「努力が報われる世界を作りたい」東大在学中に起業、教育格差の解消に挑むヨンデミー代表の目指す未来

2023/05/24 19:00 | 更新 2023/05/25 10:27
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読書できるかどうかが、子どもの可能性やポテンシャルに影響する

「僕自身が読書による教育の力にすごく恩恵を受けた」と笹沼さん。英語多読や家庭教師の経験からヨンデミーが生まれた
「僕自身が読書による教育の力にすごく恩恵を受けた」と笹沼さん。英語多読や家庭教師の経験からヨンデミーが生まれた【撮影=三佐和隆士】

――笹沼さんは中高生のとき英語多読の塾に通われていて、それがヨンデミーのアイデアのヒントにもなったと伺いました。英語多読とはどのようなものなのでしょうか?
【笹沼颯太】読書を通じて英語を学ぶ学習法で、なぜその塾に入ったかというと「単語帳を使わない」と言われたからです。単語を覚えるのが嫌いで(苦笑)。日本人が日本語を学ぶときに単語帳を使わず、絵本から始まり本を通じて母国語を習得するように、英語でも同じことをやったらネイティブな英語が身につく、という考え方の塾なんです。

【笹沼颯太】僕が入塾したのは中学3年生のときだったのですが、先ほど言ったように暗記が嫌いだったため英語の成績が下から5番目に入るくらい苦手で、それを心配した友人が「本好きだろ」と、「楽しいから一緒に行こうよ」というふうに言ってもらって始めました。高校3年生のときにTOEICを受けたところ990点満点中970点を取ることができ、僕自身が読書による教育の力にすごく恩恵を受けたんですよね。

【笹沼颯太】また、その塾で講師をしていたこともあるのですが、僕のように英語が苦手な子だけでなく読書が嫌いな子もけっこういました。教えるうえで、英語を嫌いな子がどうやったら楽しめるか、読書を嫌いな子はどうやったら読む習慣がつくのか。そういったことを考えながらやっていたので、同様のことを日本語でもできるのではないかと思ったのがきっかけです。

【笹沼颯太】脱線しますが、実は、当時塾に誘ってくれた友人はヨンデミー創業者のひとりなんです。今その友人は別のことをしているので事業からは離れていますが。もうひとりの取締役も中学1年生から一緒の友人で、立ち上げメンバーとはもう10年以上の付き合いになりますね。

――子どもと接するなかで、実際に読書が苦手なんだなと感じる瞬間はありましたか?
【笹沼颯太】それを強く感じたのは家庭教師をしていたときですね。大学1年生のころから家庭教師をやっていて、だいたい小学4年生くらい、塾に入り始めて受験を目指そうという子たちだったのですが、親御さんみんなに同じ質問をされたんです。「先生は小さいころどんな本を読んでいましたか?」「どうやって本を好きになったのですか?」と。

【笹沼颯太】メディアなどでも、“東大生が読んでいた本ランキング”といった特集があったりしますが、なぜそんなことを聞くのか疑問に思い理由を聞いてみると「うちの子は読書が嫌いで国語が苦手。算数の文章題も苦手だし、理科や社会もテストで解けなくて全教科で困っているんです」と説明してくれました。それを塾で相談すると「本を読んでください」と言われるらしいのです。塾で教えられる国語はテクニックで、指示語を追いましょうとか、そういうことしか教えられないから本を読むしかないと。「そもそも本が嫌いだからそうなっているのに、本を読めと言われてもどうしたらいいのか……」となり、僕に質問してくれたそうなのです。

――大学受験の問題文なんかは、特に長くて難解ですよね。
【笹沼颯太】最近はテストの形式がセンター試験から共通テストに変わり、問題文の文章量が確かページ数にして3倍に増えたそうです。問題文にストーリー性があり、日常生活に近い形で数学を使おうという思考になってきていて、一方で子どもたちは動画世代で文章を読み込む力が下がってきているという、ギャップがすごく広がっているように感じます。

【笹沼颯太】最近では本をおすすめしてくれるサイトなどがとても増えましたよね、大人向けにしても子ども向けにしても。でも、本を読めるようになる方法は誰も提供していないし、学校でも読書の教育というものはない。そう思ったときに、僕はその方法を持っているし、それを届けてあげたいと思いました。読書が苦手なことに対して、子どもはもちろん親も苦しんでいる。これは起業してから知ったのですが、日本では95%の家庭が読み聞かせをしていて、95%の家庭が子どもに本を好きになってほしいと思っているんですよ。でもいつの間にかYouTubeなどほかのコンテンツに興味が移ってしまっている。周りの環境によって、読書を好きになれるかどうかが子どもの意思の外で決まってしまう状況になっているのです。

【笹沼颯太】起業してからますます、読書ができるかどうかで大きく変わると感じていて、僕は学生起業なうえにもともと起業なんて考えていなかったので知らないことだらけでしたが、それでも今経営ができているのはやはり本をたくさん読んだからだと思います。先輩経営者が書いた本が膨大にあって、どんな失敗をした、こういうことに気をつけるべき、といった情報を、経験していなくても本から学ぶことでなんとかできるようになる。これができたから僕はやりたいと思ったことを実現できていますが、本が読めないとそうはいかないんだなと思うと、本が読めないというのは子どもの可能性やポテンシャルがすごく制限されてしまうことだと感じています。

――たくさんの子どもたちにヨンデミーを使ってほしいですね。
【笹沼颯太】日本中の子どもたちに届けられるように、できることをどんどん探していきたいです。

※:https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/mext_00665.html(文部科学省)

ヨンデミーオンライン(https://lp.yondemy.com/)
月額定額制のオンライン読書教育の習い事サービス。

おうち読書のミカタラジオ(https://yondemy.wraptas.site/seminar)
読書教育を通じて教育の『見方』をアップデートし、また保護者さま同士でおうち読書の話をシェアして、おうち読書の『味方』になるPodcast番組。株式会社Yondemy 代表取締役の笹沼颯太が番組ホストを務める。

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