シアトル系コーヒーが日本に上陸して以来、日本人の新たなコーヒー文化を確立してきた。各都市には必ずと言っていいほど、シアトル系コーヒーショップがあり、私たちは意識することなく生活の一部に取り入れている。その代表的なブランドといえば、「タリーズコーヒー」だ。2022年には日本上陸25周年を迎え、この四半世紀の間に全国に760店舗を展開している。

店舗だけではなく、コンビニなどで販売するボトル缶のシリーズも手掛け、利用者層を増やしているのも同社の特徴だ。なぜ、ここまでの成長を成し遂げられたのか、そして今後は、どのような未来図を描いているのだろうか。今回は、タリーズコーヒージャパン株式会社の広報・須﨑未紗さんと歌代薫さんに、同社のこれまでの歩みから出店戦略、今後のビジョンまで、いろいろと語ってもらった。

広報の須﨑さん(左)と歌代さん(右)
広報の須﨑さん(左)と歌代さん(右)【画像提供=タリーズコーヒージャパン株式会社】


コーヒーブームのセカンドウェーブを生み出した

そもそもシアトル系コーヒーが日本に普及したのは、1997年に日本に初上陸したタリーズコーヒーと、その前年に国内初出店を果たしたスターバックスコーヒーが大きなきっかけだ。そこからコーヒーブームのセカンドウェーブが始まり、全国に店舗を拡大した。家でも職場でもない「サードプレイス」としてカフェの地位が確立していった。その源流たるタリーズコーヒージャパンは、日本での営業権を獲得し、銀座にて1号店(現在は閉店)を開店した。当時を知る社員はすでに社内にはほぼいないが、今なお語り継がれているエピソードもあるという。

「日本中がコーヒーブームに沸き立つ中で、タリーズを出店したことで地域の方に大変喜んでいただいたそうです。スターバックスコーヒーさんが前年に出店されていて、その後タリーズコーヒーが追随する形のように見えますが、特にお互い競争をしていたわけでもなく、むしろ、このブームを一緒に作っているという仲間意識のほうが大きかったのではないでしょうか」(歌代さん)

【写真】1997年にオープンした1号店「銀座店」
【写真】1997年にオープンした1号店「銀座店」【画像提供=タリーズコーヒージャパン株式会社】


大切なのは地域に寄り添うコミュニティーカフェ

両社とも、当時から日本の最先端カルチャーを発信する銀座に出店したことで、シナジー効果が生まれたのだという。そこから店舗は次々に増え、タリーズコーヒージャパン創業10年目の2007年には320店舗にまで増えた。ただ数を増やしたわけではなく、その根底には地域への思いがある。

「当社は、『地域社会に根ざしたコミュニティーカフェとなる』という経営理念を掲げています。都心のビジネス街などはもちろんですが、コミュニティーカフェを展開するうえで郊外エリアへの出店もとても大切になってきます。ただ、直営だと難しいケースが多いため、郊外を開拓するためにはフランチャイズのオーナーさんの存在が欠かせません。各地域にオーナーさんを見つけつつエリアを拡大し、その結果少しずつ店舗数も増えていきました」(須﨑さん)

実際に、「自分の地域を盛り上げたい」という気持ちを持ったオーナーも多く、同社の理念に強く共感を得ている結果なのだという。そうした地道なエリア戦略を続け、現在でもその数を伸ばし続けている。「地域のコミュニティーカフェ」であるだけに、そのエリアによって店舗の雰囲気もさまざまあるという。

「店舗を作る際には、タリーズコーヒーとしてのある程度のルールは設けているのですが、その土地の特性を生かした店舗も多くあります。地元の伝統工芸品を飾ったり、エリアの景観になじむような店舗デザインを採用したりなど、地域性を反映させられるのもオーナーさんに評価が高いポイントですね」(歌代さん)