宇宙までガイドする「るるぶ」が50周年を迎えて打ち出した「見る・食べる・遊ぶ」だけじゃない新機軸とは?

東京ウォーカー(全国版)

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旅行雑誌の代名詞ともいえる「るるぶ」は、昨年2023年に50周年を迎えた。「旅」という、人々の心踊るイベントを長年に渡り支えてきた同誌が辿ってきた歴史と、時代とともに移り変わってきた役割とはなんなのだろうか?また、コロナ禍を経て生まれた新機軸とは?創刊時から現在までを「るるぶ」の担当者とともに振り返った。

月刊誌るるぶ創刊号の表紙。旅が若い女性の高い関心を集めていた1973年に創刊された【画像提供=JTBパブリッシング】


ーー「るるぶ」50周年、おめでとうございます。創刊の経緯について教えていただけますか?

【担当者】「るるぶ」というブランドが誕生したのは、前回の大阪万博のあと、国鉄が“ディスカバー・ジャパン”キャンペーンを打ち出したころです。1970年に「an・an」、1971年に「non-no」が創刊され、これらの雑誌で若い女性の旅が特集されるようになると、旅が女性のファッションアイコンのようになっていきます。ちょうどそのころ、当社(当時は日本交通公社)には松本清張の「点と線」などを生んだ「旅」という雑誌がありましたが、若い女性読者に向けた雑誌を作ろうと、1973年に「旅」の別冊として創刊されたのが「るるぶ」です。旅の行動要素「見る・食べる・遊ぶ」の最後の一文字をつないで「るるぶ」とネーミングされました。「『見る・食べる・遊ぶ』をとことん楽しむことこそ、女の子の特権なのです!」と創刊時のチラシでも謳われており、旅する若い女性の背中を押すような情報を詰め込んでいたのだと思います。

るるぶ創刊号の神戸ルポ【画像提供=JTBパブリッシング】


ーー始まりは女性向けの雑誌だったのですね。

【担当者】はい。「るるぶ」創刊号の特集は「夏のひとり旅 あなたのためのバカンス作戦」でした。神戸や萩、清里を舞台に、モデルが街を散策するグラビアルポやおしゃれな喫茶店などの写真が「憧れ」となって、読者を旅へ誘いました。ファッションや美容に関する記事もあったようです。好評を博し、季刊から隔月刊、やがて月刊となり、「夏の信州特集」「紅葉の温泉特集」など、毎号季節にあわせた旬な旅先を特集。当時、小京都や門前町にグラビアから飛び出してきたようなファッショナブルな女性観光客がたくさん押し寄せたと聞いています。

【写真】創刊号から、憧れの観光地で見て、食べて、買うための詳細なイラストマップが付いていた【画像提供=JTBパブリッシング】

ーーその後、現在のような目的地別の「るるぶ」が生まれたのはいつからでしょうか?

【担当者】雑誌「るるぶ」の創刊から約10年後くらいになります。1984年に誕生したのが現在もおなじみの、ムックタイプの目的地別旅行ガイドブック「るるぶ情報版」です。通巻1号は「るるぶ京都」でした。現在書店でずらりと並んでいるように、最初から全国各地のラインナップがあったわけではなく「伊豆箱根」「鎌倉」「京都奈良」「東北」「信州」…と徐々にエリアが増えていきました。

目的地別旅行ガイドブックとして1984年に誕生したルるるぶ情報版通巻1号目「るるぶ京都」【画像提供=JTBパブリッシング】


ーー目的地別旅行ガイドブックになってからも、ターゲットは若い女性のまま?

【担当者】「るるぶ情報版」でも若い女性層をメインターゲットに、巻頭はグラビアページで構成し、等身大の女性モデルが憧れの観光地で「見る・食べる・遊ぶ」を体現していました。当時ガイドブックの主流だった史跡名勝などの「見る」情報だけでなく、喫茶店やレストランといった「食べる」情報、レジャースポットや体験施設などの「遊ぶ」情報、お土産の「買う」情報、おしゃれなペンションなどの「泊まる」情報などを充実させ、デザインもビジュアル重視の雑誌的な作りにこだわりました。写真が映えるように大判ながら、くるっと丸めて女性用バッグに入れられるようなサイズ(AB判)にしたのも、当時のガイドブックとしては画期的だったようです。

ーー近年では地域名ではないタイトルのものも増えていますね。

【担当者】アニメやゲームの聖地巡礼版や、プロ野球チームとのコラボ版なども好評でしたね。ラインナップの拡大により、2010年には「発行点数世界最多のガイドブックシリーズ」として世界ギネス記録(TM)に認定されました。出版商品以外にもWebメディア「るるぶ&more.」「るるぶ Kids」、“リアルメディア”としての飲食店舗「るるぶキッチン」、るるぶの編集ノウハウを活かした自治体・企業のパンフレット制作受託「るるぶ特別編集版」など、「るるぶ」の名を冠したサービスは多岐に広がっています。

ーー旅行人気が絶好調のなかでコロナ禍に突入。長引くコロナ禍で苦労されたかと思います。どのように乗り越えられましたか?

【担当者】新型コロナウイルスの影響によりガイドブックの売り上げも大きく落ち込みましたが、家で過ごす時間をより楽しくするための「知る・つくる・学ぶ」を新機軸に加え、知的好奇心を満たすような「るるぶ」へとガイド領域を広げました。“観光地のガイドだけに留まらない”という発想へ転換できたのは、いいチャンスだったと思います。

ーー2021年3月に出版された「るるぶ宇宙」も話題になりました。発行にいたるまでのいきさつを教えてください。

【担当者】コロナ禍で旅行ができない、通常の旅行ガイドが売れないという状況下で、“家でも楽しめる旅行先”として出てきたアイデアが宇宙です。過去にも案としては出ていながら実現していなかったのですが、民間人の宇宙旅行がニュースにもなっていてタイムリーだったことと、コロナ禍により社内で「妄想旅」がキーワードになっていたことで実現に至りました。JAXAの協力のもと、旅行プランの提案や地域別のガイド、写真や図解を用いた“るるぶ的宇宙ガイド”ができあがりました。日本の民間人として初めて宇宙へ行った前澤友作さんも、出発前にこの本のことをツイートしてくださり、話題となりました。

ついに地球を飛び出した!と話題になった「るるぶ宇宙」【画像提供=JTBパブリッシング】


ーーるるぶテイストで作られた「学校案内」や「会社案内」は、ガイドブックの楽しさを盛り込んだ作りとなっていますね。評判はいかがですか?また、最初に作った学校案内や会社案内についても教えてください。

【担当者】最初に作った学校案内は大学版の「るるぶ特別編集」です。オープンキャンパスや入学説明会で配られることが多いのですが、「大学版の“るるぶ”が出てる!」とピックアップ率も高いと評価をいただいております。等身大の学生がモデルとなってキャンパスライフの様子や周辺のおすすめスポットを紹介しているので、入学希望の学生にとっては学生生活をイメージしやすく、親御さんにとってはキャンパスのある地域の様子がわかりやすく伝わり、安心につながるようです。おかげさまで好評につき、その後もいくつもの学校で制作させていただきました。

ーー「会社案内」のほうはどうですか?

【担当者】「るるぶ特別編集」を採用いただいた会社では、堅苦しくなりがちな沿革や社長メッセージもわかりやすく親しみやすい誌面となり、営業ツールとしてのウケもいいようです。社員が誌面に登場して一日の業務の様子を紹介していたり、職場や営業所の周辺ガイド記事(ランチスポットなど)を設けているので、リクルート用としても好評だそうです。

「るるぶ特別編集」は企業や学校、病院のガイドブックをるるぶ風に制作する【画像提供=JTBパブリッシング】

【担当者】病院版の「るるぶ特別編集」には、院内の様子やこだわりのおいしい病院食などを掲載しているほか、周辺エリアの公園や子連れランチスポットを大きくわかりやすい地図入りで紹介するといった「るるぶ」が得意な地域&お出かけ情報を充実させました。地域で安心して出産・子育てをしてほしい、と願う病院の期待に応える冊子ができたのではないかと思います。

ーー改めて50周年を迎えたことへの思い、そして今後の新たな取り組みや施策などについて教えてください。

【担当者】50周年キャンペーンでは「旅行前にはいつも『るるぶ』を買ってしまう」「我が家の本棚には、旅をした数だけ日本全国の『るるぶ』が並んでいる」という声が多く寄せられました。旅行はもちろん、出張や転勤など、初めての地域を訪ねる際に“失敗しないための旅のお守り”のような気持ちで「るるぶ」を手に取っていただけること、そして旅行前から旅行後まで読者の旅の思い出のそばにあるというのは本当に版元冥利につきることだと思います。るるぶを買って旅行へ想いを巡らせる方のSNS投稿や、新幹線でるるぶを見ながら店選びをしている方を見かけると、50年経ってなお、旅する人をワクワクさせる存在であることをうれしく思います。次の50年は旅に限らず、日常のあらゆる「ワクワク」や行動を起こすきっかけとなれればと思っています。

【担当者】今後についてですが、旅や日常がもっとワクワクするような、るるぶの新たな世界観を届けるコンテンツがこの春デビューします。また、これまで蓄積してきた膨大な観光データと、ユーザーの行動分析により、個々人にとって最適な情報を提供していくオンラインサービスも準備中です。

ガイド領域を広げたことで、推し活もラインナップに加わった【画像提供=JTBパブリッシング】


ブランド誕生から50年。名前の由来ともなった「見る・食べる・遊ぶ」に新たに「知る・つくる・学ぶ」を加えた新機軸で、私たちのさらなる好奇心を後押ししてくれる「るるぶ」。旅だけにとどまらない多種多様なワクワクを満たすガイド役として、今後も期待大だ。

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