3年ぶりに立ち読み解禁。ブックオフが創業時から立ち読みを推奨し続けてきた理由とは

東京ウォーカー(全国版)

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本など中古品の買い取り・販売大手のブックオフが2023年6月、コロナ禍で禁止していた店内での立ち読みを解禁した。書店では敬遠されがちな立ち読みを推奨するのは、なぜなのか?ブックオフグループホールディングス広報の小湊貴治さんに話を聞いた。

ブックオフはFC加盟店も含めて約800店を展開。チェーン全体での年間レジ通過客数は約8000万人という【画像提供=ブックオフグループホールディングス】

コロナ禍で立ち読み禁止、閑散とした店内

新型コロナウイルスの感染拡大防止策として、緊急事態宣言が出された2020年春。ブックオフの店頭では「立ち読みはご遠慮ください」というポップが貼り出された。1990年の創業当時から「立ち読みOK」としてきたが、客や従業員を守るため、やむを得なかった。日本中が自粛ムードに包まれていたこともあり、社内外の理解は得られたというが、小湊さんは「今までにぎわっていた店内が閑散として、少し寂しいなとは感じました」と振り返る。

コロナ禍では、立ち読みの禁止のほか、休業や時短営業の影響で客足が鈍り、店舗での売り上げに大きく影響した。一方で好調だったのは、ネット販売と宅配買い取りだ。

「完結セット」「長編セット」などを販売するセットコミックコーナー【画像提供=ブックオフグループホールディングス】

小湊さんは「コロナ禍の巣ごもり需要で、ネットでは全巻セットの購入など、まとめ買いのお客様が多かったですね。また、部屋を掃除したり、整理したりする時間が取れたということもあり、ネットによる宅配買い取りが2020年5月から9月まで増えました」と話す。

また、2019年のコロナ禍前から進めていた「ひとつのBOOKOFF」構想も、売り上げを支えた。オンラインと店舗、買い取りと販売など、あらゆるサービスをつなげる取り組みで、アプリを介して、各店舗の書籍をネット上で購入できるように仕組みを整えていたのだ。

「気軽に立ち寄れる古本屋さん」コンビニを参考に

コロナの5類移行をきっかけに「立ち読み解禁宣言」を行うと、店舗には以前のように活気が戻り、「気兼ねなくまたブックオフを利用できるようになった」「ゆっくりと本を選ぶ時間をとれてよかった」などと反響があった。小湊さんは「やはり人がいないお店より、人がたくさんいるほうがうれしいですね。お客様がいらっしゃるほうが、従業員も楽しく働けると思います」と話す。

ブックオフ1号店【画像提供=ブックオフグループホールディングス】

ブックオフの1号店は、1990年5月に神奈川県相模原市でオープン。当時から立ち読みを推奨していた理由について、小湊さんは次のように話す。

「創業社長の坂本孝がブックオフを立ち上げるときに、神保町や荻窪の古本屋さんを回ったそうです。当時の古本屋さんには職人のような目利きの店主がいて、店内は薄暗く、少しほこりもかぶり、閑散としていて、古書に興味がある人だけが行く。そんなイメージを変えて、気軽に立ち寄れる古本屋さんにしたかったようです。そこで、比較的新しい本を扱い、明るくてきれいな店内で、お客様でにぎわっているような場所にするために、コンビニを参考にして店舗をつくり、その一環として立ち読みを推奨してきました」

特に力を入れているのが本の補充。常連客がいつ行っても、新しい本がある状態を心がけている【画像提供=ブックオフグループホールディングス】

ブックオフは加盟店も含めて立ち読みを推奨してきた。だが、コロナ禍以前に立ち読み禁止の動きがなかったわけではない。コミックなどは店頭で全巻読み切ってしまう人もいるため、社内からは「購入の機会が減るのではないか」という声が上がったこともあった。だが創業当時の思いは変わらず、「お客様がブックオフに立ち寄っていただくことが第一です」と小湊さん。一部店舗では、通路が狭いといった理由で立ち読みを禁止した時期もあったが、それを除けば「立ち読みOK」を続けてきた。

本との「出会い」はリアル書店ならでは

ブックオフは、ゲームやスポーツ用品、ブランド品、洋服なども扱っていて、本の売り上げは25%ほどだが、チェーン全体で年間約2.7億冊の本を買い取り、約1.2億冊が常に店頭に並ぶ。

「朝はご年配の方が多いので、そういった方たちが好きそうな時代小説や文庫本の補充は後回しにするなど、お客様のペースで立ち読みを楽しんでいただく工夫をしています」と小湊さん【画像提供=ブックオフグループホールディングス】

「これだけの本を扱うチェーンは、国内でも最大級だと思うので、本の魅力をもっともっとアピールしていきたい。立ち読みをしなくても、あらすじや本の特徴がわかるようにポップを貼ったり、逆に本を袋で覆って、おみくじ的な感覚で本を選んでいただく売り場を作ったり。ブックオフに行きたいと思うような、ドキドキ感、ワクワク感のある売り場づくりを進めていきたい」

口コミ評価の書かれたポップが本に添えられている【画像提供=ブックオフグループホールディングス】

「書店で本と触れ合える場所を提供したい」という思いから、書店がない自治体で、販売専門の店舗「ふるさとブックオフ」の展開も進める。2023年8月、岩手県西和賀町に1号店がオープンしたばかり。廃校の本棚を活用して、ロングセラー書籍、コミック、文庫本、児童書、絵本など、常時約3000冊が並ぶ。

「リアル書店の醍醐味は一期一会」と小湊さん。「ネット社会であっても、リアル書店をご利用いただくお客様の目的は何なのかと考えると、やはり商品との出会いだと思うんです。ネットだと指名買いが多いですが、リアル店舗では実際に表紙を見て、背表紙を見て、ページをペラペラとめくり、この本が欲しいなと思う。商品と出会うきっかけを提供できる場にしたいですね」

この記事のひときわ #やくにたつ
・ネット社会だからこそ「リアル」の強みを活かす
・オンラインと店舗の連携によって、世の中の状況の変化やさまざまな利用者に対応する

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