最も黒いゲルインクでギネス世界記録(TM)に認定!三菱鉛筆「ユニボール ワン」が探る、機能だけではない筆記具の“価値”

東京ウォーカー(全国版)

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三菱鉛筆のゲルインクボールペン「ユニボール ワン」シリーズが2023年7月3日、「最も黒いゲルインクボールペン“Blackest gel ink ball pen”」としてギネス世界記録(TM)に認定された。ボールペンを選ぶ基準は、書き心地や持ちやすさ、速乾性などがあるが、なかでも色の濃さに着目したのはなぜなのか。商品開発の背景や、デジタル化が進むなかで求められる筆記具の価値について、三菱鉛筆株式会社の商品開発部商品第一グループ係長、古場涼太さんに話を聞いた。

三菱鉛筆株式会社商品開発部商品第一グループ係長の古場涼太さん【撮影=山本晴菜】


「インクの濃さ」という特徴、どう伝える?

――「ユニボール ワン」シリーズが誕生した背景について教えてください。
【古場涼太】ゲルインクはカラーを作りやすいという特性があり、学生の方にご使用いただくことの多いジャンルです。学生向けに新しいボールペンを届けたいというところから開発が始まりました。黒はより濃く、カラーはより鮮やかに発色するインクが特徴です。

――商品を開発するにあたって苦労したことは?
【古場涼太】もともと社を挙げて開発したのではなく、2015年にひとりの開発者が始めて、このインクを作り上げました。新しいインクを作る設備もない状態からのスタートだったので、とても苦労したと聞いています。

【古場涼太】また、そのインクを私たちがどのような形でお客様に届けるか、というところも大変でした。インクの濃さをどう伝えたらいいのか。また、ボールペンのデザインがよくないと、手に取りたくないというお客様もいらっしゃいます。「インクの濃さの伝え方」と「デザイン」の両輪が必要でした。

「ユニボールワン」は2020年2月に発売。0.38mmは全27色、0.5mmは全15色展開【画像提供=三菱鉛筆】


――「黒色に関して、濃く、くっきりとした文字ほど記憶に残りやすい」という研究結果を発表されていますね。
【古場涼太】インクについてお客様に調査をすると「濃いほうがいい」というニーズが高く、「濃いほうが頭に入りやすそうな気がする」という声もあり、実際にそういう効果もあるのかもしれないと、立命館大学 総合心理学部 服部雅史教授監修のもと実験を行いました。

【古場涼太】認知心理学というジャンルで、濃い黒色が心理学的にどのような影響を与えるのかを調べる実験です。具体的には、濃いインクと薄いインクの両方で単語を書き出してもらい、そのあとで思い出してもう一度書く「記憶再生課題」というものです。すると、薄い文字より濃い文字で書いたほうが、思い出せる単語の数が多いとわかりました。そこから私たちは、「ユニボール ワン」で書いた濃い文字で勉強したほうが記憶の再生率がいいということを訴求させていただいています。

――2023年7月3日にギネス世界記録(TM)に認定された経緯を教えてください。
【古場涼太】「ユニボール ワン」は発売から3年ほどが経ち、おかげさまで多くの方に使っていただいていますが、“黒の濃さ”をもっとわかりやすく伝えることでよりたくさんの方に手に取っていただきたいと思い、ギネスにチャレンジすることになりました。

【古場涼太】ボールペンは目に見える進化というのが、なかなか難しいアイテムです。ひとりの開発者から始まり、仲間が集まって、小さな成果を積み重ねてきた結果が、ギネス世界記録(TM)というひとつの形として出たことは、私自身うれしくも思いますし会社としても勇気づけられました。

一般的なゲルインクと比べて紙への浸透を極力抑えた顔料を使用。それにより本来の色を発色できる【撮影=山本晴菜】


――ギネス世界記録(TM)認定後に変化はありましたか?
【古場涼太】お店から「ギネスのボールペンが欲しい」と問い合わせをいただいたり、すでに置いていただいているお店でも売り場の目立つところに出していただいたりしています。ギネス世界記録(TM)認定をフックに「ユニボール ワン」を新しく知ってもらう機会も多く、認定されてよかったなと感じています。

――デザインでこだわった点は?
【古場涼太】ゲルインクボールペンは以前からあるものですが、新しいブランドを立ち上げるにあたり「今までのものと違うよね」とお客様に一目でわかっていただくことが大事だと考えました。今までのボールペンは「事務用」っぽいものが多いですが、雑貨なども参考にしながら、お客様の生活になじむような、簡単にいうと「おしゃれなボールペン」にしようとデザインを一新しました。

(写真左から)「ユニボール ワン」「ユニボール ワン F」「ユニボール ワン P」。3品とも替芯は共通のため自由にカスタマイズもできる【画像提供=三菱鉛筆】


【古場涼太】大きく変わったのがクリップの部分です。ワイヤーになっているのは、デザイン性だけではなく、書類を留めるクリップのようにしっかりと挟めるという機能性も備えています。さらに従来のクリップはバネで開閉していたのですが「ユニボール ワン」ではバネを使っていません。金属製なのでプラスチック製に比べて耐久性も高いですし、自分たちで言うのもなんですがかなり画期的。デザイン担当がかなり頑張ったところです。

ボールペンを通じて楽しさも提供

――同シリーズの「ユニボール ワン F」「ユニボール ワン P」についても教えてください。軸の色名が特徴的ですね。
【古場涼太】「ユニボール ワン」を発売すると大人の方にも使っていただく機会が多いということがわかりました。そこで仕事でも使えるような、さらに上質なペンを作ろうと「ユニボール ワン F」を出しました。

「ユニボール ワン F」の「F」は「feel」から。ボールペンの軸全体を同じ材質にすることで、より洗練された印象に仕上げた【画像提供=三菱鉛筆】


【古場涼太】軸の色は上質な雰囲気を持つ落ち着いた色というだけでなく、日常の中で目にするような情景をコンセプトに選定して、「消炭」「無垢」「花霞」「茜空」といった色名をつけています。たとえば「茜色」は真っ赤ではなく、夕日の赤色をイメージしています。「赤」ではなく「茜色」とすることで、その情景を想起していただけたら、自分のボールペンに対して思い入れをより感じていただけるのではないかと考えました。ボールペンではこれまであまりない試みですが、香水の世界観などを参考にチャレンジしました。

【古場涼太】「ユニボール ワン P」はほかの商品と比べて短く、手帳用として使っていただくことの多いボールペンです。第一弾の軸色は「みかん」「コーヒー」「もも」「はっか」などがあり、「ほんのり甘いキャンディー」をイメージしています。キャンディーってみなさん一度は食べたことがあるものですよね。キャンディーのかわいさや癒やし的なイメージは共通のものだと思い採用しました。

「ユニボール ワン P」の「P」は「pocket」から。ころんとした可愛らしいフォルム(世界観)と上質な書き心地を両立した【画像提供=三菱鉛筆】


――色の名前はどのように決めているのですか?
【古場涼太】社内の担当者だけでなく、お客様の意見なども聞きながら決めています。個人差はあるものですが、たとえば「ハッカ」「はっか」では印象が変わりますよね。「ピーチ」と「もも」、「オレンジ」と「みかん」もかなり変わると思うんです。ほかにも「シャケ」はかわいいけど、「サケ」はかわいくないとか……(笑)。

実際にキャンディーなどを見ながら色名を検討することもあるという。「みんなの頭の中で同じようにイメージができることが大切」と古場さん【撮影=山本晴菜】


【古場涼太】名前を「もも」とすることでなんだかほっこりできる、そんな時間を提供することができれば、お客様は価値を感じていただけるのではないでしょうか。書きやすさや色など筆記具としての機能はもちろん、ボールペンを通じて楽しむことも求められていると感じます。

新しい価値を生み出し筆記具業界の活性化を目指す

――デジタル化が進んだことによる文房具業界の影響は?
【古場涼太】デジタルが筆記具に置き換わった部分もありますが、文房具好きの方の中では、ノートや手帳などアナログのものを、デジタルで共有して楽しむことも増えてきています。デジタルの力によって「私も書いてみたい」とボールペンを手に取るお客様が増えたとも言えますし、すごくおもしろい流れになっていると思います。

【古場涼太】また、ボールペン自体がかわいいと、ノートや手帳と一緒に撮って投稿してくれることもあります。こちらからPRしてお客様に手に取っていただくこともありますが、やはり商品を一番広めてくれているのはお客様です。お客様からはどう見えるのか、どういう使い方をしたくなるのか、というのを追求していかなければならないと思っています。

「ユニボール ワン」の公式キャラクター「ユニボールワンちゃん」【画像提供=三菱鉛筆】


――売り上げに変化はありますか?
【古場涼太】人口の減少やデジタル化などさまざまな要因はありますが、文房具イベントの規模などは年々大きくなっています。また、文房具の単価は上がっていると感じますね。

「色展開やデザインという手段にこだわらずに、お客様の求めに応えられる企画をしたい」と古場さん【撮影=山本晴菜】


【古場涼太】今までは100円台の商品が多かったので、社内で「この価格で売れるのか」という話はよく出ました。かつて筆記具は事務用品としての位置付けで、書くことができれば安い方がいいと捉えられていたのも要因のひとつです。しかしギネス世界記録認定(TM)もそうですが、新しいことを続けていき、新しい価値を生み出すことができれば、筆記具業界全体の成長につながると思っています。

――最後に「ユニボール ワン」シリーズの今後の展望について教えてください。
【古場涼太】お客様の生活に「ユニボール ワン」があることで、楽しさを感じられるような価値を提供し続けていきたいですね。そのためにお客様の声をしっかりと聞きながら、新しさや使い心地のよさを感じていただけるものを企画していきたいと考えています。「ユニボール ワン」シリーズはそれぞれ特徴のある商品なので、自分にしっくりくるものがあれば、ぜひお使いいただけるとうれしいです。

この記事のひときわ #やくにたつ
・商品の特徴をいかにわかりやすく伝えるかが大切
・ユーザーの楽しみ方にあった新しい価値を見出す
・ユーザーが商品を使うときの思いを想像してみる

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