「どんな状況でも絶対に“答え”がある」謎解きクリエイター・松丸亮吾が語る、仕事で大事にしていること

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

謎解きクリエイターの松丸亮吾さんが2023年12月2日、代官山 蔦屋書店で開かれた猫専用のIoTサービス「Catlog(キャトログ)」のポップアップショップに来場し、トークイベントに登壇した。RIDDLER株式会社(以下、リドラ)の代表も務める松丸さんは、2023年10月にポーランドで開かれた脱出ゲームの世界大会に出場し、優勝を果たした。「日本は脱出ゲーム世界一の国です」と語った想いとは?謎解きを通して伝えたいことや、社長としての仕事との向き合い方について話を聞いた。

トークイベントの前に取材に応じた、謎解きクリエイターでRIDDLER株式会社代表取締役の松丸亮吾さん【撮影=藤巻祐介】


謎解きづくり、原点は「お兄ちゃんに勝ちたい」

――松丸さんが謎解きに関心を持ったきっかけは何ですか?
【松丸亮吾】僕は4人兄弟の末っ子で、お兄ちゃんたちは“みんな最強”って感じだったので、小さいころはゲームやクイズなど何をやっても勝てませんでした。でも、あるときテレビで「IQサプリ」(フジテレビ系)というクイズ番組を見ていると、お兄ちゃんより先に問題が解けた。知識を問うのではなく、ひらめきを問うというクイズが僕の中では革命的でした。僕は知識を詰め込むことより、頭をひねることに向いているのかもしれないと思い、ひらめきで答えるクイズがどんどん好きになっていきました。

――ご自身で謎解きを作ってみようと思ったのは?
【松丸亮吾】小学校3年のときに、図書館にあった謎解きの本を全部読んでしまったんです。本の中から問題を探してお兄ちゃんに出していたのに、出せる問題がなくなったので「お兄ちゃんが解けない問題を作りたい」って。お兄ちゃんに勝ちたいという動機が最初にありました。

「勝てない領域で勝負するのが嫌い」という松丸さん【撮影=藤巻祐介】


――今年(2023年)は脱出ゲームの世界大会で優勝されました。「日本は脱出ゲーム世界一の国です!」と語っておられましたが、その想いとは?
【松丸亮吾】脱出ゲームは広まっているとはいえ、参加したことがない人もまだまだ多いのが現状です。脱出ゲームの性質上、答えを言えないので口コミでは広まりにくいですし、ゲーム実況みたいに画面を映せるわけでもありません。だから、みんなが脱出ゲームに参加したくなるようなきっかけが欲しいとずっと思っていました。

【松丸亮吾】たとえばWBCで日本が優勝すると「日本は野球大国なんだ」となりますよね。だから僕が脱出ゲームで世界一になったことより、日本にいる、日本人である僕が世界一になったということに意味があると思ったんです。それで脱出ゲームに興味を持ってくれる人がいると、謎解きの世界にいる僕もうれしい。

【松丸亮吾】それに「世界一」という肩書きは、小学生のときに「ひらめき」へと舵を切ったことが報われた瞬間でもありました。今は「クイズ王」として活躍する人がたくさんいますが、僕は記憶力がそれほどよくないので、彼らには勝てません。でも世界一になったことで、小学生のときに「ひらめきだったら勝てるかも」と思った僕はいい選択をしたのだと、再認識することができました。「IQサプリ」がなかったら、全然違う生き方をしていたんだろうな。

【写真】愛猫・リドくんのうちわを持つ松丸さん【撮影=藤巻祐介】


――「出合い」を「いい出合い」に変えられるのは、ご自身の努力の結果ですね。
【松丸亮吾】出合いといえば、リドくん(松丸さんの飼い猫)ともすごくいいタイミングで出合えたんです。ニュースの番組で保護猫の現場を取材するという企画があり、そこで出合ったのがリドくんでした。僕はもともと休憩が全くできなくて、働き続けたほうがいいと思っていました。でも、リドくんが甘えん坊で、仕事中もピタッとくっついてきたり、猫じゃらしを足元に置いて「遊べ」って顔をしたりするので、ちゃんと休憩を取れるようになったんです(笑)。

【松丸亮吾】アイデアワークを仕事にしているので、どうしても考えすぎたり詰まっちゃったりするんですよね。そんなとき、リドくんと遊んでメンタルも思考もリセットされると「あ、ひらめいた!」となります。あとは癒やし効果がすごくて、リドくんがいると納期に追われていてもリラックスできるし、謎解きを作成するスピードもめちゃくちゃ上がりました。

遊びが勉強の入り口に

――謎解きイベントやコンテンツは、どのような想いで作りだしているのでしょうか?
【松丸亮吾】学校や塾での勉強って、テストの点数で順位付けされますよね。順位が上の人は満足するけれど、たとえば300人中100位以下になると、上位を目指すモチベーションを失ってしまう。あまりいいシステムではないと思っています。「勉強ができないから自分は頭が悪い」「頭を使うことが向いてないんだ」と思ってほしくないんです。勉強や頭を使うことが苦手だと思っている人にこそ、謎解きを楽しんで、恐怖心や抵抗感をなくしてほしいと思って活動しています。

【松丸亮吾】「うちの子は謎解きをするために漢字の勉強を始めた」という声や、お子さんたちからのお便りも多くて、めちゃめちゃうれしいです。謎解きで遊ぶことが勉強の入り口になるんですよね。僕はやっぱり謎解きが好きで、謎解きに人生を救われたので、同じことを子どもたちにもしてあげたいと思っています。

謎解きを通して、頭を使うことの楽しさを伝えているという【撮影=藤巻祐介】


――周囲に還元したいという想いが強いのですね。
【松丸亮吾】僕はただ作りたいものを作っているだけなんですけどね。謎解きを作るのが好きで、それによって誰かを喜ばせたり、びっくりさせたりするのが好きなんです。だからサプライズパーティーとかを企画するとき、すごくいきいきしてます(笑)。アイデアワークをしている時間が好き。そのアイデアワークが誰かの人生を変えているなら、それはもっとハッピーだなって思います。

仕事と謎解きの共通点とは?

――テレビ出演も多く、多忙ななかでも会社を設立した理由について教えてください。
【松丸亮吾】謎解きを作っていこうと考えたとき、ひとりでできることには限界があるので、チームが必要だと思っていました。僕がテレビに出始めたころは、東大にある謎解きのサークルの代表をしていました。すごく優秀なクリエイターがそろっていたのですが、卒業後は出版社やテレビ局、不動産業などを志望していることを知って、せっかく謎解きを作る才能があってここまできたのに、謎解きの会社がないことが悲しいなと思いました。だったら僕が謎解きの会社を作るから、みんなでやらないかと言ったのが始まりですね。

――松丸さんが仕事で大事にしていることは何ですか?
【松丸亮吾】あまり妥協しないところがあって、それこそ仕事も謎解きみたいだと思っています。たとえば打ち合わせでどれだけ詰まったとしても、ちょっとしたひらめきで答えが出る瞬間ってあるじゃないですか。どんな状況でも僕は絶対に答えがあると思っているタイプ。今抱えている問題をいっきにクリアする何かがあると思っていて、謎解きみたいに楽しんでいますね。

仕事で行き詰まったときは「これもひとつの謎解きと捉えるとゲームっぽくなる」という【撮影=藤巻祐介】


――その考え方だと、困難な状況も楽しめそうです。
【松丸亮吾】そうなんです。謎解きのイベントに行くと、最終問題は伏線回収とかもあって、すごくよくできているんですよね。仕事をしていても「今、最終問題が解けた」みたいなアイデアが出ることがたまにあって、謎解きっぽいなと思います。仕事をゲームみたいに楽しむというのは、会社のみんなも心がけていることかな。

――リーダーとして大事にしていることは?
【松丸亮吾】「社長、死ぬほど働いているな」って見せることですね。クリエイティブの世界って難しくて、アイデアが出ないときもあるし、すごい速さでものづくりができる人もいる。決められた時間をしっかり働いたからといって、それでいいというものではありません。でも残業はしてほしくない。一人ひとりが自分の能力と戦い続ける業界だと思っています。

【松丸亮吾】僕はメディアにも出演するし、クリエイターでもあるし、社長もやる。リーダーとして指示を出すのではなく、それをみんなに見てもらうことで、社長すごいなって思ってもらうことが、クリエイターの会社として一番健全な姿だと思っています。

――最後に、今後の展望について教えてください。
【松丸亮吾】やりたいことが、2つあります。1つは世界大会でヨーロッパに行ったので、次は日本で世界大会をやりたい。そのためにはリドラが牽引して、謎解きを競技のようなものとして確立させていく必要があるなと思っています。

【松丸亮吾】2つ目は、リドラのメンバーで決めた目標で、謎解きのイベントを武道館でやることです。謎解きって武道館を埋めるほどの人はなかなか集まらないのですが、それができたら謎解きがもっと大きな文化になるはずです。武道館で謎解きをするには何が必要か、リドラを応援してくれる人をどうやって増やそうかということを、今みんなで考えているところです。

この記事のひときわ #やくにたつ
・自分が勝てる領域を見つける
・課題はゲームのように楽しみながら乗り越える
・アイデアワークには休憩や癒やしの時間も大切

取材=浅野祐介、文=伊藤めぐみ、撮影=藤巻祐介

この記事の画像一覧(全5枚)

キーワード

カテゴリ:
タグ:
地域名:

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

花火特集

花火特集

全国約800件の花火大会を掲載。2024年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

花火大会人気ランキング

ページ上部へ戻る