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幻のポスト44年ぶり復活の永谷園、社内に根付く“ぶらぶら社員”精神がヒットの鍵

2023/05/17 09:00
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二代目ぶらぶら社員はCMのあのイントロを導入した人物だった

ーー二代目に木内さんを任命された決め手を、永谷会長から聞いていますか?
【古谷萌】1つ目は、食に対する強い関心、興味があったこと。2つ目が、外食を含めて情報量が豊富なこと。そして、なんといっても味覚が優れていることだそうです。木内は開発部での商品開発や宣伝部でのCM制作などを通して、会長とは長い期間一緒に仕事をしていました。そのため会長は、木内のそういった素質を見抜いていたようです。

【古谷萌】会長自身も商品開発担当をしていたので、いいアイデアが仕事以外のところ、例えば床についているときなどにふっと思いつくということを熟知しています。この制度の根本の発想はそこにあって、木内は長らく開発・宣伝で活躍していて、食に対する強い関心や興味もある人物なので、「その経験をもとに自由な活動のなかで何か開発のヒントを得てくれたら」と期待しているようです。

【写真】二代目ぶらぶら社員に任命された木内美章さん
【写真】二代目ぶらぶら社員に任命された木内美章さん【画像提供=株式会社永谷園ホールディングス】


ーー永谷会長から絶大な信頼がある方なんですね。木内さんのこれまでの経歴を簡単に教えてください。
【古谷萌】木内が入社した年は、偶然にも初代ぶらぶら社員が生み出した「麻婆春雨」発売の年でした。最初に所属していた開発部では、お茶漬けやふりかけといった既存商品と、ホットケーキミックスなど洋風商品を担当しました。

1998年に木内さんが開発に携わった「ふりかけ 納豆さまさま」(終売商品)
1998年に木内さんが開発に携わった「ふりかけ 納豆さまさま」(終売商品)【画像提供=株式会社永谷園ホールディングス】


【古谷萌】そして宣伝部に入ってからは、CM制作やWeb広告制作などを担当しています。今、テレビCMの冒頭に必ず入っている、お茶漬けの「シャッシャッ」というサウンドロゴと映像がありますよね。それを2005年に導入したのが木内なんです。このイントロのおかげで、どのCMでもお客様に永谷園だと気づいていただけるようになり、ブランドイメージの確立に貢献したんです。そのおかげで木内は社内の表彰制度で社長表彰となるゴールド賞を受賞するなど、さまざまに活躍していて、社員からの信頼も厚いですね。

木内さんが手がけたCMのイントロに流れるサウンドロゴ
木内さんが手がけたCMのイントロに流れるサウンドロゴ【画像提供=株式会社永谷園ホールディングス】


ーーすごい!誰もが知っているイントロじゃないですか。そういえば永谷園のCMは印象に残るフレーズや曲が多いですよね。
【古谷萌】創業者の永谷嘉男がブランドの重要性をすごく重視していたので、ロゴやパッケージもそうなんですけど、商品の魅力を伝える部分は当時テレビCMが主力で、インパクトを残す部分にかなり力を入れていたと聞いています。

ーーそんな木内さんは、ぶらぶら社員に任命されてどう思われたのでしょうか?
【古谷萌】木内は、3月に急に会長室に呼ばれて、「4月1日から特命で二代目ぶらぶら社員に任命する!」と、本当にそれだけ言われたみたいです。本人も初代の制度は知っていたので、「とにかくびっくりで、本当に頭が真っ白になりました。ただ、制度自体が想像とかひらめきを実現する弊社らしいものではあるので、それを担当することには使命を感じているとともに、やっぱりプレッシャーはあります。新商品を生み出せるのか…そういうことを考えると逆によろしくないと思うので、ニュートラルな気持ちで進めたい」と語っています。

【古谷萌】ただ、「今までと同じく、おいしいものや興味を持ったものに“遊び心を持って楽しむ”という気持ちを大切に、食べまくります」とも言っていました。まだまだ厳しい社会情勢・環境である今だからこそ、ぶらぶらすることが大事で、得るものがあるのかもしれないというふうに考えているようですね。

誕生から44年、社内に浸透した「ぶらぶら社員制度」の精神がヒット商品を生むきっかけに

ーーほかの社員の皆さんも「ぶらぶら社員制度」のことは知っていたのですか?
【古谷萌】もちろんです。「ぶらぶら社員制度」のおかげで、外に出て試食することを積極的に行うということは、弊社の商品開発の考え方として根付いたんです。でも、まさか今の令和に復活するとはたぶん誰も思っていなかったと思います。私も「え〜!やるんだ」って思いました。

「ぶらぶら社員制度」の復活に驚いたという古谷さん
「ぶらぶら社員制度」の復活に驚いたという古谷さん


ーー古谷さんが任命されたらどうします?
【古谷萌】スポットを浴びるポジションですが、それだけ注目されるのでプレッシャーは相当あるでしょうね。憧れますけれど、任命はされたくないというのが正直な気持ちです(笑)。もしかしたらほかの社員には「ぜひ自分も!」って、思っている者がいるかもしれませんね。

ーーアイデアを商品に結びつかせるために大切なことは何でしょうか?
【古谷萌】まずアンテナを張ることが大切だと思います。外食した際に「これを家で簡単に作るにはどうしたらいいんだろう?」とか、日常生活で「こういうところに困っているんだよな」とか、周りの人の「こういう商品があったらな」という声とか。やはり、創業者の「机に向かっているときだけにアイデアが浮かぶものではない」という考えは生きていますね。机に向かう以外のところからヒントを得るというのは、「ぶらぶら社員制度」からきちんと受け継がれているなと感じています。

【古谷萌】あと、チーム内で「今日は〇〇に試食に行こう」と外に食べに行ったり、調理室のような場所で「今日はちょっとこれを試してみよう」ということもあるんです。こういう部分も、“ぶらぶら”っぽいエッセンスが残っています。

古谷さんはレンジで手軽に調理できる「レンジのススメ」と「パキット」シリーズのファンでもあるそう
古谷さんはレンジで手軽に調理できる「レンジのススメ」と「パキット」シリーズのファンでもあるそう


ーー最近の商品の中で、古谷さんがこれイイなと思う商品を教えてください。
【古谷萌】「レンジのススメ」シリーズと、「パキット」シリーズは、どちらも電子レンジを使うものなんですが、これまでありそうでなかったアイデア商品となっています。

【古谷萌】「レンジのススメ」に関しては、コロナ禍で開発担当者が「小さい家事負担が増えたな」と感じたのが誕生のきっかけになった商品なんです。在宅勤務で献立を考える回数が増えたり、洗い物が増えたりしたことを負担に感じていたそうなんです。そんなときに、「ほったらかしで調理できるものがあったらいいのに」という発想から生まれました。これは、パウチにソースが入っているのですが、切った豆腐をパウチに入れて電子レンジでチンするだけで、2〜3人前の麻婆豆腐などのおかずができる惣菜シリーズになっています。本当に便利なので、すごく好きなシリーズです。

パウチに具材を入れレンジで調理する「レンジのススメ」シリーズ
パウチに具材を入れレンジで調理する「レンジのススメ」シリーズ【画像提供=株式会社永谷園ホールディングス】


【古谷萌】3月に発売したばかりの「パキット」は、パスタを折って水と一緒に入れてチンするシリーズです。パスタを作るときって、パスタを茹でるのもそうですが、大きい鍋にお湯を沸かすだけでも時間がかかりますよね。私はパスタを茹でたお湯で、そのままソースも温めてしまいます(笑)。

3月に登場した新商品「パキット」シリーズ
3月に登場した新商品「パキット」シリーズ【画像提供=株式会社永谷園ホールディングス】


ーー私も同じです(笑)。
【古谷萌】そんなちょっとズボラな人にもおすすめなんですよ。パスタの茹でとソースの温めを同時にできる、画期的な商品なんです。本当に「こういう商品があったらイイのに」というものを、よくぞ実現させてくれたと思っています。ネーミングに関しては、実はなかなか“パスタ”から離れられなくて、会議で行き詰まって、「ちょっと一回、会議の場を離れて、外の空気を吸いに行こう!」とブラついていたときに、「パキット」というのが降ってきたそうなんです。確かにパスタを折る音にぴったりということで、この名前になりました。こんなふうに、開発担当者がぶらぶら社員のようにさまざまな場所に出向いてアイデアを持ち寄るというところに永谷園らしさを感じています。

ーー「麻婆春雨」を彷彿とさせる商品開発のエピソードですね。
【古谷萌】「ぶらぶら社員制度」の考え方が受け継がれて、新しい価値を提供する商品が考案されているということですね。

この記事のひときわ#やくにたつ
・商品開発のアイデアは、机に向かっているときだけに浮かぶものではない
・アンテナを張って、実際に足を運ぶことが大切
・遊び心を持って楽しむ
・社内制度の根本となる精神が社員に受け継がれ、考え方として根付く

取材=長谷川裕美子、取材・文=北村康行

永谷園 公式サイト
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