2023年で10周年!サッポロビールの大ヒットブランド「男梅サワー」は“企画会議の飴”という偶然から生まれた商品だった?

東京ウォーカー(全国版)

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ノーベル製菓株式会社(以下、ノーベル製菓)が販売するブランド「男梅」。秘伝の男梅パウダーを使用し、梅本来のおいしさである塩味・酸味・旨味・甘味のバランスが絶妙なお菓子で、現在はコンビニエンスストアを中心に、キャンデーやグミ、シートなど、多様なラインナップが並んでいる。

そんな男梅とコラボしたお酒「男梅サワー」をご存じだろうか。これは男梅のしょっぱいうまさをお酒で楽しめる“梅干し”サワーで、梅干しまるごと粉砕浸漬酒を使用した、「唯一無二の梅干し感」を味わえるのが特徴だ。そんな男梅サワーは2023年で発売10周年。男梅という名前ながら、性別や年齢の垣根を超えてさまざまな世代に愛されている。

だが、子どもがターゲットのお菓子と大人が飲むお酒のコラボの実現は、非常に珍しいことではないだろうか。今回は男梅サワーを発売するサッポロビール株式会社(以下、サッポロビール)を訪れ、マーケティング本部 ビール&RTD事業部 RTDグループ 男梅サワー ブランドマネージャーの高原務さんに男梅サワーの誕生秘話やブランド展開について話を聞いた。

サッポロビール株式会社 マーケティング本部 ビール&RTD事業部 RTDグループ 男梅サワー ブランドマネージャーの高原務さん【撮影=福井求】


開発のきっかけは偶然から!?男梅サワー誕生秘話

男梅サワーが生まれたのは今から10年前の2013年。当時のサッポロビールは、RTD(Ready To Drink)と呼ばれる、缶チューハイや缶カクテルといった、ふたを開けてすぐにそのまま飲める酒類の分野では後発の企業だった。競合他社がレモンやグレープフルーツなどの柑橘系メインのフレーバーを展開するなか、サッポロビールはどのように市場に参入していくかが課題となっていた。

「当時の担当者たちが『RTD事業をどうしていこうか…』と思案していたころのことです。ある日、商品の企画会議に社員のひとりが、男梅キャンデーを持ってきていました。それをみんなで舐めながら打ち合わせをしていると、『梅干し味のサワーをつくってみたらおもしろいのでは?』という意見が出てきました。そこで、レモンやグレープフルーツといったほかの企業が出しているフレーバーではなく、『男梅味』をつくってみてはどうか、ということに行きついたのがそもそものスタートです」

「たまたま男梅キャンデーを持ってきた社員がいたから、男梅サワーが生まれた」と話す高原さん【撮影=福井求】


偶然から生まれたこの商品企画。「一か八かでノーベル製菓さんに提案してみよう」という流れになり、大阪にあるノーベル製菓に出向くことになった。無事に企画が通ったあとは、毎回「男梅サワー」の試作品を3種つくり、保冷バッグに入れて大阪へ運んで試飲してもらうという日々が続いたという。このような開発を2年ほど続けてようやく完成した男梅サワーは、男梅キャンデーの長所である「梅干し感」を見事に実現した商品となった。

「商品開発は弊社がメインで行い、味の了承をノーベル製菓さんからいただき、最終的に両社の納得する商品をつくり上げたというのが開発の流れでした。男梅独特の味わいは梅でもなく梅酒でもありません。そのため、男梅ブランドの持つ梅干しの味を、サワーで表現していくのが一番苦労した部分でもありますね。ですが、この部分に徹底的にこだわれたからこそ、10年も続くロングセラーになれたのではないかと思っています」

【写真】「男梅サワー」。2023年より「唯一無二の梅干し感」というコピーがついた【提供=サッポロビール】


サッポロビールは男梅サワーを2013年の春に限定発売にて展開。その後、小売店や消費者からの反応がよかったために、同年の秋にはレギュラー商品として販売することになった。また、プロモーションにおいてはテレビCMなどの宣伝をあまり行ってはいなかったそうだが、ノーベル製菓の男梅ブランドが世の中に広まっていたこともあって、発売当初から認知度が非常に高かったという。「みんなが知っているお菓子がお酒になったことも、ヒットの要因のひとつだと思います」と高原さんは話す。

コロナ禍で大きく新調!男梅サワーのブランド展開

男梅サワーはこの10年の間に急成長を遂げ、売り上げも順調に上がっているという。特に、リモート飲みが流行したコロナ禍の期間には大きく伸長し、2020年が前年比で約1.4倍、2021年は前年比1.2倍と売り上げを大きく伸ばした。2022年には売り上げが一時的に落ち着いたものの、2023年にはブランド計で過去最高の売り上げとなる見通しだ。この商品が好調な理由は、梅干しというフレーバーがさまざまな料理に合うこと、そして時代に合わせたブランド展開を行っていることだ。

しっかりとした梅干し感と飲みごたえが特徴の「超男梅サワー」【提供=サッポロビール】


男梅サワーブランドが出発した2013年には、350ml缶や業務用シロップの販売を通年化のタイミングでスタート。お店でも家でも男梅サワーを楽しめるという市場をつくり出すことに成功した。2017年ごろにはアルコール度数9%のRTD市場が盛り上がりを見せていて、この市場に参入するために度数高めの「超男梅サワー」を発売。この商品もレギュラー化するほどに好調な売り上げを見せている。

「また、直近のRTD市場では無糖が盛り上がりを見せています。いわゆる甘くないチューハイですね。近年では1杯目からチューハイを飲む方が増えているのですが、そのような際に賛否や好みが分かれるのが『甘さ』なんですよね。そこで、弊社では新しい市場に挑戦していきたいと思い、『男梅サワー ウメぇ無糖』という商品を発売しています。無糖にして甘さを抑え、梅の味わいを凝縮したエキスを加えていますので、しっかり梅干しの味になっています」

無糖にして甘さを抑えた「男梅サワー ウメぇ無糖」【提供=サッポロビール】


直近では商品展開だけでなく、飲み方の提案も行っているという。ブランドラインナップの「男梅サワーの素 20度」は、グラスに氷を入れて炭酸水で割るだけで、簡単に男梅サワーがつくることができるという代物。公式サイトの中でシソやショウガを足したり、グラスの縁をぬらして塩を塗ったりするといったレシピを紹介している。ただただ男梅サワーを飲んでもらうだけでなく、商品を楽しむバリエーションの豊かさを訴求している。

唐辛子を入れた「冬の陣」【提供=サッポロビール】

梅を丸ごと入れた「梅落とし」【提供=サッポロビール】

関西で人気の紅しょうがを入れた「浪花咲き」【提供=サッポロビール】


このような多方面の商品展開や楽しみ方の提案ができるのは、もともとの認知度の高さに加え、男梅ブランドの持つ梅干しというフレーバーが消費者に受け入れられたからだと高原さんは話す。梅干しは日本文化を代表する、日本人が古来より食べてきた食品。発売初期に比べて梅干し感はさらにレベルアップしているそうだが、基本的な味のベースはほとんど変わっていないという。そのため、さまざまな食事や料理との相性がよく、日本人好みの味わいになっているのが、ブランド全体がロングセラーになった秘密だ。

「男梅サワーの素 20度」。グラスに氷を入れて、炭酸水で割るだけで、簡単に男梅サワーが作れる【提供=サッポロビール】


すべての世代に愛される「男梅」ブランドを

見た目も味わいも本家であるノーベル製菓の男梅ブランドを踏襲し、展開をしている男梅サワー。他社の商品と比べて大きく異なるのは、ほとんどの人が子どものころからブランドを知っているということだ。そのため、20歳になって初めて飲んだお酒が男梅サワーだったという人も少なくないのだとか。特に、20〜30代の消費者の売り上げ構成比がほかのチューハイと比べると高く、お菓子から連想される味わいや、小さいころに食べた記憶が影響しているのではないか、と高原さんは話す。

「やっぱりお菓子のイメージがすごく強く、だれもが一度は食べたことのある味というのが全世代にヒットした大きな理由だと思います。そのため、ロゴのデザインや大きさなども基本的には変えておらず、ずっと使い続けています。認知を拡大するうえでも、変えてはいけないところは決して変えないというのも、ヒットのためにはすごく大きな要素なのかな、と思っています。ですが10年続いているブランドのため、どのようにしたら古く見られないか、なども意識しながら新商品を開発しています」

「男梅サワー 通のしょっぱ梅」商品開発AIシステムを活用した初の商品だ【提供=サッポロビール】


2023年には横展開としてしょっぱさを際立たせた「男梅サワー 通のしょっぱ梅」、先述の「男梅サワー ウメぇ無糖」といった商品を発売。そして、最も大きな変化は『唯一無二の梅干し感』という強めのコピーがパッケージに書かれたことだ。これは梅干しにベースを置きたいというところ、そして梅干しの味わいは競合他社では真似できないというところから、梅干し感がブレないように記載することになったという。男梅サワーの持ち味は、梅干しであることがすべて。今後はこのコンセプトから外れないような展開をしていく予定だそうだ。

「男梅サワーの素 20度」。こちらは主に業務用で使用されるもの【提供=サッポロビール】


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