コロナ禍を経てラジオ体操に変化?小学校では減少傾向の一方、高まる企業・海外需要の理由とは

東京ウォーカー(全国版)

X(旧Twitter)で
シェア
Facebookで
シェア

新しい朝が来た 希望の朝だーー。子どものころ、夏休みになると朝6時半から流れる音楽に合わせて、ラジオ体操をしたという人は多いのでは。コロナ禍をきっかけに、テレワークをしている社員の運動不足を解消するため、ラジオ体操を取り入れる企業が増え、その価値が見直されている。だが一方で、自治会の人手不足などにより、夏休みのラジオ体操は減少傾向にあるという。SNSでは騒音問題が取り沙汰されるなど、ラジオ体操を取り巻く環境は変化しているようだ。

公園に集まりラジオ体操をする人たち【画像提供=全国ラジオ体操連盟】


ラジオ体操は3分でできる全身運動

全国ラジオ体操連盟の福士康夫さんによると、テレワークの浸透をきっかけに、企業からラジオ体操動画の使用申請が相次いでいるという。「全身運動ですので、普段使っていない筋肉も使います。真剣にやると汗をけっこうかく。ラジオ体操を継続的にしている人は、体内年齢が実年齢よりも20歳ぐらい若いという調査結果もあります」と福士さん。

一般財団法人簡易保険加入者協会は2013年度に、ラジオ体操を3年以上、週5日以上実践している55歳以上の男女を対象に調査を実施。体内年齢のほか、血管年齢、呼吸機能(肺年齢)、体力年齢などの平均値も、実年齢より若いという結果が出た。医療費削減にもつながることから、ラジオ体操会を活用している自治体もある。

埼玉県ふじみ野市で実施した「夏期巡回ラジオ体操」【画像提供=全国ラジオ体操連盟】


夏になると「ラジオ体操の音がうるさい」。低下する小学校での実施率

一方で、小学校では実施率が低下している。簡易保険加入者協会が2021年に行った調査によると、調査に協力した小学校2437校のうち、ラジオ体操を実施しているのは63.2%にあたる1539校。2004年度の調査では、実施率76.4%だったことから、20年弱で10ポイント以上も低下している。

夏休みに公園などで行われるラジオ体操は、主にその地域の自治会や子ども会が主催している。福士さんは「朝早くから準備をしないといけなので、担い手が見つからず、実施を取りやめたところもあると聞いています」と話す。また、共働き世帯の増加もあり、子ども会の役員を務められないという人も増えているようだ。

【画像】マイナス26度で開催されたこともあるという北海道北見市の「耐寒ラジオ体操・みんなの体操会」【画像提供=全国ラジオ体操連盟】


SNSではラジオ体操の騒音問題が話題になったが、こうしたトラブルは昔からあったという。「夏になると、毎年何件かは『ラジオ体操の音がうるさい』という苦情が私どものほうに寄せられてきます」と福士さん。全国ラジオ体操連盟のホームページでは「朝のラジオ体操会での音量にご配慮ください」と呼びかけるなど対策を行っている。

「ラジオ体操というのは、草の根で行われている活動ですので、私どもがすべての体操会に、直接指示ができないんですね。苦情があった場合は、代表者の方の連絡先がわかれば『音量を少し絞ってください』とお願いはしますが、連絡先がわからない体操会もございますので、その場合は当事者同士でお話し合いをしてください、とお願いしています」(福士康夫)

「いつでも、どこでも、だれでもできる」ラジオ体操、海外でも

ラジオ体操は2023年11月、放送開始95周年を迎える。福士さんは、ラジオ体操について「いつでも、どこでも、だれでもできる」と話す。ラジオ体操が行われるのは、国内だけにとどまらない。ラジオ体操連盟は、講師を海外に派遣したり、国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊に向けてラジオ体操の研修をしたり、海外での普及活動も行っている。

ラジオ体操を行うモンゴルの児童生徒たち【画像提供=全国ラジオ体操連盟】


「ペルーでは、日常生活において運動をする習慣がありません。そこで日本政府による国際貢献事業『スポーツ・フォー・トゥモロー』が、2018年にラジオ体操を提案しました。すると、ペルーの教育省では『3分間でできて、これはいい』となった。翌年、ラジオ体操の講師を派遣して、小学校やリハビリセンターなどを回ってラジオ体操をレクチャーしました」(福士康夫)

ラジオ体操を行うペルーの国立女学校の生徒たち【画像提供=全国ラジオ体操連盟】


ペルーのほかにも、トンガ、モンゴル、タイ、シンガポール、ブラジルなどにラジオ体操の講師を派遣してきた。コロナ禍にはオンラインによる講習会も開いた。モンゴル語、スペイン語版のラジオ体操の動画を制作し、全国ラジオ体操連盟の公式YouTubeチャンネルで公開している。

講習会の様子【画像提供=全国ラジオ体操連盟】


全国ラジオ体操連盟は、春と秋に日本各地でラジオ体操の講習会を開いている。1時間半ほどかけて、身体の動かし方の細かいポイントや、どの部分を鍛えているのかなどを指導する。「誤った体操をすると効果が半減しますので、正しい動きを理解していただきます。ただし実際にやるときは、無理をしないことも大切です」と福士さん。指導者の育成が目的だが、ラジオ体操を正しく身につけたいという人の参加も歓迎しているという。運動不足を感じている人は、参加してみてはいかがだろうか。

この記事の画像一覧(全6枚)

キーワード

カテゴリ:
タグ:
地域名:

テーマWalker

テーマ別特集をチェック

季節特集

季節を感じる人気のスポットやイベントを紹介

花火特集

花火特集

全国約800件の花火大会を掲載。2024年の開催日、中止・延期情報や人気ランキングなどをお届け!

花火大会人気ランキング

ページ上部へ戻る