「もはやトレンドにはしない」高価格帯でも売れる冷凍食品は働き方改革や飲食店維持の助力に!?冷食の新たな魅力に迫る!

東京ウォーカー(全国版)

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コロナ禍を機に国民の冷凍食品に対する需要は増加。そしてコロナ禍後も冷凍食品の市場は拡大し続けている。さらに冷凍食品に対する認識も大きく変化を遂げ、これまでの安くて味もそこそこだった冷凍食品ではなく、高級路線の冷凍食品が注目され始めた。2022年8月に東京・松屋銀座の地下にオープンした「GINZA FROZEN GOURMET (ギンザ フローズン グルメ)」は、まさに高級冷凍食品を取り扱う代表格。平均価格が2000〜3000円台の高級路線の冷凍食品売り場である。昨今の冷凍食品人気が追い風となり、これまでの「銀ぶらグルメ」シリーズに加え、2023年7月には新たに「浅草グルメ」シリーズも販売し、さらに多くの人気店の味を冷凍食品で楽しめるように充実のラインナップとなっている。

地下2階にある「GINZA FROZEN GOURMET (ギンザ フローズン グルメ)」の販売コーナー。高級感ある冷凍庫が目印【写真提供=株式会社松屋】


前回のインタビューでは、株式会社松屋 食品部課長の今井克俊さんにオープンにいたるまでの苦労や経緯について聞いた。今回は、開発秘話や高級価格帯でも売れ続ける「GINZA FROZEN GOURMET」ならではの魅力とプレミアム感、今後の商品展開について、掘り下げて話を伺っていく。

手探り状態でスタートした冷凍食品の開発秘話

株式会社松屋 食品部課長の今井克俊さん【写真提供=株式会社松屋】

ーーお店側からはどんな提案やアイデアがありましたか?
【今井克俊】レストランのメイン商品やこういうのを商品化したいなどお店側から希望はあったので、お互い話をしながらメニューを選考しました。冷凍食品って、レンジでチンしたり湯煎でボイルするだけのイメージが強いですよね。簡単に調理できるのが一番の魅力であると思いますが、GINZA FROZEN GOURMETには、ひと手間もふた手間もかかるような商品がなかにはあるんです。例えば、ひとつの商品でこの食材はボイルして、こっちはトースターで温めて、それぞれを合体させるとか。パッケージに細かく作り方が書いてありますが、一般的な冷凍食品よりは手間がかかるものが多いです。お客様のニーズとしては簡単なほうが喜ばれますが、これは作り手の皆さんのこだわりなんですよ。冷凍食品でお店の味を再現したいという強い想いがあるので、ちょっとだけ手間をかけていただく調理方法も特徴のひとつとなっています。

ーー開発するうえで心がけていることはありますか?
【今井克俊】やはり、各レストランのブランドや味を傷つけてしまうような商品は作りたくないんです。冷凍食品って、家庭の電子レンジでチンすると、温めすぎたりして意外と失敗することが多いと思うんです。それで「冷凍はおいしくないよね」と思われてしまうと、我々としては困ります。3000、4000円もする冷凍食品を販売しているので、それだけは避けたい。冷凍食品を食べて味を知ってもらい、お店でも食べていただくという循環も考えているので、お店にも影響が出てしまいます。そういうことにならないように、百貨店ならではの丁寧な接客で、作り方を念入りにお伝えするように心がけています。冷凍食品だけが売れればいいという考えではないので、その辺を十分理解しながらうまく循環させていきたいです。

銀座 日東コーナー 1948「ロールキャベツ トマトソース」1998円【写真提供=株式会社松屋】


ーー冷凍する機械はどうされているのですか?
【今井克俊】冷凍食品は、松屋オリジナルで作ることが目的ではないので、基本的にはお店に冷凍機を購入していただくスタンスです。冷凍機がないところは購入していただいたり、冷凍工場を紹介して冷凍だけするというパターンもあります。その他にも衛生面の検査、食材によって適した機種や冷凍方法など特徴があるので、今どこのメーカーがいいとか情報を提供してフォローさせていただいています。コロナは落ち着いてきましたが、それでもまだ飲食店の稼働率は100%に戻ってはいません。例えば稼働率が70%で残りの30%をどうするか?人員削減はできないので冷凍食品に活路を見出したいけれど、売り場がない。そういう飲食店にも松屋銀座のプラットフォームが役にたつと考えています。ECサイトも自社だけでやるのも大変なのでぜひ活用していただきたいと思っています。

ーー売り場の横に、何種類も保冷バックが並んでいますが、どういった理由でバリエーションを増やしたのでしょうか?
【今井克俊】保冷バッグに関しては、冷凍食品売り場を作る前に勉強させていただきました。冷凍食品には、生産から輸送・消費まで一貫して低温に保つ「コールドチェーン」という仕組みがありまして、マイナス18度以下をいかに維持できるかが大切なのです。つまり、作る場所の温度、輸送時の温度、販売時の温度、それとお客様に持って帰っていただくときの温度、家庭の冷凍庫の温度、これらすべてが低温で保たれていないとおいしさが再現できないと、冷凍の専門家の方から教えてもらいました。冷凍食品で一番最悪な状態は、溶けたものを再冷凍することだそうです。そこで、必ず冷凍状態を保って持って帰っていただくため、保冷バッグにも注目しました。簡易的なものから機能性と剛性を兼ね備えたものまで、バリエーションがそろっています。デザインが豊富にあったほうがお客様に楽しんでいただけますし、購入時にはドライアイスを必ずつけて販売するためどうしても重くなるので剛性も必要なんですね。お客様には、おいしく冷凍食品を味わっていただくために、作り方も大事ですが保冷温度についても気をつけてほしいですね。

オープンから1年半が経過、その後の売り上げやお客様の反応、そして将来の計画

地下2階にある「GINZA FROZEN GOURMET (ギンザ フローズン グルメ)」の販売コーナー。高級感ある冷凍庫が目印【写真提供=株式会社松屋】

ーーオープンから1年半立ちまして、その売上状況っていうのはいかがでしょうか?
【今井克俊】オープン時に、かなり多くのマスコミの皆さんに取り上げていただいたおかげでよいスタートを切れました。その後の打ち上げも我々の予測を上回っています。

ーーどのような点が勝因だと思われますか?
【今井克俊】オープン当初の売り上げの約6、7割は洋惣菜でした。これは、オープン前に競合他社の売り場をリサーチして、洋惣菜が一番売れると判断したからなんです。

ーーそのリサーチがばっちり当たったということですね!しかし、2023年7月に新たにスタートした「浅草グルメ」シリーズは和総菜なんですね?
【今井克俊】そうなんです!お客様の声で「和惣菜がもうちょっと欲しい」という要望もありましたので、そういう声を拾って展開いたしました。松屋は浅草にも店舗があり下町の老舗ともお付き合いしています。そこで、“The 下町”の冷凍食品も開発できればと考えたんです。そうすれば、銀座と浅草という、街の特性を生かした商品ラインナップをお客様にお届けできるな、と!

ーー「浅草グルメ」シリーズはどのような商品が目玉ですか?
【今井克俊】粋なお江戸の味を守り続ける老舗2店と、新店が続々オープンする“裏浅草”という注目エリアに店舗を構える1店とコラボさせてもらいました。「桜なべ中江」さんは明治創業で遊郭のある歓楽街として栄えた吉原の名物・桜なべの専門店です。また、「駒形前川」さんは浅草で220年以上の歴史を誇るうなぎ専門店。冷凍食品では、そんな老舗の味をそのまま自宅で再現して楽しめるように作っています。

吉原発祥の名物料理である「桜なべ中江」の桜なべ(4320円)【写真提供=株式会社松屋】


ーーそのほか、地方のグルメも取り扱うようになったとか…?
【今井克俊】はい、全国各地の高級料亭さんや有名レストランとも以前からお話をしておりまして、こちらも2023年7月に実現しました。京都の「京懐石 美濃吉本店 竹茂楼」さんにご協力いただき、京料理の洗練された味を冷凍食品で丁寧に再現いたしました。鰻鍋や鰻寿司、鰻茶漬け…という京料理には欠かせない鰻を使ったラインナップとなっています。また、地方の逸品も冷凍食品で楽しめるように各地の名店5店舗に協力いただきました。

【写真】「美濃吉本店 竹茂楼」の鰻鍋(10800円)【写真提供=株式会社松屋】


ーー商品に関するお客様の声や反応はいかがですか?
【今井克俊】味に関しては、すごく喜んでいただいておりまして、リピーターのお客様に数多く来ていただいています。しかも、「自分で食べてよかったから実家にも送りたい」「孫に贈りたい」「知人にプレゼントしたい」などと、百貨店の冷凍食品ならではのギフト用として購入される方も多いですね。結婚の内祝いなどにも利用していただけて大変ありがたいなと思っています。ちょっとお値段はしますが、贈り先でも銀座の名店の味が楽しめると大変好評です。しかし、たくさん買われたお客様から「箱がちょっと邪魔だわ」という意見もいただきました。家庭用の冷蔵庫の大きさって、業務用と違いそこまで大きくないんです。箱には作り方が記してあるためそれなりのスペースは必要なのですが、形状や大きさなどのバランスは取っていかなければと考えています。

銀座 みかわや「舌平目かに肉包揚げ」4212円【写真提供=株式会社松屋】


ーー自宅なのに高級レストランにいるような気分になりますから、誰かに贈りたくなるのも頷けます。そんな素晴らしいメニューを調理しているシェフから、苦労話など聞いていますか?
【今井克俊】そうですね。それがないと、なかなかあのお値段を出すのは勇気がいりますよね。そのため、各お店のシェフの皆さんには、「最終的に家庭でボイル、もしくは焼いて調理することが最終工程になるので、逆算して作ってください」と伝えています。家庭で少し火入れをしていただくので、ちょっと水分を多めに残したり、細かい部分まですごく考慮して作っていただいています。ただ単にでき上がったメニューを急速冷凍するだけじゃないんですよね。一見、お店のメニューと同じようですけれど、最後の工程をちょっと変更しているので、その部分での苦労話は耳にします。ボイルして温めると硬くなって食感が変わってしまうので、油の量を調整したり、微調整がすごく難しいらしいです。

ーー読者に向けて伝えておきたいことはありますか?
【今井克俊】冷凍食品はトレンドではないと思ってます。おいしく食べていただくために、我々と飲食店さん、それに大手メーカーさんも革命的な調理方法や技術を探して研究しています。我々もお客様と飲食店の期待を裏切らないようにおいしいものを作り認知度をもっと高めていけば、飲食店の働き方改革にもつながりますし、店を維持していく助けにもなると考えています。あと、繰り返しになりますが、冷凍食品は適当にチンしてもおいしくありません。せっかくシェフが手間暇かけて作り上げたメニューなので、作り方は必ず守ってください。そうすることで、ご家庭で本格的な銀座の味を楽しんでいただけます。

この記事のひときわ #やくにたつ
・簡単に調理できるのがメリットの冷凍食品を逆手に取り、「手間をかける」ことを特徴として付加価値を付ける
・地域の特性を生かしたブランド展開をする
・客からのリアルボイスを形にする

取材・文=北村康行

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