※イベントのダイジェスト動画はTanoBaのYouTubeアカウントでもご視聴いただけます。

「望まない孤独をなくす」をパーパスに掲げるTanoBa合同会社

TanoBaは、「望まない孤独をなくす」をパーパスに掲げ、ヤフー卒業生の3人が、3つの事業を核に2023年3月に設立しました。

事業の一つである「コミュニティ事業」として実施しているのが、食事を通じて広く緩やかなつながりを作る場所「タノバ食堂」です。昨年10月から毎月最終土曜日に、野沢龍雲寺に隣接する龍雲寺会館にて開催し、これまでの参加人数は延べ100人を超えました。

2040年には日本の人口は現在から約1,330万人減少するとの予測や、孤独を感じる人がおよそ4割に上るという政府の調査もあるなか、TanoBa代表社員の宮本は、タノバ食堂の目的は「つながりの回復」だと語ります。

参考:2024年4月1日より孤独・孤立の問題を「社会全体の課題」と位置づける孤独・孤立対策推進法が施行



「孤独・孤立は私たち誰にでも起こりうる身近な社会問題です。そんな中で、名前や仕事は知らないけれど、街ですれ違ったときにちょっとした挨拶ができるような、地域における緩やかなつながり。「タノバ食堂」で「ご飯を食べる」ことをキッカケにそんな関係値が地続きで広がっていくことを目指しています。」(TanoBa代表社員:宮本)

「タノバ食堂」が大切にしていることは、経済的自立。そのために食堂の価格は「自由価格制」です。これまでの平均値は1,740円ですが、「価格がばらついていることこそが大事」と、宮本は語ります。誰がいくら払ったかは問題ではなく、参加するみんなでタノバ食堂全体の経済を回し、この活動を地道に継続することを目指しています。

今後、「タノバ食堂」はノウハウを蓄積し、運営のフォーマット化を目指します。そして、同じような活動をしたい、という全国各地の人にフォーマットを提供し、この活動が様々な場所で行われ、そのコミュニティがネットワーク化されていく未来を描いています。

「『タノバ食堂』にはホストもゲストもなく、みんながそれぞれの役割をもった参加者。だからみんなで決めた「タノバ食堂の憲章」をみんなで守るし、今後は収支も公開し、共有し、みんなの財産にしていきます。」(TanoBa代表社員:宮本)

TanoBaは、孤独・孤立はみんなにとって大事な問題、だからこそみんながそれぞれ持つ力を発揮して“望まない孤独”を解消していくことが必要と考え、パーパスに掲げています。

「望まない孤独」の背景にある「自己責任社会」

トークセッション「望まない孤独を解消するための処方箋~自己責任社会からの脱却~」には、NPO法人「あなたのいばしょ」(以下、「あなたのいばしょ」)理事長 大空幸星さん、株式会社新潮社(以下、新潮社) 出版部部長 中瀬ゆかりさんが登壇。

全ての望まない孤独を抱えている方が、「確実に信頼できる人にアクセスできる仕組み創りに取り組み、24時間365日利用できるチャット相談窓口」を運営している大空さん。その数は多い時で1日に3,000件、窓口を立ち上げてからの4年間では100万件にのぼるといいます。

「孤独は普遍的なものですが、いくつもの要因や理由が積み重なって『望まない孤独』に追い込まれていくということが、これまでの相談内容から見えてきています。『孤独を愛せ』というように孤独を礼賛するような文化もありますが、それは望まない孤独を抱える人にとってはとても苦しいものです。英語で言うと『Solitude』と『Lonliness』の違いですね。」(大空さん)

一方、中瀬ゆかりさんは新潮社に新卒で入社して以来、編集者として様々な文学作品に向き合って来ました。

「文学と孤独は切っても切れない関係です。寄る辺なき魂について描かれた作品が数多く存在しますし、何かを抱えた魂に寄り添うのが文学だと考えています。辛さや孤独を抱えている人のために文学があるというのは出版人としての矜持です。」(中瀬さん)

そんなお二人が今回のトークセッションのキーワードとなっている「自己責任社会」についての考え方を語りました。「自己責任」という言葉は、日本と欧米とで捉え方が大きく異なるといいます。

「欧米における『自己責任』は、自己決定をポジティブに行う、という意味合いが強いです。相手も自分も、自分自身こそが自分の人生を決められる存在としてフラットに捉え、だからこそ他者や社会に対して貢献する、という考え方です。日本では、何においても懲罰的自己責任、自業自得的自己責任というように捉える風潮があります。」(大空さん)

  「そもそもチャンスに恵まれていなかったり、自分ではコントロールできない要因がいくつも重なった結果、ということに対する想像力や共感力が欠けていると感じます。文学を読む上では、最も大事なことです。人間同士の隔たりはそれらで少しは埋めていけるはずです。文学や映画にこそ、他者の立場になって想像する、共感するいうヒントがたくさんあるのではないでしょうか。

なんでも自己責任論だけで短絡的に片づけてしまう風潮には人間としての想像力・共感力の欠如を感じざるをえません。」(中瀬さん)

大空さんは、この「自己責任論」を乗りこなしているような若い世代もいるといいます。いわゆる「無敵の人」と呼ばれる社会的に失うものがなにもないために、犯罪を起こすことに何の躊躇もない人たち。これも「望まない孤独」の行きつく先のひとつの可能性であると話します。

「もともとあった人間同士の繋がりに価値を見出せなくなり、望まない孤独に陥ってしまった行き着く先のひとつは死である可能性もあり、無敵の人でもある可能性もあります。」(大空さん)

「哲学者・三木清の『孤独は山にない、街にある。一人の人間にあるのではなく、大勢の人間の「間」にあるのである。』という言葉にもあるように、大勢の人がいるのに誰も自分のことを知らない時に孤独は訪れます。絶え間なくその孤独が押し寄せてきたときに心が壊れていくのではないでしょうか。」(中瀬さん)

「孤独の先の死」や「パートナーの死の先にある孤独」。経験を踏まえて語る、繋がりの重要性。

望まない孤独の先には「自死」があると語る大空さん。自身の経験も踏まえながら、それを予防するために必要なことについても話が広がりました。

「望まない孤独を抱え、真っ暗で出口のない絶望の淵にいる人にとって、遠くに見える光、つまりひとつの出口が『自死』なのです。私は、そんな状況にある相談者に『自殺はだめだ』と話したことはありません。なぜなら、相談者にとっての一筋の光である出口を塞ぎ、真っ暗闇に閉じ込めてしまう最も残酷な言葉になると考えているからです。

でも、もちろん自ら命を絶つようなことは決してしてほしくはない。

だから「あなたのいばしょ」では、最後の出口を塞がずに、どのように他の扉を開けていけるか、それを探しながら自殺予防に取り組んでいるのです。」(大空さん)

他の扉をひらく、それこそ繋がりをつくることだと大空さんは続けました。

「私の場合は、暗闇の中で死ではない別の光を照らしてくれたのが、高校時代の担任の教師でした。この繋がりこそが私を救ってくれたのです。以前はその役割を家族が果たしていましたが、現代においては、社会こそがコミュニティ機能を果たしていく必要があるのです。」(大空さん)

一方、中瀬さんは19年間連れ添ったパートナーの死の先に感じた自身の孤独、それは心が半分死んだようだったと語ります。

「突然パートナーが亡くなり、地獄のような孤独の日々が始まりました。2年間くらいは、毎日誰かとご飯を食べていました。誰かと食事をするという約束があると、その約束に向けて1日生きることができる。それがないと生きていくことができないくらいでした。」(中瀬さん)

「そんな日々を続けていると、繋がりというのは生者と生者の間だけではなく、死者との間にも生まれるんだと感じるようになりました。今はパートナーと自分が一体化しているように感じています。」(中瀬さん)

その話を受けて大空さんは「共に過ごした時間の想い出があるから中瀬さんの中でパートナーが生き続けているのだろう」とコメントしました。一方では、「日常から孤立していて、食事に行くような繋がりもなく、想い出で繋がる人もいない、という人を無くしていかなくてはいけない」とも話してくれました。

孤独は「社会としての問題」本気の他人事として、人助けする必要性

「あなたのいばしょ」の提言によって2021年2月に政府は「孤独・孤立対策担当大臣」を設置するなど、これまで個人の問題とされてきた「孤独」が、社会をあげて取り組む体制が整っているなかで、社会ができることとは何か、というテーマにもトークは広がりました。

「やはり人同士が繋がっているということは大事です。一方で、もう少しみんなが人にちょっと冷たくなってもいい、これを私は『本気の他人事』と呼んでいます。

なぜなら孤独って連鎖して伝染していくものだからです。これが孤独の恐ろしさです。」(大空さん)

目の前で誰かが困っていたら手を差し伸べたくなる、助けたくなる。でもそれはどこか自分を犠牲にしてしまうことでもある。自分を犠牲にしていくことで自分自身も孤独に陥ってしまう、それが孤独の伝染であると大空さんは続けます。

「まずは自分の人生を優先すること。それで余白があれば、人に手を差し伸べればいい。私は友達も家族も赤の他人と思っていいと思っています。必要な時には赤の他人として本気で助ける。これが本気の他人事です。」(大空さん)

本気の他人事として、暗闇の中にいる人手を差し伸べるとき、どのように向き合うべきなのでしょうか。

「相談窓口でやることは傾聴。目の前の人のことを絶対に否定せず肯定し、承認し、褒める。相手が求めているのはアドバイスや解決ではなく、話を聞いてくれる存在です。」(大空さん)

多くの人に支えられた「タノバ食堂」 これからも続く「望まない孤独を解消するための処方箋」

トークセッションの最後に、「望まない孤独を解消するための処方箋」としてメッセージをいただきました。


「私はいつも、マイナスからゼロの状態をつくる、ということを言っています。様々な相談をしてくれる相談者のマイナスな状態をどのように救うのか、解決するのか、ということを考えがちですが、問題解決した状態はプラスの状態。そのマイナスとプラスの間にはゼロの状態があるはずです。

いまのマイナスの状態から、ちょっとした一歩先にあるゼロの状態を目指してほしい。

それで十分です。そのために必要なのは緩い繋がりのなかでの傾聴です。そういう繋がりの機会は全ての人が作れると思っています。」(大空さん)

「私は笑うことも大事だと思っています。笑った分は救われる、そんな風に思っています。笑うことを忘れている人って多いかもしれません。そんな人にとって自分の出ている番組のしょうもないことで笑ってもらえたら、なんて思っています。」(中瀬さん)

イベントの最後には、TanoBa後援者挨拶として、野沢龍雲寺 第12世 住職 細川晋輔様よりご挨拶をいただきました。

「今回のお話や、タノバ食堂の取り組みはお寺や僧侶にとっても大切な問題だと感じています。私自身、僧侶の修行に出た際にとことん自分を孤独に追い詰めましたが、そこで最初に気づいたのは自分には大切な人との繋がりがある、ということでした。

お話のなかで、暗闇の中の光りの話もありましたが、私はそれを『哀しい選択』と捉えています。暗闇の中の光りとしての死は良くないことではなく、哀しい選択である。それがたとえ闇の中の光りだとしても、その選択をしないためにはどうすればいいのか、ということも今日参加された皆さんの心の中に呼び起こされたのではないでしょうか。

生きていることが当たり前ではなく、ありがたい命を全うしていると感じられれば、他者のことも大事に感じられるし、孤独を知っているからこそにじみ出る優しさがきっとあります。

コツコツと人とつながって、無理せず楽しく、少しでも笑顔になれる人生を歩みましょう。」(細川住職)

想像力と共感力が欠如した社会から生まれる自己責任論、そしてその行き着く先にある望まない孤独。いつでも誰にでも起こりうる望まない孤独に対して、社会は、私たちは、自分はなにができるのか。様々な考えるキッカケをもらえるトークセッションとなりました。

また、イベントに参加された方からは、以下の様な「孤独」や「繋がり」を考えるキッカケとなったという感想も寄せられました。

「孤独に関する本、言葉、考え方(自分を犠牲にすると孤独になる)など印象的でした。メモを取りましたので、行き詰まったら読み返そうと思います。(60代)」

「日本の人口減少について、具体的に知りショックを受けた。孤立は、さまざまな要因が多層的に絡まり引き起こされていること。支援者の自己犠牲の上で成り立つことで、更に孤立が生まれること。大切な人を亡くす経験は、誰にでもあること。無敵の人も、孤立の延長線上にあること。(50代)」

「TanoBaの取組の詳細を知ることが出来た事と、ゲストおふたりの組み合わせもよく楽しみながら孤独に関して考えさせられた会でした。(40代)」

「テーマが興味深く、ゲストの中瀬さんが好きだった為、初めて参加いたしました。自己責任という言葉の恐ろしさ、想像力の欠如による他者への不寛容や無理解、孤独は連続し、また連鎖すること。私たちの周りには常に闇が控えているのだと改めて感じました。繋がり合うことで、闇の中にあっても出口や選択を増やせるかもしれない、自分にできる小さなことが誰かの助けになるかもしれない、というのは救いがあるなと思いました。学びが多く参加して良かったです。ありがとうございました。(30代)」

なお、イベント終了後には野沢龍雲寺に隣接した龍雲寺会館にて、食事を通じて広く緩やかなつながりを作る場所「タノバ食堂(毎月最終土曜日開催)」も開催され、常連参加者や初参加者など、幅広い年齢層の方に多数ご参加いただきました

今後、TanoBaのコーポレートサイトでは、毎月タノバ食堂の収支も公開していく予定です。

※24年4月以降の「タノバ食堂」のお申し込みはコチラから受け付けております。

最後に、創業1周年記念    イベントを終えて、TanoBa合同会社 創業者3名のメッセージをお届けします。

TanoBa合同会社 共同創業者 代表社員 宮本 義隆

「今は、喜びと感謝の気持ちで胸がいっぱいです。
この年、当社の活動に多くの皆さんからご賛同いただき、共に活動してきました。
野沢龍雲寺の細川住職、野沢町内会の皆さん、ボランティア料理人、そしてはるばる遠方からご参加頂いた沢山のゲストの方々にこの場を借りて感謝を申し上げます。
昨年10月に活動を開始した時は、「食堂が本当に必要とされるのか?」と不安で一杯でしたがこのように回を重ねることで、手応えも感じられています。
今後も野沢の地で活動を継続し、より多くの人を巻き込みながら、食堂が社会に必要な装置となることを目指していきます。」

TanoBa合同会社 共同創業者 宮本 桃子

「本イベントをはじめ、主旨に賛同いただいた野沢龍雲寺の細川住職には本当に感謝しております。
イベントでは、大空さん・中瀬さんから示唆に富んだお話をいただき、多くの気づきを得ました。
孤独という課題は非常に多面的で複雑なものであり、私たちだけの力でできることは少ないかもしれません。
ですが、一人一人が何かできることを行動すること、意思表示することで世界は変わると信じています。
イベントに多くの方にお越しいただいたことが、その一つの表れであるとも思います。
私たち、TanoBa合同会社は、これからもタノバ食堂を継続していきます。」

TanoBa合同会社 共同創業者 多田 大介

「スタートとした時期は、希望より不安の方が大きかったことを今でも憶えています。
多くの方々からサポートしていただき、なんとか創業1周年を迎えることができたことに、感謝の気持ちでいっぱいです。
この節目のタイミングで、大空幸空さん、中瀬ゆかりさんという余人を以ては代えがたい明哲なお二人に、『望まない孤独を解消するための処方箋〜自己責任社会からの脱却〜』というテーマでお話を頂けたことを大変光栄に思っています。そして、食事を通じて広く緩やかなつながりを作る場所「タノバ食堂」を毎月定期開催できるキッカケとなった野沢龍雲寺の細川住職にもご挨拶頂けたこと、深く感謝しております。
将来的には「タノバ食堂」の取り組みが世の中に広がっていくことで、「のぞまない孤独の解消」の処方箋となれるように、今後も全力投球してまいります。」

TanoBa合同会社(TanoBa G.K.)について
・設立:2023年3月21日
・代表社員:宮本 義隆
・共同創業者:宮本 桃子、多田 大介
・所在地:東京都世田谷区野沢
・資本金:1,000,000円
・事業内容:少子高齢化/人口減少で加速する孤独・孤立の解消
・コーポレートサイト:https://tanoba.jp/
・お問い合わせ:info@tanoba.jp
タノバ食堂について

タノバ食堂は、対話と食事を楽しむコミュニティとして、

・ 初対面同士で食事を共にすることで新たなつながりを創る

・ 利用料金が自由価格制

・ メニューが存在しない

という特色があります。

一般的な飲食店と異なり、「無償で料理を作り誰かに振る舞うことを楽しむボランティア料理人」、「無償で開催場所を提供してくれるスポンサー」との共創によって成り立っています。

また、タノバ食堂は、自由価格制による売上を食材の調達・運営費・固定費(水道光熱費等)に充当することで、持続的な経済循環のシステム構築を目指しています。

https://www.cao.go.jp/kodoku_koritsu/torikumi/platform/index.html