旅館に泊まることは多いが、なかなか知ることができないのが旅館業の裏側。いつもにこやかに対応してくれる仲居さんたちの本音や裏方作業についておもしろおかしく描いたお仕事漫画がある。それが「We are ナカイサン!」。仲居さんたちの苦労話を笑いを交えて紹介しており、どのエピソードも読んでいておもしろい!困ったお客さまのエピソードも愛情たっぷりに描いているのは一浦にこさん。実に10年以上の仲居経験があるため、やけにリアルなエピソードにも納得だ。裏ではドタバタしながらも客前では優雅にこなす仲居さんたちの腕っぷしと懐の深さに感銘を受ける漫画である。
今回は、宴会の楽しみのひとつともいえるカラオケについてのエピソードを紹介する。接客をしながら毎日のように演歌を聴き続けていると、“それまでほとんど知らなかった演歌に詳しくなる”という現象が仲居さんたちの身の上に起こる。
しかし、仲居さんたちが演歌に詳しくなる理由は、“毎日聴かされているから”だけではなかった。もうひとつの理由には仲居さんのプロ根性が介在していたのだ!…というのも、お客さんとほぼ毎日のように繰り返される「アレ」や「ホラ」のやりとり。少ない情報の中からわずかな手がかりを頼りに曲名を推理するのも“名探偵・仲居”の立派な仕事なのである!「お客さま、それは『三年目の植木』ですね」とドンピシャで当てられるようになれば一人前!もはや職業病ともいえる。
「We are ナカイサン!」には楽しそうに仕事をする仲居さんたちのエピソードがたくさん描かれており、読んでいるほうも「仲居」という仕事に興味が湧いてくる。そこで一浦さんに、さらに詳しく「仲居」という職業の醍醐味について話を聞いてみた。
――仲居さんの仕事に就いていたとき、一番楽しかったことは何でしょうか?
楽しかったのは、初めて仲居として働いたホテルでの生活です。仕事そのものがとにかく楽しかったです。気の合う仲間と出会えて、寮生活だったのでほぼ毎日誰かの部屋に集まっては他愛もないバカ話をしたりしてました。それこそ仕事が終わって休みだった仲間の部屋に着物のまま「ただいまー!」って入っていくと「おかえりー!」って迎えてくれたり。お酒を飲んでもいないのに大笑いして、仕事のストレスなんてたぶん感じてなかったんだろうな~と…今思えばありがたい環境にいました。
――合宿生活みたいで、プライベートな時間も楽しそうですね!仕事全部が楽しかったようですが、具体的に楽しかったことを挙げるとしたら?
う~ん。強いていえば、宴会の余興とかは楽しみでした!私は人間観察が好きなほうなので、あまり忙しくないときは宴会場の隅っこで待機しつつ、お客さまや添乗員さんを観察するのが楽しかったです。
――仲居という仕事に就いて“役得だな”と思ったことについて教えてください。
役得かどうかは謎ですが、思い付いたものをいくつか箇条書きにしてみました。
1.着物や制服で買い物に行くと、お店によってはおまけしてくれる。
2.お上品な印象を持たれる(実際は違う)。
3.着付けを覚えられる。
4.有名人に会える確率が高い。
5.心付け(チップ)をもらえる。
6.人間関係は大変だけど、ある一定の期間が経過するとメンタルが鍛えられるので、その後の人生で役に立つ。
などなど…です。ほかにもたくさんありますよ!
もと仲居さんが描くだけあって現実味たっぷりのお仕事漫画「We are ナカイサン!」。お客さまには見せない仲居さんの笑顔の裏側を描いているものの、実は裏側でも仲居さんたちは楽しく働いていたようなので、この漫画を読んで「仲居さんになろうかな」と思う人も出てくるのではないだろうか?仲居という仕事に興味がある人にも、旅行が好きでよく旅館に泊まる旅好きの人にもオススメの作品だ。
画像提供:一浦にこ