受け取ろうとすると、吉宗は杉下には渡さずに、自ら杉下に薬を飲ませてやる。

その様子を進吉がほほ笑ましく見ていると、吉宗がなんじゃと尋ねる。そうやっているとまるで夫婦のようだと進吉は笑って答え、杉下は目を丸くして驚く。しかし、吉宗は当然のように「夫婦のようではない、夫婦じゃ」と言い切る。杉下は早くに亡くなった姫たちの父親代わりをしてくれた、姫たちの父親なら私には夫であろうと吉宗は語った。

杉下はそれを聞いて「おそろしい…」とぽつりと漏らし、吉宗が気を悪くすると、杉下は「口が滑りました。恐れ多い」と言い直し、3人で笑い合う。

その後、吉宗に呼ばれた藤波(片岡愛之助)が進吉と再会を果たし、さらに4人で高らかに笑い声を上げて、朗らかなひとときを過ごした。

朝もやがかかる大奥の廊下を走る家重。吉宗らが集まる杉下の床に家重が駆けつけると、杉下は床に臥したまま「うれしゅうございます、左様に急いて来てくださって」と弱々しく喜ぶ。「役立たずの種馬よと行き場なくこの大奥にたどり着き、某がかように人に囲まれ、誠運命とは生きてみるまで分からない」と杉下が言うと、吉宗は「これからも何が起きるか分からない。二人で楽しもうではないか」と励ます。杉下は「はい」と答えてうれしそうに笑うと事切れるのだった。

杉下の最期に集まった者がすすり泣き、見ている方も涙が止まらなくなった。振り返れば、この「大奥」シーズン1で吉宗と杉下が一番和やかで心温まる“夫婦”だったと言える。

◆構成・文=牧島史佳