“推し”がいる方必見!韓国発の新しい広告スタイル「応援広告」って知ってる?業界先駆者にブームのワケを聞いてみた

東京ウォーカー(全国版)

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これまでの広告といえば、企業が自社の商品やサービスを宣伝するためのものが一般的だった。しかし、ここ最近は企業ではなく、アイドルやアーティスト、芸能人などのファンが出稿する広告が流行しつつあるのをご存じだろうか。

この形の広告は「応援広告」と呼ばれていて、ファンが自分たちの好きな“推し”を応援するために掲載するというもの。韓国からアジア、アメリカなど世界ではすでに一般的な広告の方法になっているという。

今回は、日本上陸を果たしたこの応援広告について探るべく、応援広告の先駆者であるジェイアール東日本企画 jeki-X Cheering AD(チアリング アド) プロジェクトリーダーの河原千紘さんにインタビュー。広告出稿の仕組みや人気となっている理由などについて話を聞いた。

ジェイアール東日本企画 jeki-X Cheering AD プロジェクトリーダーの河原千紘さん【撮影=福井求】


韓国では当たり前!「応援広告」ってどんなもの?

――まずは、応援広告とはどのような広告の形なのかを教えてください。
【河原千紘】応援広告とは、企業ではなく、ファンが推しの広告を出すことです。韓国のアイドル発のカルチャーでセンイル広告(誕生日広告)と呼ばれ、コロナ前のデータになりますが、ソウル地下鉄の広告の3割は応援広告で、ターミナル駅を歩くと目に触れないことはないくらいです。トレインジャック・ラッピングも盛んですし、交通広告以外にもサイネージ・カップホルダーイベント・映画館内のラッピングなど、多岐にわたります。

――日本ではまだあまり見かけない形式の広告ですが、なぜ日本では一般的ではないのでしょうか?
【河原千紘】日本だと、著作権や肖像権といった権利関係が厳しいので広がるのが難しかったです。

エンターテインメントグループ「すとぷり」の応援広告【提供=ジェイアール東日本企画】


――河原さんは貴社のサービス「Cheering AD」の発起人のひとりだとお聞きしました。そもそもどういった経緯で応援広告をしようと思われたのでしょうか?
【河原千紘】私はK-POPオタクでよく韓国へ遠征していたので、「日本でも応援広告を出したいな」と思ったのがそもそものきっかけでした。2020年に社内の新規事業コンペがあったので、オタク仲間と一緒に応援広告の企画を出したのですが、その時は残念ながら事業化されませんでした。

【河原千紘】ですが、ちょうど同じころに韓国の人気アイドルオーディション番組『PRODUCE101』の日本版『PRODUCE 101 JAPAN』がスタートし、韓国式の応援文化が持ち込まれました。アイドル練習生の応援用素材をホームページに掲載してくれたんです。

――ファン自ら広告を出せるのはすごい文化ですね。
【河原千紘】ただ、日本の場合はどうしても間に広告代理店が入らないと広告が出せないので、ファンのみなさんは「応援広告を出したいけど、どうすればいいかわからない」とけっこうお困りになられていたんです。なので最初は、「お手伝いできますよ」といった形でサポートさせていただきました。

【河原千紘】ですが、当時は応援広告という言葉はなく、弊社としてもBtoCの広告掲載をしたことがありませんでした。そもそもなぜファンがお金を出して広告を出すのかが、社内も社外もなかなか理解されなくて。そのため、「応援広告とはこんな仕組みですよ」といったことを社内外に説明して、少しずつ実績を作ってきました。

【写真】JO1初のドーム公演をお祝いしたファンダムによる応援広告。JR大阪駅の巨大サイネージ【提供=ジェイアール東日本企画】


――確かに、広告って一般的には企業が出すものですからね。
【河原千紘】そうなのです。広告出稿だけであれば会社として実績も経験も十分にありますが、やはり対企業でのBtoB事業がメインですので、応援広告のようなBtoC事業というのは会社としても挑戦でした。コンペを出したメンバーが主体となって、応援広告の問い合わせがあれば仕事の合間にサポートをしていたのですが、お陰さまでだんだんと件数が増えてきたので2022年に「Cheering AD」という正式なサービスとしてスタートすることになりました。

――サービスが始まって、どのくらいの件数の広告を出されたのでしょうか?
【河原千紘】2022年度だけでも約400件の掲出サポートをさせていただきました。あまりに多くの問い合わせをいただいたので、お客さまをお待たせすることなく進める仕組みはないかと考え、2023年4月にオンラインサイトを開設し、日本全国の広告の検索、お申込み、お支払いまでサイト上で完結できるようにしました。初心者の方でもカンタンに応援広告が掲出可能です。2024年現在は月に150件以上ものお申込をいただいております。

最大の強みは、所属事務所や権利元と交渉できること

――月に150件以上もの問い合わせが来るほどに人気となったのは、どういった理由からでしょうか?
【河原千紘】日本の場合、ファンの人たちがいくら広告を出したいと思っても、所属事務所や権利元がダメと言ったら何もできなんです。なので私たちもファンの方からお問い合わせがあったら、必ず権利元に広告掲載の確認を行い、OKであれば写真をお借りするところまでお願いをします。私たちは広告会社なので、権利元との調整や手続きにも慣れています。そこを交渉できるのが最大の強みです。

【河原千紘】最近では、アーティストやアイドル、VTuberの所属事務所や、ゲームやスポーツチーム等の権利元と協業して、応援広告の窓口を請け負うケースが増えています。応援広告の規約作成から素材管理、ファンの対応はすべて弊社で行っています。このように事務所公認をどんどん増やしていったのが、応援広告が広がった理由のひとつですね。

「応援広告を日本でも広げたいと思いました」と企画のきっかけを話す河原さん【撮影=福井求】


――事務所によっては公式がすでに認めていることもあるのですね。
【河原千紘】応援広告はまだまだ日本では知られていませんし、まさか一般の方々が広告を出せるとは思いもよらないと思います。ですので、先ほどのように事務所に公認いただいて、「応援広告という新しい応援手法がある」ということを伝えている段階ですね。結果として実績も増えて認知度も上がっていくので、現在はそこに注力しています。

――応援広告を出すには、団体でないとダメなのでしょうか?
【河原千紘】基本的に日本の交通広告は、個人では出稿できず、団体名義である必要があります。たとえば「〇〇くんを応援する会」といった、メンバーが2人以上いる団体としていただいてます。

【河原千紘】広告掲載に際して団体審査というものがありまして、その際に団体の活動実績なども申告していただきます。たとえば、コンサートに祝い花を贈ったとか、ファン同士でファンアカウントを運用しているとかですね。ちなみに、掲載される側の条件としては、事務所に所属していて、CD販売、テレビ出演など、経済的な活動をしていることが条件になります。

にじさんじ所属VTuber「剣持刀也」の誕生日企画。アドトラックに広告が掲載された(©ANYCOLOR, Inc. )【提供=ジェイアール東日本企画】


――種類によるかとは思いますが、広告はいくらくらいで出せるのでしょうか?
【河原千紘】弊社のサイトでも平均単価が13万円ぐらいで、都心部でよく見かけるB0ポスターサイズのものであれば、7〜8万円くらいですね。基本的にみなさん、ファン同士でお金を集めていらっしゃいます。

【河原千紘】最近は規模感もすごく大きくなってきていまして。車内ジャックや、日本全国47都道府県の駅ポスター掲出や、アドトラックも人気です。現在は交通広告だけでなく、シネアドや雑誌、スポーツ新聞にも応援広告を載せられるよう媒体開発を行っています。

【河原千紘】また、応援広告用のメニューの開発もしていまして、そのうちのひとつが『付箋広告』です。韓国では応援広告に推しへのメッセージを書いた付箋が貼られている光景をよく見かけるのですが、日本の場合は、通行の妨げにならないかとか安全面はどうかなど、かなり厳しいハードルがあったのですが、媒体社側と調整して開発、実現できたメニューです。

JO1木全翔也さんの誕生日祝いの付箋広告。668名のJAM(JO1のファン名)が参加した【提供=ジェイアール東日本企画】


――街中の広告でいえば、人気の掲載場所などはありますか?
【河原千紘】人気エリアというのはもう固まっていますね。誰かの誕生日や周年などであれば、都内であれば新宿、池袋、渋谷、秋葉原駅や大阪、名古屋、札幌、福岡といったターミナル駅が多いです。やはり人の多い場所が人気ですね。

世界中で人気拡大中!応援広告の今後とは?

――根本的な疑問をお伺いしたいのですが、みなさんが応援広告を出されるのはどのような理由なのでしょうか?
【河原千紘】毎年、弊社で「推し活・応援広告調査」をしているのですが、約4割は「推しを応援したい・お祝いしたい・多くの人に知ってほしい」という理由ですね。その他にも、コンサートやイベント開催祝いで会場の近くに掲載される方もいらっしゃいます。

【河原千紘】昔からアイドルやアーティストなどの誕生日や記念日をお祝いするという文化はありますが、SNSが普及してきた近年の結果として、自分の推しを布教したり宣伝したりして広めたいという方たちが増えたのかな、と思いますね。現場に行くだけではなく、その状況を発信したり伝えたりする方が多くなったように感じますね。

ジェイアール東日本企画 jeki 応援広告事務局による「推し活・応援広告調査2023」【提供=ジェイアール東日本企画】


――今ではSNSで世界と気軽につながれますからね。
【河原千紘】そうですね。応援広告は韓国発祥の文化ですが、現在は世界中に広まっています。世界中にファンがいるアーティストの応援広告は規模が大きく、トレインジャックや飛行機ラッピングをしたり、ニューヨークのタイムズスクエアやドバイの世界最高階のビルでLEDショーをしたりなど、世界の都市部に広告を出したりしています。

【河原千紘】ですが、日本にはもともと似たような応援する文化があります。たとえばコンサート会場に飾られる祝い花ですね。事務所の方とお話しすると「いわば祝い花の広告版ですね」と言われることが多いです。応援の仕方が増え、一般の方々が推しを宣伝できるようになったのは大きいと思いますし、今後の応援広告の成長につながると考えています。

――日本には応援広告が伸長する土壌があるのですね。
【河原千紘】そう思います。また、最近では海外からのお問い合わせも多くなりました。日本のアイドルやアニメキャラが好きという海外の方たちですね。そのような方たちに日本にも目立つ媒体があることを知ってもらえるいい機会になると思いますので、今後はホームページの多言語化を行って、国内国外ともに広告を出していただける仕組みを整えていく予定です。

にじさんじ所属VTuber「イブラヒム」の誕生日広告。新宿のユニカビジョンに広告が出た(©ANYCOLOR, Inc. )【提供=ジェイアール東日本企画】


――最後に、応援広告における今後の展望についてお聞かせください。
【河原千紘】海外の方に、日本でも応援広告が出せることを伝えていくと同時に、日本から海外の媒体の出稿もできるようにするのが今後の目標です。事務所さんから「海外ツアーを予定しているから、ファンが海外の媒体に応援広告を出すことはできますか?」という質問をいただくことが多くなったのがきっかけですね。

【河原千紘】やっぱり日本のアーティストの方々も海外進出を考えていらっしゃるので、広告代理店の私たちとしても日本のファンが海外で推しを応援できるよう、海外の媒体も増やしていきたいなと思っています。ぜひ国境関係なくグローバルに展開をしていきたいですね。

【河原千紘】実は、オンラインサイトでスマホでポチっと応援広告の媒体を買うことができる仕組みは日本初なんです。また、ユーザーの8割の方がクレジットカードでの決済をしてくれている状況で、世界のどこにいても気軽に日本に広告を出せるようになっています。ですので、今後はこの仕組みを利用して世界中に応援広告を掲載できるよう、さらなる取り組みを行っていきたいです!

――ありがとうございます。今後の応援広告の展開を楽しみにしています!

この記事のひときわ #やくにたつ <br /> ・海外で人気のものは日本でも話題になる<br />・ブームを意識し、しっかりとキャッチすることがヒットの要<br />・海外展開できるサービスは強いビジネスを産む

取材・文=福井求(にげば企画)

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