横川楓の「ミレニアル世代のお金の常識」【第11回】お金も人生も大損する「ブラック企業」勤務。あなたの会社は大丈夫?

東京ウォーカー(全国版)

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「やさしいお金の専門家/金融教育活動家」こと横川楓です。今回は、いわゆる「ブラック企業」をとり上げてみたいと思います。働き方改革が進んであからさまなブラック企業は減ってきているかもしれませんが、働けど働けど給料が上がらないような「プチブラック企業」ともいえる会社は変わらず存在します。みなさんの勤務先は大丈夫ですか?

【やさしいお金の専門家/金融教育活動家】横川楓さん【撮影=阿部昌也】


ブラック企業の特徴はとにかく「残業が多い」

「ブラック企業」と呼ばれる会社の特徴はいくつかありますが、そのなかでもとくにわかりやすいものが、「残業が多い」というものです。従業員の労働時間の管理がずさんで、サービス残業があたりまえになっているような企業ですね。

そういった会社に勤めている当人は、そんな働き方に慣れてしまって、麻痺している状態になりがちです。劣悪な環境で働くことが「あたりまえ」だと思うようになり、勤務先の働き方に問題があるのかどうかを意識しなくなっていることもよく見られるケースです。

でも、サービス残業は違法なものです。労働基準法では、労働時間は原則として「1日8時間・週40時間以内」とされており、それらを超えた時間外労働に対しては通常の賃金の25%以上にあたる時間外手当(残業手当)が支払われるように定められています。また、1カ月あたりの時間外労働が60時間を超えた場合には、さらに25%がプラスされ、超過分に対して通常の賃金の50%以上の時間外手当が支払われることになっています。

ただ、会社は時間外手当を支払ってさえいればいいというわけではありません。残業のような時間外労働には上限が設けられており、その上限は1カ月に45時間、1年に360時間までとされています。

また、残業だけでなく、休日出勤や深夜労働も賃金の割増の対象です。休日出勤の場合なら通常の賃金の35%以上の休日手当、深夜労働の場合なら25%以上の深夜手当を受け取る権利を従業員は持っているのです。

労働基準法改正によってチェックすべき点

ところが、ブラック企業はこうした法律を無視している場合も。上限以上の残業を従業員に求めたりその残業に対しても時間外手当を支払わなかったりする会社もあるのです。みなさんの勤務先はそんな会社ではないですか?

ここで心配なことがあります。現時点ではきちんと法律を守っている会社であっても、近いうちにそうではなくなるケースも考えられるからです。というのも、まもなく労働基準法が改正されるからです。

先に、1カ月あたりの時間外労働が60時間を超えた場合には賃金の50%以上の時間外手当が支払わなければならないとお伝えしました。このルールは2019年4月に施行された「働き方改革関連法」によるものですが、じつはそのとき対象となったのは大企業のみでした。一定の条件を満たす中小企業に対しては、猶予措置としてそれ以前と同じ25%の割増賃金率でよいとしていたのです。

そして、その猶予措置が終わるのが2023年4月です。つまり、中小企業であっても大企業と同じように1カ月の時間外労働が60時間を超えた場合には賃金の50%以上の時間外手当を支払うことが求められるようになるというわけです。なお、建設業については慢性的な長時間労働や人手不足といった業界特有の背景によって猶予措置は2024年4月までとなっています。

勤務先が中小企業だという人の場合、もう間もなくの労働基準法改正に伴って会社がしっかりと時間外手当を支払ってくれるようになるのかをチェックする必要が出てくるのです。

【写真】勤務先がブラック企業の場合、しかるべき対処を。変わらない場合は転職を考えるのもおすすめ。【撮影=阿部昌也】


「あたりまえ」という思い込みを捨てて視野を広げてみる

そうしたチェックをしたうえで、「勤務先がブラック企業ではないか」と感じたなら、しかるべき対処をしましょう。勤務先に対して直接相談できるのならそうしてもいいですし、そうできないのであれば労働基準監督署へ通報してもいいと思います。

いずれにせよ、「うちはこの働き方があたりまえだから」というふうに思い込み、自分自身で勤務先の姿勢をチェックすることを放棄することだけは避けるべきです。ブラック企業に勤めていると、お金はもちろん人生そのものについても大きな損をしてしまうからです。

どんなに好きな仕事をしていても、嫌なことやつらいこと、我慢しなければならないことはあるものです。そんなときは、気心の知れた友人と会ったり趣味に没頭したりするなど、仕事から離れたプライベートでリフレッシュすることも必要でしょう。

でも、勤務先がブラック企業であるがゆえに働き詰めになり、プライベートの時間を充実させられなくなったらどうですか?プライベートの時間すら削られたうえに、本来であればもらえたはずのお金ももらえず、さらにはなんらかの心身の疾病をわずらってしまうことにもなりかねません。これでは、まさに“大損”です。

「この働き方があたりまえだから」という思い込みを捨てることにもいえますが、できる限り視野を広げることを意識してほしいと思います。ブラック企業の働き方は決してあたりまえのものではないのですからね。

また、勤務先のブラック気質がまったく変わらないのであれば、転職を考えてみることもおすすめします。ブラック企業に勤めている人のなかには、「自分なんてこの会社でしか働けない」というふうに自分を低評価している人も少なくありません。でも、そう思っているのは自分だけだという可能性も十分にあり得ます。気持ちをリセットして転職活動をはじめてみれば、他社から思わぬ評価をされることだってあるのではないでしょうか。

この記事のひときわ #やくにたつ
・ブラック企業の特徴はとにかく「残業が多い」こと<br />・労働基準法改正によってチェックすべき点を知る<br />・「うちはこの働き方があたりまえだから」という思い込みを捨てる

構成=岩川悟(合同会社スリップストリーム)、取材・文=清家茂樹、撮影=阿部昌也

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