アメリカ経済のリセッションは起こるのか
ソロスの考え方でいえば、いまのアメリカの状況は「利上げによる下げ圧力よりも投資家のセンチメント(感情)のほうが強く左右しているに過ぎない」ものであり、市場は実態以上の割高な株価になっています。つまり、歪んでいるのです。
また、アメリカの経済力もその歪みに耐えるほど強いことも要因です。利上げによって住宅ローンは30年で固定金利が6%を超えています。日本だったら借りる人なんていないでしょう。でも、それでもアメリカ人の貯蓄率は高く、お金を借りて家を買おうとする人がいるほど経済力が高いのです。
しかし、いずれ利上げの効果が出て、アメリカ経済は停滞し、株式相場も下落していきます。これまでアメリカ経済は、景気後退が起これば株価は100%の確率で底値をつけてきましたし、直近でいえば、2008年に利上げを行った際は、翌年にリーマンショックが起こっています。
そして現在は、40年ぶりのインフレ危機を避けるために、FRBは過去にないほど急速な利上げを昨年末まで行いました。金利の変動が株式相場に影響を与えるには1年〜2年かかることを思えば、「金利が上がってもアメリカ経済は上がり続ける」というのは拙速な考えといえるでしょう。
実際にデータを見てみれば、すでに2022年の時点でアメリカのGDPは、第1四半期、第2四半期に連続で低下し、景気後退の波が確実にきていることが読み取れます。通例であれば、全米経済研究所という機関が景気後退を宣言することで、正式に「アメリカ経済は景気後退した」と世間は認識するのですが、昨年は発表を見送られました。そのため、市場も景気後退を実感せず、支配的バイアスの波は継続しています。
今年もFRBの利上げは続いており、今年の全米研究所の発表次第ではリセッション(景気後退局面)への突入ともなり得ます。いま、株高の波に乗ってグロース株などを保有している人は注視しておくべきでしょう。
構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=吉田大悟